結局昨日の成果は腕輪の神器だけだった。あの後アイギスの大声を聞いて屋敷の住人が起き出してしまい、僕らは急いで逃げ出すのであった。
夜明け前に僕らは屋敷に戻り、少し体を休めるのだが……
「何だか友海ちゃん、起きないね?調子悪いのかな?」
「そっとしておいてやれ。昨日は何だか寝付けなかったみたいだからな」
流石に深夜に友海を連れ回したなんて言えない。というかあのままそっと寝かしておけばよかったかもしれない
「海くん、今日はお祭りの準備を手伝いに行こう」
「あぁ、そうだな。でも大体準備って昼過ぎくらいだろ」
流石に朝から準備するって言うことはないだろうし、出かけるまでの間は武器の手入れでもしておくかな?
そう思っていると、何故か友奈は不思議そうな顔をしていた。
「あれ?アクアさんから朝からすぐに準備するって言ってたよ」
「朝から?どういうことだ?」
「アクアさんに海くんが起きだしたら、すぐにギルドに行くようにって言ってたよ」
一体何が始まるっていうんだ?ただ単にアクアさんが祭りを楽しみにしているからじゃないのかな?
僕、友奈、牡丹の三人(友海は眠っているため、ひなたお姉ちゃんに預けてきた)でギルドに行くと、ギルド内はすごく賑わっていた。
僕は辺りを見渡すとカズマさん達の姿を見つけ、駆け寄った。
「この騒ぎは何なの?」
「ウミ、来たか。毎年祭りの前はこうやってギルドは賑わうんだ」
「そっか、海や友奈も知らなかったんだっけ?ギルドがこんなに賑わっているのは、安全にみんなが祭りを楽しめられるように周辺のモンスターを討伐してるんだよ」
夏あたりのモンスターって確か、冬に比べて弱いけど物凄く活発になるんだっけ。祭り開催中にモンスターが暴れだしたりしたら大変だもんな。
「まぁモンスター討伐はもちろんだとしても、一番は蝉取り業者の人達が困るということだな」
蝉取り?何だか嫌な予感がするな。まさかと思うけどこっちだと物凄くうるさかったりするのか?
「あのね。ウミ。こっちの蝉は貴方が知っている蝉よりもかなり煩いのよ。おまけに寿命が一月もあるし」
普段だったら煩いと思っているような声があれ以上に煩いのか。それは確かに迷惑かもしれないな
「あと蝉は夜も鳴くわ」
アクアさんの言葉を聞いて、僕は周りの冒険者たち………特に男性冒険者たちが物凄くやる気を出している理由が分かったきがする。
蝉の声のせいで眠れないと言うより、あのお店が利用できなくなるということか
僕らは街の近くの森の中来ていた。そこには多くの冒険者も集まっている。
「では、防御に自信のある前衛職の方は、モンスター寄せのポーションを体に塗ってくださいねー。皆さん、相手は格下の昆虫型のモンスターばかりとはいえ、数が多いので油断はしないようにお願いします!」
アナウンスを聞いている中、ふっとダクネスさんの方を見ると何故か思いっきりモンスター寄せのポーションを浴びていた。
「ダクネスさん、防御に徹するのはわかりますけど、かけすぎですよ」
「何を言う。これでもまだ足りないくらいだぞ。虫にたかられると思うと………興奮してこないか?」
「お願いだから、死なないように気をつけてくださいね」
「冒険者の皆さーん!モンスター第一陣が集まってきましたよ!殺虫剤も大量に用意してあります。ではお願いします!」
アナウンスを聞き、僕は旋刃盤を取り出すと同時に向かってくる虫達に向かって投げつけたが、四国にいる虫よりも大きいとは言え素早いから攻撃が当たりづらい
周りを見てみると他の冒険者たちも苦戦しているみたいだ。おまけにカブトムシなんて鎧を貫いたりしてるし……仕方ない。こういう場所であまりやりたくないけど
「切り札発動!!借りますよ!珠子さん!」
珠子さんの切り札を発動し、大きくなった旋刃盤に炎をまとわせ、迫り来る虫たちを焼き殺していく。
「おい、ウミ!!気をつけて使えよな。下手すると火事になっちまう」
カズマさんの言うとおり、下手すると木が燃えてしまい、下手すれば大火事になってしまう。
僕は友奈と牡丹の方を見ると、友奈は迫りくる虫たちを上手く叩き落としているし、牡丹は矢で撃ち落としていく。さて僕は……
「海くんもこっちに来てたんだね」
声をかけられた方を見ると杏さんと珠子さんの二人がいた。二人も参加していたのか。それだったら……
「杏さん、同時に切り札を発動しましょう」
「切り札?そういう事だね。それじゃ」
杏さんは僕の考えていることが分かったのか、すぐに準備を始めた。そして僕は武器をクロスボウに切り替え……
「「切り札発動!雪女郎!」」
僕と杏さんが同時に切り札を発動させた瞬間、夏だと言うのに雪が降り注ぎ、迫り来る虫達が見る見るうちに凍っていく
「僕らが凍らせている間に、皆頼んだよ」
「あぁ、任せろ。全員一気に倒しちまうぞ」
カズマさんの声を聞き、冒険者たちが大声を上げるのであった。それからしばらくしてから虫の討伐を終わらせることに成功するのであった。