僕が戻ってきてから数日後、カズマさんは賞金首になっていることを知り、屋敷に篭もるようになった。まぁ、ほとぼりが覚めるまでの間は大人しくしておくべきだと思ってのことらしい。
だが、そんな中……
「カズマさん、めぐみんとダクネスさんは?」
「ヒュドラに爆裂魔法を打ち込みに行ってくるって出かけていったぞ。まぁ撃ち込んですぐに逃げるから大丈夫だろうけど……」
ここ数日、めぐみんはカズマさんの仇を討つと言っていたからリベンジに燃えているのは分かるけど、ダクネスさんはどうしてそこまでヒュドラに執着しているのかわからない
「王都でのゴタゴタもその内落ち着けばヒュドラを倒す必要もないんだよね」
「そうらしいけど……」
カズマさんもダクネスさんの事が気になっているみたいだけど、さてどうなることやら……とりあえず僕は……
「じゃあ、僕も出かけてくるよ」
「お前までヒュドラのところに行くのか?」
「ううん、ヒュドラとの戦いに向けての鍛錬かな。これさえ使いこなせれば……」
僕は桔梗さんが使っていた大鎌を取り出した。素早く動ける特性を持っているけど、ヒュドラの皮膚は硬そうだから、威力を強めるように使いこなせないと……
「新しい武器だよな。それ?何だかチカゲが持ってる鎌に似てる気がするんだけど……」
「それは……まぁ色々と合って……」
千景さんと桔梗さんの繋がりについてはみんなに話さない方が良いって言ってたな。あとそのっちにこっちでの繋がりについても調べてもらってるし……
「とりあえず出かけてくるよ」
街の外に出て、平原に何本かの丸太を立て、僕は猛スピードで切り裂いていくが、どうにも1・2本だけ切り落とすことができなかった。
「もう少し練習が必要だな。もう一回……」
「海くん」
鍛錬を続けようとすると友奈に声をかけられた。どうしたんだろう?
「何かあったのか?」
「ううん、海くんが頑張ってるからお弁当作ってきたの」
友奈はお弁当が入った包を見せながらそういった。丁度お腹が空いていたしいいかもしれないな。
「そういえばお前って料理って出来たのか?」
「え、えっとね。風先輩や東郷さんに教えてもらったの。付き合い始めたんだから料理くらいは出来るようにしなさいって」
あの二人、本当に色々と教えるな。というかその内花嫁修業って言って色々と教えに来そうだな。そう思いながら僕は卵焼きを一個食べると友奈はもじもじしながら……
「おいしい?」
そんなことを聞いてきた。たくっ、何を当たり前のことを聞いてるのやら
「おいしいよ」
「えへへ、ありがとう」
友奈は嬉しそうにしていた。何だか本当に友奈に会うのが久しぶりだな。いや、あっちでは毎日に会っていたけども……
「あっちでの戦い大丈夫だった?」
「まぁ、手強いやつがいたけど、皆と協力して何とか倒せたかな?」
あっちで出くわしたあのバーテックスはかなり手ごわかったけど、勇者全員の力を合わせればどんな敵にも勝てるって改めて思い知らされた。
「そういえば友海は?」
「友海ちゃんも一人で特訓してるよ。師匠の足手まといにならないようにって、牡丹ちゃんはその付添だね」
「未来の勇者も頑張ってるから、僕も頑張らないとな」
僕は立ち上がり、鍛錬を始めようとすると、友奈の端末から何か音が聞こえ、友奈が確認すると何故か暗い顔になった。
「どうしたんだ?」
「ううん、そのちゃんからだけど、ほら、海くんが頼んだことの結果の報告だよ。えっと、『カイくんの言うとおりだったよ~郡家と神宮家はかなり複雑な繋がりがあったんだって、多分覚えてないのは転生の影響なのかな?でも伝えないほうがいいかな~知らなければ知らないで良い事もあるかもしれないしね』って」
知らなくても良いことがあるか……そのっちらしくないな。まぁ大赦からそういう風に言われてるだろうから仕方ないだろう
「群ちゃんに何かあったの?」
「まぁそこら辺はおいおい話しておくよ。そういえばメールの内容はそれだけか?さっき友奈……」
僕が言いかけた瞬間、僕はこっちに向かってくる影に気がついた。目を凝らしてよく見るとボロボロのダクネスさんに背負われためぐみんだった。
僕と友奈は二人の所に駆け寄った
「大丈夫ですか?」
「ひどい怪我だよ!?すぐにアクアさん呼んでくるね」
「ウミ、ユウナか……ふふ、めぐみんが爆裂魔法を撃つ前に攻撃を受けてな……だがこれぐらいの傷、どうってことは……」
「ダクネス、もう大丈夫ですから!?」
ここ数日、ダクネスさんはぼろぼろになって帰ってきている。このまま放っておけば死んでしまうんじゃないかって思ってしまう。
そこら辺カズマさんに相談するべきだな
それからアクアさんの治癒魔法でダクネスさんの傷は治ったけど、また数日の間にダクネスさんはヒュドラに一人で挑みボロボロになって帰ってくるのが日常になってきた。
ぼくらはこのまま放って置けないということでダクネスさんが勝手な事をしないように見張るのだったけど……
「この駄女神!!寝てんじゃねぇよ!!」
「だって、だって、私もゼル帝を温めるのにつかれてるんだもん!?」
「だ、ダクネスは大丈夫でしょうか?すぐに追いかけないと……」
「もう私も行くわよ!!ねぇ、カズマ、いい加減何とかしないとダクネス危ないわよ。毎日のようにボロボロになって帰ってくるたびに、めぐみんは泣きそうになってるし、いい加減私もお説教しないと」
「べ、別に泣きそうになってないですよ」
いや、泣きそうになってるぞめぐみん。さて、僕もここ数日の鍛錬で何とかなりそうだし……
「カズマさん、僕も準備はできてるよ」
「たくっ、わかってるよ。俺は行くところがあるからアクアとめぐみんでダクネスを連れ戻せ、ウミも俺の方に付き合え。たくっ、しょうがねぇぇぇなぁぁぁ」