一夜明け、王都では義賊の話で持ちきりだった。それもそうだ。何せ、王城に侵入して、多くの冒険者と兵士を退けて王女様から魔道具を盗むという大事件が起きたのだから。
侵入した仮面の男と銀髪の少年、そして国防仮面と名乗る三人組は多額の賞金首となっていた。
そんな話が王都中で持ちきりの中、僕ら宿で……
「ダダダ、ダクネス!落ちついてえええ!あれにはちゃんとしたわけがあるからあああっ!割れちゃう割れちゃう、頭が割れちゃう!」
「おい話を聞けよ!聞いてくれれば、ああ、それなら仕方がないなって理解してくれるから!これ以上はやばい!死んでしまう!」
ダクネスさんはカズマさんとクリスさんの二人に昨日の経緯を聞き出すために、アイアンクローを喰らわしていた。僕、須美、牡丹はというと……
「何か理由があってのことだから詳しくは聞かないし、折檻とかするつもりはないけど……」
「あの、東郷。折檻とかするつもりはないっていうけど、何で僕ら正座させられてるの?」
「海くんだけならまだしも、須美ちゃんや牡丹ちゃんを巻き込んだのは行けないと思って……」
笑顔でそう言う東郷だけど、目が笑ってないから物凄く怖い。
「お母様、物凄く怒ってる……」
「何だか自分自身に怒られるっていう経験をするのは何だか変な気分ね」
「二人に協力してもらったのは、たまたまだよ。今度は東郷も誘うか………」
「そういう問題じゃないからね」
冷たい一言で、僕は黙り込むのであった。それからカズマさん達はダクネスさんに詳しい話をすると、ダクネスさんは呆れていた。
「全くお前達は………なぜ私に言わなかったのだ。最初からきちんと話せばあんな馬鹿な真似をしなくても私がちゃんと話を付けてやったものを」
「そうは言っても、使い方によったら永遠の命すら手に入る代物だ。俺もその話を聞いた時には、早くお偉いさんに報告しないとって慌てたんだよ。そしたらクリスが偉い人ほどこれを欲しがるって言ってさ」
「あ、あたしは、ダクネスなら大丈夫だろうと思ったんだけどね!ダクネスに頼もうとしたら助手君が『ダクネスの立場がまずい事になるから、バレたらやばいだろ!』って言われてね!?」
「そういえば海くんに頼まれた時に、ちょっと鼻を明かしたい連中がいるから協力しろって言ってたけど、それって誰のことなの?」
須美が思い出したかのようにそのことをダクネスさんと東郷に伝えた。それを聞いたクリスさんも……
「そういえばそんな事言ってたね。ウミさんは誰の鼻を明かしたいの?」
「そ、それは……ほら、ダクネスさん、とりあえず城に行くんでしょ。早く行こう」
「あ、あぁ、そうだな。クリス、お前はもう王都から出ろ。その髪だと目立ってしょうが無いからな」
「は~い」
クリスさんが帰る前に、ダクネスさんがある事を聞いていた。それは盗んだものは神器以外に何かあるかということだった。クリスさんは素直にカズマさんが盗んだということ白状した。カズマさんはエロ本とアイリスが付けていた指輪を盗んだことを話すのだが、実はその指輪は王族が伴侶になる者に渡すらしい。それを持っていることは誰にもバレてはいけないらしく、もしバレたら口封じのために始末されてしまうとのことだった。
カズマさんって、本当にとんでもないものを盗むなと思いつつ、僕らは城へと行くのであった。
お城へ行き、謁見の間でアイリスとお別れの挨拶を済ませにやってきた。アクアさんはアイリスとクレアさんに盗まれたネックレスの危険性ともう悪用できないように封印を施したことを伝えていた。
そんな中僕は周りにいる貴族たちが未だにカズマさんに対して小さな声で何かを言っているのが聞こえ、僕はチャンスと思った。
「アイリス様、昨日は申し訳ありませんでした」
「いきなりどうしたんですか?ウミお……ウミ様」
「昨日の賊に侵入された時、駆けつけられなくって……」
「おい、ウミ、何を言おうと……」
ダクネスさんが僕が何を言おうとしているのか分かり、止めようとするが、僕は止める気はない。
「もしあの場にカズマさんがいたら、賊なんて捕縛できたと思ったんです。なんたって、カズマさんは誰かのためなら物凄いことを成し遂げられる人ですからね」
僕の言葉を聞いて、カズマさんは照れくさそうにする中、周りにいた貴族たちは『何を言っているんだ?この少年は!?』『何も分かってないくせに偉そうなことを……』などという声が聞こえてきたが、僕はそれを無視した。
「ウミ様、良いのです。過ぎたことを今更言っても……それにあの義賊たちはあの神器の危険性を知って、あのような事をしたのですから……」
笑顔でそう言うアイリス。そのアイリスの笑顔見て、僕はあることに気がついた。もしかしてアイリスのやつ、あの義賊が誰なのか知ってるのか?
「そうですか。すみません、変なことを言って……」
僕らはそのまま謁見の間をあとにするのであった。
レインさんのテレポートの準備は終わるまでの間、僕はダクネスさんにある事を言われた。
「お前が鼻を明かしたい奴らというのは……」
「カズマさんをバカにしていた貴族たちのことだよ。あの場であんなことを言ったのは……」
「自分を悪者にするためか……お前は仲間思いでいいやつだが、自分のことを考えてなさすぎだ。相談くらいは乗るからあまり抱えすぎるな」
「はい、そうします」
ダクネスさんは優しい笑顔でそう言うのであった。そしてテレポートの準備が終わり、僕らはアクセルに戻るのであった。
アクセルに戻ったらいつもどおりの日常が流れるのだと、この時の僕はそう思っていたのだった。
グダグダになってすみません。次回は7巻の話をやっていきますのと、話の構想が思いついたので、別の作品としてゆゆゆいの話を書くつもりです。ゆゆゆいの方はいつ上がるかはまだ未定です