アクアさんとめぐみんの二人がダクネスさんを迎えに行ったときには、ヒュドラの攻撃を受けて傷だらけで戻ってくる途中で合流したらしい。ダクネスさんはその時に二人に説教をされたと苦笑していたその翌日、
アクアさんとめぐみんに付き添われながらヒュドラがいる湖にやってきたダクネスさんは僕らを見て驚いていた。
「おっ、遅いぞララティーナ!」
「ララティーナちゃんが来たよー!」
「ララティーナ!」
「ララティーナ!」
湖に集まった冒険者たちがダクネスさんを誂っていた。ダクネスさんはこの状況を生み出したカズマさんの胸ぐらをつかんでいた。
「お、おいカズマ。これは一体なんの騒ぎだ?新手の嫌がらせなら私にも考えがあるぞ」
「違うよ、何でわざわざ人を集めてそんなしょうもないことをするんだよ!俺はみんなに、毎日お前がたった一人でクーロンズヒュドラに立ち向かってるから、その手伝いを頼めないかって言っただけだ!」
「ッ!?」
「お、ララティーナのクセに照れてるぞ」
「ねえ止めなさいよ、ララティーナちゃんってアレで繊細なのよ?ヒュドラ退治にはララティーナちゃんが泣いて帰ったらどうするのよ」
「ほら、よく見ておけダクネス。アホなお前が毎日アホなことしてるんだって説明したら、こんだけの冒険者が集まってくれたんだぞ。脳筋なのはしょうがないが、人様に心配かけるのはやめとけよな」
「お前たち……あ、ありが……」
「わああああーっ!カズマさん、カズマさーん!なんかこないだよりもヒュドラが起きるの早いんですけどー!」
「だから私は言ったじゃないですか、ヒュドラを起こすのはカズマの合図を待ったほうがいいって!」
ダクネスさんがお礼を言いかけるが、それを遮るようにアクアさんの叫び声が聞こえてきた。どうやら先走ってヒュドラを起こしたみたいだな。
「アクア、色々と台無しだぞ!!くそ、こうなったら全員戦闘開始だ!!」
カズマさんの指示と同時に僕は大鎌を取り出し、
「カズマさん!まずはあいつの動きを!!」
「わかってる!盗賊職の奴らはバインドの準備だ。アーチャーはフックロープ付きの矢でヒュドラの動きを止めるぞ!魔法職は自分が一番強いと思っている魔法の準備をしておけ!!ダクネス!お前はデコイでヒュドラの気をそらしておけ!」
「あぁ、それが私の取り柄だからな!デコイ!!」
ヒュドラの八本の首がダクネスさんに向かっていくが、ダクネスさんは何とか受け止めていた。
「おらっ!!全員バインドだ!」
「「「「「バインド!!!」」」」
カズマさんの指示と同時に盗賊職の人達が鋼鉄製のワイヤーを使って動きの止まってる八本の首を一箇所にまとめた。そしてアーチャーの人達はフック付きロープの矢を放った。放たれたフックの先はヒュドラの硬い鱗に弾かれるものの、絡みついたワイヤーの隙間に引っかかっていた。
「借りますよ!桔梗さん!」
大鎌を構え、一つにまとまったヒュドラの首を物凄いスピードで切りつけていった。流石に皮膚は硬いけど、何度も同じ場所を攻撃していれば硬さなんて関係ないな。
ヒュドラの首は切り落とされるが、すぐに再生した。流石にすぐにという訳にはいかないか
「ウミ!今の後どれくらい使えるんだ?」
「一応切り札と満開の分の体力を残しておきたいから、あと1・2回くらいだね」
「それだったら、全員!こいつを陸に引き上げちまえ!」
するとフックロープの先を力自慢の冒険者たちが掴み、綱引きの要領でヒュドラを陸にあげようとした。
「何をするつもり?」
「陸に上がったらドレインタッチであいつの体力と魔力を吸ってしまえば、お前のさっきの高速移動で倒しきれるかもしれないだろ」
「なるほどね」
陸に上がった瞬間、カズマさんは潜伏スキルを使って姿を消し、気がつくとヒュドラの背中に乗っていた。ドレインタッチで魔力を吸われてもがき苦しみだすヒュドラ。このままいけば何とか成るかもしれないと思った瞬間、ヒュドラが身をくねらせ、背中に地面を擦り付けようとしていた。
カズマさんはそのまま地面に落ちるとヒュドラに潰されそうになっていた。僕はまずいと思い、助けに入るのだが、
「おわあああ潰れるー!」
「バカッ!お前は何をやっている!!」
ダクネスさんも丁度助けに入るのだけど、運がいいのか悪いのかカズマさんを押し倒す形になっていた。そして僕は先輩の大剣で何とか潰されないように耐えるけど結構キツイ
「ぐぅ、流石にこの重さは……」
「もうちょっと耐えてくれ。ドレインタッチでこのまま吸い続ける」
「ダクネスさんが持たない。仕方ない………」
「「勇者パァァァァンチ!!」」
僕はその声が聞こえた瞬間、笑みを浮かべた。ヒュドラはとある攻撃を受けて吹き飛ばされ、僕らは危機を脱した。
「おまたせ!海くん」
「もう水臭いよ!来るのに遅れちゃったじゃない」
僕らを助けてくれたのは友奈と切り札を発動した友奈さんの姿があった。
「丁度みんな、クエストに出かけてるって聞いたんで、友奈、銀の二人に迎えを頼んどいて正解でしたね」
更には若葉さん達もヒュドラに攻撃を加えていた。
「ライトオブセイバー!!」
さrない聞き覚えが声が聞こえた瞬間、閃光がヒュドラの首を切り落とすのが見えた。
「おまたせしました。ウミさん」
「ドラゴン退治なんてワクワクしちゃうね」
「歌野さん、まだ油断しないでください」
「でも~わっし~あのドラゴン首が生えてこないよ~」
ゆんゆんや歌野さん、須美にそのっちも来てくれたのか。それに首が再生しなかったということは……
「おい!!魔法使いの皆!!今だぁ!!」
カズマさんの合図とともにいくつもの魔法がヒュドラに当たっていく。
「ゆんゆん先生!同時に撃ちましょう」
「う、うん」
ゆんゆんのライトオブセイバーと金色の矢を同時にヒュドラに向けて放った瞬間、ヒュドラの首が何本か吹き飛ばされると……
「行きますよ!めぐみん師匠」
「えぇ、決めましょう!!エクスプロージョン!!」
「爆裂・勇者キィィィィィィクゥゥゥゥ!!」
めぐみんの爆裂魔法と友海の同時攻撃を喰らい、ヒュドラは悲鳴を上げる間もなく永遠の眠りにつくのであった。
その後冒険者ギルドに戻り、賞金を受け取った後宴会が始まり、大騒ぎだった。まぁめぐみんとゆんゆんがちょっと喧嘩していたけど、この大騒ぎの中では些細な事だった。
「あの、ウミさん」
そんな中ゆんゆんが僕にあることを聞いてきた。
「何?」
「さっきの子、私のことを先生って言っていたんですけど……どういうことですか?」
あれ?てっきり誰かが説明しているものだと思っていたんだけど、まだゆんゆんに話してなかったのか
「東郷牡丹って言ってな。未来から来て……お前の未来の弟子だよ」
「私の!?」
本当に誰にも話してなかったんだな。僕はため息をつく中、ゆんゆんは少し嬉しそうにしているのであった。
「おーい!ウミが浮気してるぞーー!」
「おいおい、早速愛人作りか?」
カズマさんの声が聞こえた瞬間、周りにいた冒険者の人たちがからかい始めた。この人達はなんということを……
「ヒュドラ退治の次は酔っ払い退治か…切り札か満開で全員ぶっ飛ばすぞ」
「やばい、ガチの目だ!」
僕は武器を構えて、あの酔っぱらい共を成敗する中、ダクネスさんが名残惜しそうな顔でギルドから出ていくのが見えた。
「何かあったのかな?」
この時、僕は後悔することになった。ダクネスさんを追っていればあんなことが起きなかったのに………
そして宴会が終わった後、ダクネスさんは僕らの所には帰ってこなかった。