この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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85 ダクネス救出

「私のあだ名は知っていますよね?なら、もちろんこの杖の先の魔法が何かも知ってますよね?先に言っておきますが、この魔法を制御するのにはかなりの集中力を必要とします。突然不意をつかれて制御を失えばボンッ!ってなります。かかってくるのならそこらへんをよく注意してからきてください」

 

めぐみんの言葉を聞いて、領主の部下たちは顔を引きつらせていた。下手をすれば本当にやばいことになるからな……

 

「…ねえ、めぐみん。もうカズマさん達が……」

 

「あっ、パパとママもいるー」

 

「私達が出張る必要はなかったみたいですね」

 

めぐみんは僕らのことを見るとちょっと嬉しそうにしていた。めぐみんが嬉しそうにしている理由がよく分かるよ。

 

「な、何を怖気付いている馬鹿者がっ!あんなものはハッタリに決まっているだろうが!こんなところで魔法なんて放てばどうなるか、それがわからないバカがいるか!どうせそいつに魔法を打つ気はない、取り押さえろ!」

 

めぐみんの恐ろしさが分かっていない領主が叫んだ。めぐみんは真っ赤な目で領主をにらみながら、

 

「ほう!この私が怖気づくと!爆裂魔法を打つことを怖気づくと、本気で言ってるんですね!いいでしょう、いいでしょう!その朝鮮受けましょう!」

 

「止めろ!近づかない!近づかないからまじでやめろ!」

 

「攻撃なんてしない!だから、止めろ、止めろ!」

 

「アルダープ様!お願いですから挑発をやめてください!」

 

めぐみんが爆裂魔法を放たないように慌てて止めに入る部下たち。まぁ、脅しだと分かっていても、めぐみんだったら放ちかねないからな。

僕らはめぐみん達の所に駆け寄った。

 

「お前、人がこれからかっこいいところを見せようとしていたのに……全く助かったよ。ありがとうな」

 

「美味しい所を持っていくのが紅魔族です。それにしてもカズマやウミ達がこうして先越されたのは驚きました」

 

めぐみんは満足そうな顔をしていた。きっとめぐみんもカズマさんの事を信じていたからだな。

 

「パパ、ママ、私かっこよく登場できてた?」

 

「あぁ、かっこよかったぞ」

 

「うん、でも危ないことはしないでね」

 

僕と友奈は友海の頭をなでながら、そう言うと牡丹はため息を付いていた。

 

「きっとお母様に知られたら怒られるのかな?何だか友海が羨ましい……」

 

「え、えっと、その時は私が説明するから安心して」

 

落ち込む牡丹を励ますゆんゆん、牡丹はちょっと嬉しそうにしていた。そんな中僕らのことを見て、ダクネスさんが俯きながら……

 

「めぐみん!それに、ゆんゆんまでこんな事…!帰ったら、話は帰ってから……っ!帰ってから礼を……!」

 

感極まっているのか、まだ先ほどの興奮が冷めやらないのか、ちゃんと喋れないダクネスさんにめぐみんが少しだけ照れ臭そうにしていた

 

「何を水臭い。その…仲間でしょうが、私達は。…ゆ、優秀なクルセイダーをそうそう簡単には手放しませんよ!」

 

「因みにめぐみん、ゆんゆんが同じ状況になったらどうするんだ?」

 

「それは……まぁ、助けてあげないことはないでしょうね」

 

顔を背けながら言っているけど、耳が真っ赤だぞ。ゆんゆんはゆんゆんで嬉しそうにしてるし……

 

「ねえ、そんなのんきに話をしてる場合じゃないんですけど!この状況何とかしてよ!」

 

教会の入口に追いつめられた僕らだけど、領主の部下たちはめぐみんの魔法を恐れて動けずにいた。まぁ、気にせず襲ってきたら僕の出番だけど……

 

「おい、そこの野次馬達、見るからに冒険者風のお前達だ!そこにおるのは犯罪者だ!そいつらから、ワシの花嫁を取り返してくれ!そうしたら多額の報酬を払おうじゃないか!なんなら、ワシの屋敷で守衛として雇ってやる!」

 

領主が冒険者たちにそんなこと言うけど、みんな何故かあくびをしたり、明後日の方向を見て聞こえないふりをしていた。どうやら見逃してくれるみたいだな。

 

「おいダクネス。一人でヒュドラを倒そうとした時みたいに、アホなお前がアホな考えで自分勝手に嫁に行こうとしたのに、こんだけの連中が、またお前を見逃して、助けようとしてくれたんだ。ちょっとはその固い頭を柔らかくして反省しろよ?」

 

カズマさんの言葉を聞いて、ダクネスさんは嬉しそうに頬を染め、軽く涙ぐんでいた。

 

「くっ…!カズマ、そろそろ魔法の維持が近づいてきました!もう撃ってもいいですか?どのみち私達は犯罪者です!いよいよイライラしてきましたし、この連中に向け、撃っちゃってもいいですか!?」

 

突然そんな言葉を言い出しためぐみんに、周囲の人間がギョッとしていた。

 

「溜め込むのは悪いからぶっ放しちゃっていいぞ」

 

「ウミ!!煽るようなことをいうなよ!!」

 

いや、もう結婚式が無茶苦茶になってるし、もっと無茶苦茶にしてもいいと思ったんだけどな……

 

「ああ、もうダメです、維持できません!みんな、私から離れて逃げてください!」

 

めぐみんの言葉を聞いて、その場にいた全員が慌てて逃げ出した。僕らはとりあえずどこかに隠れないと……

 

「エクスプロージョンッッッ!」

 

放たれた爆裂魔法は空で爆発し、教会中に爆音が響いた。おまけにガラスにヒビが入り、みんな地に伏せていた。

 

「さあ、今の内…に…」

 

魔力を使い果たしためぐみんがアクアに支えながら、カズマの方を見て、声のトーンを落としていき、無言でジッと見ていた。

カズマさんは何で助けたダクネスさんの後ろに隠れるかなぁ……

 

「ねえカズマ、さすがに助けにきた相手の陰に隠れるってのは外道にも程があると思うわ」

 

「…うん、今日のカズマはなんだか凄く格好良く見えていて、私の目はどうしてしまったのだと心配していたが、気のせいでよかった」

 

「か、カズマさん…最低…」

 

「そ、その慌てていたからだよ……ね」

 

「おじちゃん、かっこ悪いよ」

 

「友海、きっとダクネスさんが庇ったからじゃない……?って信じたい」

 

「何だか誰もフォローしてくれないみたいだよ。カズマさん」

 

「……………」

 

「せめてウミかユウナくらいは励ましてくれよ」

 

「爆裂魔法は一日一回しか撃てないはずだ!今だ、取り押さえろ!」

 

チャンスとばかりに領主がそんなことを言っていた。やれやれ、仕方ない。ここは僕が頑張るか

 

「みんなは先に……襲ってくる連中を満開で……」

 

「痛えええええっ!いきなり押されてっ!ぐああっ!骨が、骨がああああっ!ダスト、助けてくれぇっ!」

 

満開を発動させようとした瞬間、突然悲鳴が聞こえてきた。

 

「おい大丈夫かキース!こいつぁ酷ぇ…。倒れた拍子に、骨が木っ端微塵に粉砕骨折してやがる!」

 

ダストさんとキースさんの二人が何だか演技臭いことを言っていた。もしかして……

 

「なっ!?触れただけで何を大げさな!いきなり飛び出してきたのはその男だし、自分から転んだではないか!ちょっ、折れてるって言ってるのに、何故俺の足が掴めるっ!?ええい、その手を離せ!」

 

足を掴まれてる部下がキースさんの手を無理やり払いのけ、目の前にいたダストさんも押しのけると

 

「痛ぇっ!こっちが大人しくしてりゃあ暴力を振るいやがったな!こいつ手を出しやがった!上等だ、やっちまえ!こんなんやっちまえ!俺らもともと貴族の連中が大っ嫌いなんだ、お前で鬱憤晴らしてやんよ!」

 

「ちょ!?待てっ、やめっ!?」

 

ダストさんを筆頭に集まっていた冒険者たちが領主の部下たちを袋叩きにしていた。任せて良さそうだし、ここは早いところ撤退するべきだと思った僕らはすぐに教会から逃げ出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえずダクネスさんの屋敷に行こうという話になったが、僕にはまだやるべきことがあるため、皆と途中で別れ、ある人物と合流した。

 

「どうやらそっちは片付いたみたいだな」

 

「カズマさんが用意したお金って、あんたが関わってるだよね。バニルさん」

 

バニルさんにそんなことを聞くと、バニルさんは笑みを浮かべていた。

 

「もともとこうなる未来は見えていた。我輩は少し背を押しただけだ」

 

「まぁ今回の場合は悪意がないからいいよ。でももしも悪意があった場合は……僕があんたを切るからね」

 

「ふははは、面白い小僧だ。だがお前もよく証拠偽造を思いついたものだが、お前が今回やってきたことは悪意がたくさん感じるぞ」

 

いや、まぁ気に入らなかったし……

 

「とりあえずここに例の悪魔がいるんだよね」

 

僕らがいる場所は領主の屋敷だった。ここに何しに来たかというと、領主についている悪魔をどうにかしないといけないからだ

ダクネスさんを助けたからと言っても、悪魔事態どうにかしないとまた何かしらの異変が起こりかねない。

 

とりあえず屋敷にいる人達をバニルさんが悪感情を食べながら動けないようにしていた。

 

「こっちであっているの?」

 

「あぁ、そうだ」

 

バニルさんの案内で辿り着いた先は、領主の部屋にあった地下室だった。地下室には整った顔立ちの青年がいたけど、その表情はどこか無機質だった。そして僕には彼が何者かすぐにわかった。

 

「こいつが例の悪魔か」

 

「名はマクスウェル。真理を捻じ曲げる悪魔だ。とはいえ、壊れているから色々と忘れてしまうところがある」

 

「ヒュー、ヒュー、君何処かであったことある?」

 

バニルさんの知り合いみたいだけど、この悪魔は本当に忘れているみたいだな。さてどうしたものか……

 

「我輩も悪魔だ。あの領主はあるものを使ってマクスウェルを使役してるが、代価を支払っておらんみたいだ。悪魔との契約は絶対だ。そこはどうするんだ?小僧」

 

代価か……代わりに支払う気にもならないし、このままこいつを放っておいても領主を地獄に連れていきそうだしな………それだったら……

 

僕はポケットから一本の瓶を取り出し、マクスウェルにかけた瞬間、マクスウェルが苦しみだした。

 

「ほう、マクスウェルを殺すか」

 

「悪魔には残機とかあるんでしょ。それだったら一旦浄化して地獄にお繰り返したほうが良いと思ってね」

 

僕がマクスウェルにかけたのはアルカンレティアにある聖水だ。しかもアクアさん印の聖水だからかなり効果が期待できる。

しばらくマクスウェルが苦しみだした後、そのまま石になってしまった。

 

「同胞を殺したからって理由で、僕と戦ってもかまわないよ」

 

「なぁに、聖水ごときで浄化されたくらいでは悪魔は完全に滅びん。今頃地獄に戻っているだろう。それに貴様は近い将来、我輩の利益となるからな」

 

未来の何かを見通したのか、そんなことを言っているバニルさん。まぁどんな未来があるかは聞かないけど……

 

「さて、これで全部終わりだね」

 

「さっさと退却だ。そろそろ領主を捕まえるために警察が来る頃だ」

 

僕とバニルさんはさっさと逃げ出すのであった。その途中、何だか変な石を見つけたので、一応回収するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、戻ってきたダクネスさんがこの街から逃げ出そうとしていたカズマさん達にあることを話していた。

 

「領主はあの後、王都の兵士に捕まった。その指揮をとっていたクレア殿の話では、今回カズマたちがやらかしたことは無罪放免みたいだ」

 

「無罪放免って……また借金返せとかか?」

 

「それすらない。逆にお前が……その、私を買った二十億を返金するという話になっているくらいだ」

 

「ダクネスを買った?一体何の話ですか?」

 

そういえばめぐみんはそこら辺の事知らなかったな。アクアさんはめぐみんに事の経緯を話す中、ダクネスさんが僕のことを見た。

 

「領主が捕まった時に妙なことを言っていたな。悪魔がいないとか……屋敷にいた奴は仮面をかぶったやつと白い剣をもった奴らに襲われたとか……何か知っているか?」

 

「さぁ?噂の盗賊団と国防仮面がどうにかしたんじゃないの?」

 

僕がしらばくれるとダクネスさんは少し笑っていた。

 

「そうか、それならいい」

 

とりあえずダクネスさんも戻ってきたことだし、色々と平和になったのかな?あとはこの石は何だろう?バニルさんが言うには神器だっていう話だけど……

 

あとでクリスさんに渡しておくべきだな。

 

 

 

 

 

 

 




次回から原作8巻の話になりますが、ちょっとだけ外伝の話しをやります


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