この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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92 二度目の潜入

お祭り三日目、一日目に比べて特に変わったことはなく、みんなそれなりに楽しむ中、何故かクリスさんがずっと浮かない顔をしているのが気になっていた。

理由を聞いても『何でもない』と返すのみだった。

 

そんなことを気にしながらお祭り三日目の深夜、僕らは再度アイギスを盗みに行くためにアンダインの屋敷に来ていた。

 

「所でちょっと気になったんだけど、何でカズマさん落ち込んでるの?」

 

クリスさんが指定した時間から二時間遅れてやってきたカズマさんだけど、何故か落ち込んでいた。一体何があったんだ?

 

「ウミ、聞いてくれよ。めぐみんに花火大会に誘われたと思ったら、がっかりな花火大会で、しかもめぐみんと一緒に帰ることができなかったし、ダクネスには期待させるだけさせて、がっかりな褒美だったし……くそったれ!!」

 

本当に何があったんだろうか?ちょっと気になるけどここは聞かないほうが良いかな?

 

「ほら、二人共喋ってないで早いところ潜入しよう」

 

クリスさんが急かすけど、前に比べてアンダインの屋敷の門の前には見張りが二人いる。さてどうしたものか……ここは誰かが気を引いて……

 

「あのそこにいる方々はもしかして……銀髪盗賊団と国防仮面ですか?」

 

突然背後から声をかけられ、振り向くとそこにはめぐみんがいた

 

「ははは、初めまして、いえ、初めましてではないですよね。一度王城でお会いした事がありまして、あなた方のファンを自称しております。アークウィザードのめぐみんといいます」

 

めぐみんは緊張しながらもそう告げていた。というか何でめぐみんがいるんだ?僕はカズマさんにそっと耳打ちをした。

 

「ねぇ、なんでめぐみんがこんな所にいるんですか?というか一緒に帰れなかったことに関係でも?」

 

「あぁ、実は花火大会っていうのは祭りの篝火に集まってきた虫たちを殲滅する。いうなれば宣戦布告の合図みたいなものでな。もう俺達が知っている花火大会と違って、がっかり花火大会だったんだよ。おまけにめぐみんの奴、町中で爆裂魔法を撃とうとして警察に連行されたんだ。まぁ、今は解放されたみたいだけど」

 

うん、話を聞いてみるとカズマさんが落ち込むのも無理もない。めぐみんはめぐみんで嬉しそうにしながらファンレターを渡してきてるし……というかよく正体がバレないな。友海は後々正体に気がついていたみたいだったのに……

 

「あの、私も何かお手伝いしたいですが、すぐに帰って謝らないといけない人がいるので……すみません」

 

めぐみんはそう言い残してすぐにその場から去っていった。もしかして謝りたい人って………

 

「カズマさん、早いところ戻ろうか」

 

「そうだな」

 

とりあえず門の前にいる見張りを僕は狙撃銃を取り出し、気絶する程度に威力を下げて見張り二人を撃つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二度目の潜入ということで今回は前回よりもスムーズに目的の宝物庫にたどり着いた。アイギスが眠る隠し扉の前に行くとカズマさんはポケットから結晶体を取り出し、床に叩きつけていた。どうやらアレは微弱な結界を発動させるもので、結界を発動させていればアイギスの念話を封じることが出来るらしい。

 

『いきなり現れて誰かと思えば、この間のコソ泥じゃねーか!性懲りも無くまた来やがって、者ども出会え出会えーっ!!』

 

アイギスがそんなこと言うけど、カズマさんとクリスさんの二人は無視しながらアイギスの鎖を外していた。

 

『おいこら何やってんだよ、そんなことしてる余裕あんのか!?この屋敷の主人はお貴族様よ。捕まったら死罪なんだぞ?あれ……屋敷の中が静かだな。どうなってやがる?』

 

「へっ、そんなもんなんの対策もなしにノコノコやって来るわけないだろ?お前の思念は屋敷の連中に伝わらない。残念だったな!」

 

『いったい何をしやがった!?ちょ、よし、分かった!取引だ、取引をしよう!』

 

「取引か……僕らがここに来た時にそれを言うべきだったかもね。今から行うのは取引じゃなくって、脅しだ。おとなしく僕らの言うとおりにするんだ」

 

僕は白月の切っ先をアイギスに向けながらそう告げた。

 

『ま、待ってくれ。話を聞こう。出来れば鎖を外してくれれば……』

 

「はいはい」

 

クリスさんが鎖を外してあげると同時にアイギスは突然カズマさんを突き飛ばし、逃げ出した。

 

『バーカ、バーカ!お前のへなちょこ剣に脅されて屈する俺様じゃないんだよ!!決めた。俺旅に出る。俺を着られる美女を求めて旅に出るわ。この屋敷でメイドさんに毎日ワックで磨いてもらう生活も悪くなかったが、お前らみたいなヤツがまた来ないとも限らないし。俺、自分のご主人様は自分で探す!』

 

アイギスが結界の外に出ようとするが、僕はアイギスの前に出た。

 

『おいおい、この俺を捉えようなんて無理だぜ』

 

アイギスは僕に構わず突っ込んできた。僕はため息をつきながら切り札を発動した。

 

「借りますよ。友奈さん」

 

切り札である一目連を発動させ、突っ込んでくるアイギスを殴り飛ばした。

 

「鎧の神器だからある程度の攻撃は効かないだろうけど……動きを止めるのは簡単だな」

 

『お、お前、何をするつもりだ?残念だがいくら殴っても俺は……』

 

「何だか殴り続けて性癖を変えた方が良いかな?」

 

「ウミさん、もしかしてアイギスの性癖をダクネスみたいにするつもり?」

 

「お前も何だかんだで怖いことやるよな」

 

このまま逃がす訳にはいかないし、それだったらなんとかして捕まえたほうがいいかなって思ったんだけど、アイギスは後ろへ下がり……

 

『俺の性癖を変えるとか何を考えてるんだよ!!悪いけどここで引くわけにはいかないんだ』

 

どう足掻いても逃げ出したということか。仕方ない。普通なら持久戦になるけど……

 

「なぁ、アイギス。お前の新しい持ち主探し、手伝ってやろうか?」

 

『何!?』

 

「ちょ、ちょっと勝手に何を……」

 

クリスさんが止めに入ろうとするが、僕は気にせず話を続けた。

 

「無理やり捕まえてもお前は駄々こねそうだし、それだったらさっさと新しい持ち主を探してやろうかなって?まぁお前が嫌だって言うなら殴り続けて性癖を変えるしか……」

 

言っておいてなんだけど、中々骨が折れそうだから嫌だけど……

 

『ふむ、殴り続けてやるといった男が急に意見を変えたのは気になるが……ご主人様探しを手伝ってくれるなら、さっき殴ったことを忘れてやろう』

 

「あぁ、と言う訳でカズマさん、何か言い案ない?」

 

「おい、急に言われてもな………」

 

こういう時カズマさんはかなり素晴らしい案を出してくれるはずだ。カズマさんは考え込んでいると、フッとクリスさんの方を見てあることを思いついたみたいだった。

 

「よし、それじゃ任せろ。お前のご主人様探しにピッタリのイベントを開催してやる」

 

カズマさんの言うイベントって一体なんだろうか気になるけど、とりあえず僕らはアイギスを盗み出すために外に出ようとするけど、脱出経路が見当たらない。さてどうしたものかと思った瞬間、突然窓の外から眩い閃光が見えた。あれって爆裂魔法?

 

「もしかして私達のためにやってくれたのかな?」

 

「だろうね。というかめぐみん、また捕まりそうだけど……」

 

「今はとりあえずめぐみんに感謝しつつ、逃げ出すぞ」

 

僕らはめぐみんが気を引いている内に逃げ出すのであった。アイギスはクリスさんが前に使っていた宿に置いておくようにするとのことだった。

 

 

 




何だか最後ら辺グダグダになってすみません。次回はミスコンの話ではなく、ちょっとした話をやります

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