この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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08 騎士の真実

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 町の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!繰り返します。 町の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

若葉さんたちと別れようとした時、そんなアナウンスが流れた。

 

「そういえばそろそろ収穫時期だったな」

 

「「収穫時期?」」

 

僕とカズマさんは一体何事かと思っていた。一体何の収穫時期なのやら……

 

「まぁ、口で説明するより見たほうが早い」

 

若葉さんたち初代勇者パーティーは街の正門に向かっていった。僕らも行ってみるべきと思い、追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

正門へ向かうと僕とカズマさんは目を疑った。何故ならキャベツが飛び回っている

 

「あぁ、二人は知らなかったわね。ここのキャベツはね飛び回るのよ!時期になると、簡単に食べられてたまるかって事で、キャベツ達が逃げ出すのよ。それで山を越えて、海を越えて、誰も知らない秘境の地で枯れると聞くわ」

 

流石は異世界、デカイカエルがいるだけじゃなくキャベツまで飛び回るなんて……ということは他の野菜とかも飛び回っていたりするのか?

 

「えぇ、もう察している方もいらっしゃると思いますが、キャベツ収穫です、一玉一万エリスです。すでに住人には非難して貰っているので安心して、できる限り、捕まえて、ここに入れてください」

 

「なぁ、ウミ。俺帰って寝てていいか?」

 

「一応金がもらえるみたいだし、参加するだけ参加してみたら良いんじゃないの?」

 

色々と頭がついていけなく、疲れ果てているカズマさん。

 

僕は勇者に変身し、樹の武器を取り出し、飛び回るキャベツを縛り上げていく。

 

こういう捕獲関係なら樹の武器が一番だなと思いながら、キャベツを捕獲していくと何故かダクネスさんを縛り上げてしまった。

 

「ごめん。大丈夫ですかダクネスさん!?」

 

「いや、大丈夫だが……ウミのその武器いいな。縛られると全く動けなくなる……はぁ、はぁ、なんて素晴らしい武器なんだ」

 

顔を真赤にさせながら息を荒げてる。この人、もしかして結構ヤバイ人なんじゃ……

 

いやいや、決めつけるのはいけないことだよな。さっきのは僕の操作ミスだったからダクネスさんを縛ってしまったんだ。あの言葉も聞き間違いだ

 

そう思い込ませながら、こちらに迫ってくるキャベツに向かって再度ワイヤーで縛ろうとした時、ダクネスさんが飛び出してきて、また縛られ、更にはキャベツの体当たりを喰らっていた。

 

「縛り上げられ、無抵抗な状態でこの仕打……素晴らしい」

 

どうしよう。この人ガチだよ。見た目は凛々しい騎士なのに……中身が酷い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、ギルド内で収穫したキャベツを使った料理が振舞われていた。

 

僕、銀の二人は皆が野菜炒めを食べている中、一品追加でうどんを食べていた。

 

「それにしても、私達のパーティーも様に成ってきたわね。アークプリーストの私に、爆裂魔法の使い手であるめぐみん、鉄壁の守りを持つダクネス。近距離のギン、オールラウンダーのウミ、最強の布陣ね」

 

アクアさんの言うとおり、結構理想的な布陣だけど……カズマさんが抜けているのは気になる。

 

「隣良いか?」

 

若葉さんとひなたさんが野菜炒めとうどんをもってそんなことを聞いてきた。僕としては断る理由がない。

 

どうぞと言うと若葉さんたち二人は僕の隣りに座った。

 

そういえばアクアさんに聞きたいことがあったんだ

 

「アクアさん、この二人の転生が特例って言ってたのってどういう事ですか?」

 

「ん?言ってなかったっけ?ワカバとひなた、ユウナの三人はかなり特例で転生させてあげたのよ。何せこの二人は寿命を迎えたのにも関わらず私の前に来たんだから」

 

寿命を迎えて?あの場所って若くして死んだ人が来る場所なんじゃなかったっけ?

 

「アクアの言うとおり、私とひなたは300年前に寿命を迎えて死んだんだ。だが……」

 

若葉さんとひなたさんはあの日のことを話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくとそこは真っ暗な空間だった。そしてその空間の中心に水色の髪の女性が座っていた。

 

「乃木若葉に上里ひなたね。あなた達は若くして……あれ?」

 

その女性は私達のことを見て、何か疑問を感じていた。

 

「ねぇ、あんた達どうみてもお婆ちゃんよね。なんでここにいるの?」

 

「何でと言われても……」

 

「よく分からないんですが……」

 

もちろん私達もその理由を知らない。気がついたらここに来ていたのだから

 

「ん~どういう事かしら?手違い?」

 

女性はしばらく考え込むと今度は別の場所から見覚えのある少女がやってきた。

 

「あれ?私、戦ってたはずなのに……」

 

私とひなたはその少女に見覚えがあった。少女は友奈だった。

 

友奈は確かあの戦いで神樹と一つになったはずなのに……どうしてここに

 

すると女性があることを思い出した。

 

「思い出した!?ちょっと前に来たあの三人が願ったからだった」

 

女性はどうして私達がここにいるかの理由を思い出した。

 

女性が言うにはある三人がある願いをした。それはもう一度みんなと一緒に生きてみたいと願ったのだった。

 

女性は女神としてその願いを叶えてあげると約束したのだった。

 

「その三人って……まさか」

 

「あの子達だね」

 

「ねぇ、おばあちゃん達、どこかで見覚えがあるんだけど……」

 

「これはね。かなり特例よ。もう特例中の特例。寿命を迎えた二人に、神と一体化しちゃった貴方を特別に異世界に送ってあげるんだから」

 

女性は微笑みながら私たちに特典を選ばせた。私と友奈は勇者の力をひなたは巫女としての力を得た。

 

「更に特例として二人にはあの頃の姿に戻してあげる。今度は悲しみも苦しみもなく、素晴らしい世界を生きなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「といったことがあってな」

 

若葉さんが自分たちが転生したときのことを話し終えた。まさか二人が寿命を迎えていたということや高嶋さんが神樹と一体化していたなんて、かなり驚いた。

 

「こうして皆と会えた事についてはアクアには感謝だな」

 

「おまけに未来の勇者と子孫に会えたしね」

 

「いやいや、あたしなんて途中退場した身ですよ」

 

銀が苦笑いをしていた。途中退場なんてそんなふうに思っていたのか?でも、僕は知っている。銀はあの二人を守るためにたった一人で戦ったって事を……

 

「そういえばひなたさんの巫女の力ってこの世界ではどんな力なんですか?」

 

「そうね…‥…勇者限定の支援をかけたり、たまに予知が出来るくらいね。最近見た予知は……『死霊の騎士が現れしとき、災厄が現れる』って感じだったかしら」

 

死霊の騎士?災厄?イマイチ分からない。でも、若葉さんは僕と銀を真剣な表情で見ていた。

 

「その時が来たら、お前たち二人にも力を貸してもらう」

 

若葉さんは……いやひなたさんも災厄が何なのか知ってるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿に戻ると何故かエリスさんが暗い顔をしていた。

 

「あ、あの、朝のことまだ怒ってますよね」

 

まだ朝、勝手に出かけたことを気にしているのだと思い、僕は謝るがエリスさんはずっと暗い顔をしていた。

 

「………ウミさん。昼に話していた子は……」

 

「高嶋さんの事、彼女は若葉さん達と同じ初代勇者で……」

 

「そうですか………あのこんな事言いたくないですけど、彼女とはあんまり接しないほうが……」

 

エリスさんが言いたいことは何となく分かる。僕は高嶋さんと友奈を重ねて見てしまい、今以上に苦しい思いをしてしまうんじゃないかって思っている

 

それだったら避け続けたほうが良いかもしれない。だけど僕には……

 

「エリスさんが言いたいことはわかります。でも、こうして出会えたんですから、避けたりなんか出来ませんよ」

 

「………そうですよね。それがウミさんですよね」

 

エリスさんは顔を上げ、僕を見つめた。

 

「明日、用事ありますか?」

 

「いや特には……カズマさん達とも特に予定はないし……」

 

「それでは一緒にクエストに出かけませんか?」




次回、エリス(クリスだけど)との二人っきりでのクエスト。


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