ダクネスさんが帰ってこなくなってから数日が経った。屋敷ではカズマさんが必死に何かを作っているのを僕とめぐみんは眺めていた。
「カズマ、それは?」
「これはダイナマイトって言ってな。これさえあれば誰でもお手軽に爆裂魔法を……」
カズマさんが言いかけた瞬間、めぐみんがそれを奪い取り壊してしまうのであった。
「おい!!何しやがる!」
「こんなもので究極魔法がお手軽に再現させるものですか!!それにカズマ!こんなことをしてないでダクネスの所に行きましょう」
「こんなことって言ってもな……あいつは手紙でお別れをする薄情なやつなんだよ。もう放っておけ」
カズマさんは作業に戻る中、めぐみんは悔しそうにしていた。僕はダクネスさんの手紙をまた読み返した。
『突然こんな事を言い出して、本当にすまない。お前達には言えない、込み入った事情ができた。貴族としてのやむを得ない事情だ。お前達とはもう会えない。本当に勝手な事だが、パーティーから抜けさせてほしい。どうか、私の代わりの前衛職をパーティーに入れてくれ。お前達には感謝している。それはどれだけ感謝しても足りないほどで…。お前達との冒険は楽しかった。私のこれまでの人生の中で、一番楽しい一時だった。私は今後、お前達との冒険の日々を絶対に忘れないだろう。今までどうもありがとう。
ダスティネス・フォードララティーナより。愛する仲間達へ、深い感謝を』
僕が手紙を声に出して読み終えると、バキッという音と共にカズマさんの作業が止まった。カズマさんも気になってしょうがないみたいだな。
その後めぐみんがもう一度ダクネスさんの屋敷に行くと言い出すが、カズマさんは未だに乗り気ではなかった。僕は食材の買い出しのため、銀と一緒に出かけるのであった。
「なぁ、海はダクネスさんの事気にならないのか?」
「気になってるけど、会いに行っても門前払いしてるんだろ。一体何があったのか知りたいけど……」
「そうだよね……」
「あれ?ウミとギンの二人じゃない。どうしたの?」
僕と銀の二人が溜息をつくとリーンさんと出くわした。リーンさんはダストさんのパーティーメンバーで、たまにだけど一緒にご飯を食べたりしていた。
「いや、ダクネスさんの事が……」
「あぁ、ララティーナちゃんね。大変だよね。領主との結婚って……」
リーンさんが気になる事を言っていた。誰と結婚だって?
「ちょっと今なんて……」
「ダクネスさんが誰と結婚だって!?」
「あれ?街でそんな噂が流れてるよ。ララティーナちゃんがこの街の領主アルダープと結婚するって……」
この話が本当だとしたら、一体ダクネスさんに何があったんだ?
「リーンさん、情報ありがとう」
「ちょっと私達行くね」
「う、うん」
僕らはリーンさんと別れある場所へと向かうのであった。
ダスティネスのお屋敷の前に来た僕ら、すると門番の人が僕らの所に来た。
「お嬢様のパーティーの方ですね。お嬢様は……」
「ダクネスさんに用があるわけじゃないです。ただ、ダクネスさんがあのクソ領主と結婚するって本当ですか?」
「クソ領主って……海、口悪くなってない?」
今はそんなことはどうでもいい。というか何でか知らないけど領主に対してはそう呼びたくなる
「え、えぇ、本当です」
「なんだってまた……」
「そ、それは……」
門番の人はどうにも答えづらそうにしている。僕と銀はさっさとその場から立ち去るのであった。
「どうするの?」
「この事、カズマさん達にも伝えに行こうか」
「そうだね」
僕らは急いで屋敷に戻るのであった。
屋敷に戻り、ダクネスさんが領主と結婚することをカズマさん達に伝えるが、カズマさんもすでにその話は聞いていたみたいで、事情を聞くべくダクネスさんのお屋敷に侵入しようという計画を立てていた。
「何だかみんな嬉しそうだね」
「一体何があったんでしょうか?」
「海くん、みんなが嬉しそうなのはどうしてなの?」
友海、牡丹、友奈の三人がそんなことを言っていたけど、僕と銀の二人にはアクアさんとめぐみんが嬉しそうなのがよく分かる。それにカズマさんも何だか楽しそうなのもだ。
「まぁいつも通りってことだよ」
「カズマさんが中心だからね。このパーティーは」
「何だかパパも銀おばちゃんも嬉しそうだね」
友海にそんなことを言われながら、とりあえず屋敷に忍び込み、ダクネスさんに事情を聞くということになった。そう言った潜入が上手く出来るのはカズマさんだということで、カズマさん単身で乗り込むことになったのだけど……
「僕もついていくよ」
「いや、お前、そういう潜入向きのスキル使えないじゃないか」
「スキルがなくても、ある程度の知識はクリスさんに教わってるから大丈夫。それに夜目も鍛えてるし」
「それならいいけど……」
「それじゃ二人に支援魔法かけるわね」
アクアさんが僕らにいろんな支援魔法をかけてもらう中、最後にとある支援魔法をかけられた
「ヴァーサタイル・エンターテイナー」
聞いたことのない支援魔法をかけられ、カズマさんが何の魔法かと聞くと、芸達者になる魔法とアクアさんが言った瞬間、カズマさんは無言でアクアさんをはたくのであった。
芸達者になる魔法って意味あるのか?
とりあえず僕らはふた手に分かれて屋敷に侵入することになり、僕は樹のワイヤーで誰もいない部屋に入った。窓ガラスはクリスさんから昔もらった便利なナイフでガラスを切って、鍵を開けて無事に侵入成功。さて、ここからが問題だな。僕には潜伏スキルがないし、姿を消す魔法も使えない。こういう時は気配を感じて動くしかないな
部屋を出て廊下に出た僕は、物陰に隠れながらゆっくりとダクネスさんの部屋を探すが……
「くそ、広い屋敷だな。一体ダクネスさんの部屋はどこなんだ?」
適当に部屋を調べるけど、中々見つからない。ここはカズマさんに任せてアクアさん達の所に戻るべきだと思い、外に出ようとすると……
「ん?何だろう?この感じ?」
何かを感じ取り、僕はとある部屋に入るとそこには見覚えのある人がいた。少しやつれているけどダクネスさんのお父さんだ。
「………誰だね?そこにいるのは……」
「お久しぶりです。上里海です。あの以前……」
「あぁ……あの剣を譲った少年だね。どうしたんだい?」
覚えていてくれたみたいだな。
「どうしたじゃないですよ。その体どうなさったんですか?」
「少し体をね……」
何かしらの病気になったというのか?それにしては何かこう……悪意を感じるというか、ここ最近感じた覚えがある気がする……それに普段からも似たような……
「単刀直入にお聞きします。ダクネスさんがクソ領主と結婚するというのはどういうことですか?」
「……娘の仲間である君には話しても良いな……」
ダクネスさんのお父さんが言うには、領主に借金があるらしく、ゆっくり返すとの事だったが、ダクネスさんのお父さんは倒れてしまい、狙いを済ましたかのようにあのクソ領主は借金の催促をしてきた。更にはダクネスさんが嫁に来るなら借金はチャラにしてやるとか……聞いていてイライラしてきた。おまけにこの部屋中から感じるものに対してもだ。
「お話はわかりました。多分だけどカズマさんが来たら、僕は先に帰ると伝えてください」
僕はそう言って、その部屋の窓から外に出るのであった。
屋敷に戻るとカズマさんはまだ戻ってきてないみたいだった。でも今はそんなの関係ない。今は……
「アクアさん」
「どうしたの!?慌てて帰ってきて!?」
「聞きたいことがあるんですけど、精霊の影響って僕にあったりしますか?」
「何?精霊ってエリスの?まぁ多少あるんじゃないの?ちょくちょくあのバニルだって言っていたじゃない」
「そういえば……だとしたら……アクアさん、めぐみん、僕は調べることとやることが出来たから明日から出かけてくる。しばらく帰らないから……」
僕はそう言って屋敷から出ていこうとすると、誰かに腕を掴まれた。振り向くと友奈と銀の二人だった。
「海くん、一人でやろうとしないで」
「私らも協力するからさ」
「二人共……分かった。友海、牡丹、あとのことは任せたよ」
「分かった」
「おまかせください」
僕、友奈、銀の三人である事を調べにとやるべきことをしにいくのであった