「ウミ、すみませんが、今日付き合ってもらえないでしょうか?」
屋敷で白月の手入れをしていると、いきなりめぐみんにそんなことを言われた。付き合えって買い物か何かか?
「荷物持ちくらいだったら僕じゃなくってもいいんじゃないのか?」
「荷物持ち?いいえ、違います。ほら、昨日アクアが言っていたじゃないですか」
言っていたことって、お祭りの件か?そういえば無理やり手伝わせることになったんだっけ?というかクリスさんも色々と大変だな……
「お祭りの件で一体何処に行くんだ?責任者の所に乗り込んで爆裂魔法をぶち込むっていうことなら、却下だぞ」
「いくら私でもそんなことしません。ただ付き添いがいたほうがいいと思って……」
まぁ別に今日は予定もないし、付き合うのも悪くないな。
「しょうがない。分かったよ」
「ありがとうございます。あっ、ウミを借りることはユウナにはすでに許可をもらっているので安心してください」
………何でめぐみんって変な所に気を使うのかな?
僕はめぐみんの案内で連れてこられたのは、アクセルの街にあるアクシズ教の教会だった。前にダクネスさんが結婚式を挙げたエリス教の教会と違って、何というか……
「………趣きがある教会だな」
「はっきり言っていいですよ。ボロいって……」
言わないようにしておいたのに、何ではっきり言ってしまうんだこの子は……というかそんなこと言って怒られないよな……
とりあえず中に入ると、長い金髪に碧眼に青い法衣のシスターが退屈そうにしながらいた。
「あら?あらあら?お久しぶりねめぐみんさん。まさかお姉ちゃんに会いに来てくれたの?それだったら早速私の胸に……」
「飛び込みません。今日は少し用がありまして……」
「そんな用事なんていいから、ほら、お姉ちゃんに甘えていいのよ」
「いきなり抱きつかないでください!!ウミも見てないでこの人をどうにかしてください」
何だかめぐみんと仲がいいな。このシスター……するとシスターが僕に気がつくとじっと見つめていた。
「なっ!?年下の男の子!?これは逃す手は……」
何だかロックオンされた!?何かされる前に僕は白月を抜き、シスターの首筋に当てた
「あ、あのウミ、手荒なことは……」
「分かってるけど、ちょっと身の危険を感じて……」
「刃物で脅す!?そういったプレイが好きなのね」
何だろう?この感じ、前にも似たようなことが……あれはオークと遭遇した時と似たような感じになっている気がする
「あの、僕よりもお金を持っていて物凄く強くてイケメンな人を紹介するんで……」
僕の言葉を聞いて、シスターは考え込んだ。どうやら僕をどうにかするという話は何とかなったのかな?とりあえずミツルギさん辺りを紹介しておいて正解だったな
「それでめぐみんさん、それに……えっと?」
「上里海です」
「ウミ……あぁ、貴方のことは聞いてますよ。その時が来たらぜひ家の教会に……」
その時が来たらって何のことだ?というかめぐみんが物凄く顔を背けているのはどういうことだろうか?
「お前、何かやらかしたか?」
「べ、別にやらかしてませんよ!?アレについてはカズマも共犯です」
一体何をやらかしたんだ?これはあとで問いたださないと……
「改めまして、私はセシリー。このアクセルの街のアクシズ教会の責任者です」
「セシリーさんか。今日ここに来たのは……」
「あぁ、もっと砕けた感じでいいですよ。セシリーお姉ちゃんと」
「間に合ってます」
ただでさえお姉ちゃん呼びが一人いるのに……これ以上は増やしたくない。
「セシリーお姉さん。今日はちょっとお願いしたいことがあって……」
めぐみんが要件を話そうとした瞬間、教会の扉が突然開くといかにも怪しい男が入ってきた。
「何だ?他に人がいることは聞いてないぞ」
「ごめんなさい。でもこの人達は秘密を守るわ」
「まぁあんたは上客だからな。あんたの知り合いも信じてやるよ」
何だろう?いかにヤバそうな会話をしてるのは気のせいだろうか?
「全くこんな品を扱うのはこれっきりにしてほしいな。バレたらこっちがやばいからな」
「大丈夫よ。コレは私が個人的に楽しむものだから。それに扱いに関しては慣れているわ」
男がセシリーさんに白い粉が入った袋を渡したけど、あれってかなりやばいものじゃないか?
「ならいいけど、気をつけな。そいつで毎年死人が出てるからな」
うん、やばい薬だ。ここはそっと抜け出して警察に行ったほうがいいかもしれない
「前にも私にくれましたが、それは本当にいいものなんですか?」
「おいおい、お嬢ちゃん。これは一件普通の白い粉だが、お湯に溶かしてみると……」
「説明を聞くより試してみたほうがいいわ。ほら、めぐみんさんも、一度やれば病みつきに……」
これはまずいと思い、僕は咄嗟に勇者に変身し、悪の道に進めようとしているこの二人を殴ろうとすると、
「そこまでだ邪教徒共!人の仲間に何やってるんだ!ぶっ殺すぞ!」
扉が急に開かれ、やってきたのはカズマさんとアクアさんの二人だった。カズマさんはセシリーさんが持っている白い粉を奪おうとするが、セシリーさんは抱え込んで奪われないようにしていた。そんな中、アクアさんが男に近寄り、
「ゴッドブロー!!」
男の鳩尾に一撃食らわせるのであった。
「おい、ウミ!今すぐ警察に通報しろ」
「分かった」
「そう、とうとうバレてしまうのね。ごめんねめぐみんさん。でも安心して……きっと戻ってくるから……」
セシリーさんが涙を流しながらそんな事を言っていうのであった。というか本当にやばい薬だったんだな
「様子見に来たわよーって」
「………何かあったのかな?」
何故か雪花さんと棗さんの二人がやってきたのだった。
僕が何でこうなったのか説明すると、雪花さんは呆れた顔をしてセシリーさんを見ていた。
「また飽きもせず、ところてんスライムを……」
「「「ところてんスライム?」」」
僕、カズマさん、アクアさんの三人がハモると、雪花さんが説明してくれた。ところてんスライムはどうやら食用で、のどごしの良さや食感のぷるぷる感が何とも言えなく、かなり人気商品みたいだけど、ちょっと前にアルカンレティアで温泉にところてんスライムを混ぜたという事件が起きたらしいが、それをやった犯人が魔王軍みたいで、もしかしたら危険性があるのではないかということでご禁制になったらしい。
「ねぇ、カズマさん。その犯人って……」
「いやいや、そんな微妙な嫌がらせを幹部がするわけ無いだろ」
まさかと思うけど、ハンスが嫌がらせみたいなことをするわけないよね。敵だったのに何処か信じたい思いがあった。
「何だかゴタゴタがあったみたいだけど、久しぶりね」
「雪花さんたちはどうしてここに?」
「……私たちはゼスタ様に頼まれて、セシリーの様子を見に来たんだ」
「二人から話は聞いてるわ。それにアクア様、わざわざこのような場所までご足労を……」
「中々出来た信者ね」
そういえばアクシズ教の人ってアクアさんが女神だってわかってるんだっけ?アクアさんも嬉しそうな顔をしてるし……
「それで聞きそびれたけど、めぐみんさんは一体どんな用事で来たの?」
「そうでした。実は………」
めぐみんがちらっとアクアさんの事を見た。まぁ要件はお祭りのことだから、本人が言うべきだと思ってのことだろう
「近々エリス祭というものが行われるのは知ってるわね」
「えぇ、存じ上げています。全くあの忌々しいエリス教め……まさかアクア様!」
「今年はエリス祭を取りやめて、アクア祭をやるわよ」
「分かりました。そのためなら何だってします」
「それじゃあまず私がエリス教会の窓を全部割ってくるから………」
何だかやばいことになりそうだな。そろそろ止めないといけない。
「あの、祭りの件だったら一層のこと同時開催したらどうかな?それも対決式で」
「「えっ?」」