この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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74 義賊の誘い

観光を終えた僕らはお城に用意された部屋で休むことになったのだけど……

 

「ごめん、僕は宿にでも……」

 

「えっ、どうして?」

 

「パパもいっしょに寝ようよ」

 

何故か部屋割りが僕と友奈と友海が同室になってしまっていた。まさかと思うけど親子だから気を使わしてくれたのか?でも、まだ僕らは恋人同士だし……

 

「海くん、一緒に寝ないの?前はめぐみんちゃんを挟んで寝たのに?」

 

「あれはめぐみんに騙されて……」

 

「パパ、いつも三人で寝てるよ?」

 

友海は無邪気な笑顔でそう言うけど、こういう時本当にどうすれば良いのだろうか……逃げ出したりしたら友奈に幻滅されそうだし……寝たら寝たで東郷や須美あたりのお話が待ってる。今更カズマさんの手伝いに行くって言っても、友奈と友海は手伝うって言い出すし……くそ、どうすれば……

考え込んでいるとドアの方からノックが聞こえ、僕らの部屋に入ってきたのは東郷と須美と牡丹だった。

 

「海くん、何で私のことを救いの女神みたいな目で見たの?」

 

「東郷、良い所に……悪いんだけど、今日は友奈たちと一緒の部屋で寝てくれ。僕は少し外に出かけた後、お前たちの部屋で寝るから」

 

「別にいいけど……海くん、奥手なのは良いけどその内ヘタレって呼ばれるよ」

 

察してくれるのは良いけど、ヘタレは余計だから………とりあえず僕は直ぐ様部屋から出ていくのであった。

 

 

 

 

東郷SIDE

 

「海くんは本当に奥手ですね。友奈さん、苦労してます」

 

「須美ちゃんの言うとおりよ。もしかして私たちに怒られるって思われてるのかしら?」

 

「ママ、大丈夫だよ。パパは恥ずかしがってるだけだからね」

 

「う、うん、でも………もうちょっと恋人らしいことしたいかな……」

 

「キスとかですか?」

 

牡丹ちゃんの突然の発言を聞いて、顔を真赤にさせる友奈ちゃん。それにしても私の未来の子供なのに、躊躇なくそういうことを聞けるのは、未来の旦那様に似たのかしら?

 

「大丈夫です。友奈おば様と海おじ様はいつも行ってきますのキスとかお帰りとかのキスをしていて、近所では有名なラブラブ夫婦だって言われてますよ」

 

「ら、ラブラブ……」

 

「牡丹ちゃん、友奈ちゃんが固まっちゃってる。あんまりでも詳しい話は聞きたいかな?」

 

「それじゃ今日お話しますね。まず……」

 

「東郷さんも、牡丹ちゃんもやめてーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

外に一旦逃げ出し、少し気持ちを落ち着かせていた。

 

「いつまでも逃げるのはよくないのは解ってるのに……はぁ」

 

こういう時カズマさん……は意外とヘタレだってめぐみんに言われていたな。誰を見習えばいいのだろう?

 

「あれ?こんな夜にまた会うなんてね」

 

するとクリスさんが声をかけてきた。別に呼び出したりしてないから今回は偶然だろう。でも、どうしてクリスさん、疲れた顔をしているのだろうか?

 

「もしかして泥棒の帰り?」

 

「お願いだから人目のある場所で言わないでくれない?まぁたしかにそうだけどさ……」

 

「もしかしてアルダープの屋敷に行ってたの?カズマさん達に遭遇したりは?」

 

「したけど、カズマさん、見逃してくれてね。いやー助かった、助かった。それでウミさんはこんな所でどうしたの?何か悩み事?お姉さんに話してみて」

 

「えっと実は……いまいち一歩踏み出せないというか……」

 

友奈との事を話そうと思ったら、突然クリスさんが僕の口元に指を当ててきた。

 

「もしかしてユウナさんのこと?その相談は私の頼み事を聞いてくれたらいいけど……」

 

「頼み事?もしかして盗みの手伝いですか?」

 

「まぁね。でも実行するのは私、ウミさんは神器がどこにあるか調べてほしいかな?」

 

「神器ですか……この街にあるとしたらミツルギさんの魔剣と僕の白月、あとはアクアさんが身につけてる羽衣ですよね」

 

「今日行った屋敷で見つけた反応は先輩のものだったのかな?とりあえず神器の手がかりを見つけてね。それで一歩ふみ出せないって?」

 

「実は……」

 

友奈と一緒に寝ることになったことを話すと、クリスさんは物凄い呆れた顔をしていた。

 

「ウミさん、ヘタレ?」

 

「それ東郷にも同じことを言われた……」

 

「話を聞いた限りじゃバスタオル越しだけど抱き合ったり、めぐみんさんと一緒だったとは言え一緒に寝たりしたんだよね」

 

「うん」

 

「なのにいざっていう時に逃げ出すのはよくないよ。ユウナさんはきっとイチャイチャしたいって思ってるからね」

 

「分かってます……」

 

「まずはキス位はしたら?そうしたら色々と踏み出せるからね」

 

「はい………」

 

「それじゃ頑張ってね」

 

クリスさんはそう言って、どこかへ去っていくのであった。一歩踏み出すか……さっき部屋を変えてほしいって言ったのに、やっぱり無かったことにしてほしいというのはどうかと思うけど、言ってみるか

僕はお城へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お城の僕らの部屋の前に行くと何故か東郷がドアの前で待っていた。

 

「おかえり」

 

「どうしたんだ?寝ないのか?」

 

「海くんのことだから、いっぱい悩んで戻ってくるだろうと思ってね。部屋は交換しないでおいたから……」

 

東郷はそう言って、自分の部屋に戻ろうとするのであった。僕はそんな東郷を呼び止め、

 

「ありがとうな」

 

「どういたしまして、海くん、友奈ちゃんを悲しませないでね」

 

東郷は笑顔でそう告げ、戻っていくのであった。僕は東郷を見送り、部屋に入ると友奈と友海はベッドで眠っていた。僕はそっと寝ている二人のそばに寄り、友奈の頭をなでた。

 

「友奈、僕も頑張るからな」

 

僕はそう告げて、友海の隣に眠るのであった。

そして朝になり、目覚めかけた時、頬に何だか柔らかい感触があり、目を覚ますと……

 

「友奈……顔真っ赤だけどどうしたんだ?」

 

「え、えっと、なんでもないよ。海くん、おはよう」

 

何故か友奈はそそくさと部屋から出ていくのであった。いまのってまさか……な

 

「パパ、おはよう?ママは?」

 

「友海、おはよう。顔洗ってこい」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ終えるとカズマさんたちが謁見の間に来ていると話を聞き、僕らもそこへ行くことになった。友奈はいつもどおりだったけど、朝のアレは何だったのだろうか?

謁見の間の玉座にはアイリスが座り、クレアさんと他の貴族が集まっていた。

 

「あれだけ自信有り気だった賊の捕縛に失敗したのですか……」

 

「いや、完全に失敗したとは言えないんじゃないかな!この俺がいなかったら………」

 

カズマさんが言い訳しようとした瞬間、クレアさんが僕の事を見て、カズマさんの言葉を遮った。

 

「侵入を許し、賊を捉えるのに失敗したとは言え犯行を防げたのは良いことかもしれませんね。あとのことはこちらで対処しますから、あなた方はアクセルの街にお帰りになったほうが良いですよ」

 

他の貴族の前だから思いっきり責め立てると思っていたけど、かばってくれたということでいいんだよね。アイリスも嬉しそうだ。

 

「カズマ、カズマ、折角だからおみやげでも買いに行くましょう」

 

「アクアの言うとおりですよ。折角王都まで来て、ゆっくり観光もできませんでしたし、あとは観光でもして帰りましょう」

 

アクアさんとめぐみんの言葉を聞いて、カズマさんは二人に付き合うことになり、僕らもそれに付き添うことになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、宿で帰る準備をしているときのことだった。突然警報が鳴り響き、

 

『魔王軍襲撃警報!魔王軍襲撃警報!現在魔王軍と見られる集団が王都近辺の平原に展開中!騎士団は出撃準備。今回は魔王軍の規模が大きいため、王都内の冒険者各位にも参戦をお願いいたします!高レベル冒険者の皆様は、至急王城前へ集まってください!』

 

そのアナウンスを聞き、僕らも行くべきかと思い出ようとするが、カズマさんは行くのを渋っていたが、結局行くことになった。

 

魔王軍との戦いはそれは凄いものだった。魔王軍が凄いというわけではなく、参加した友海と牡丹の実力が凄かった。

友海は大群の魔王軍とバーテックスを爆裂・勇者パンチで一気に葬り、未来の弟子に負けじとめぐみんは爆裂魔法で殲滅、牡丹は上級魔法が込められた矢で、倒していった。アクアさんは傷ついた兵士や冒険者の治療をし、ダクネスさんはその防御力で味方の盾になった。

僕は魔王軍の動きを止めるため、杏さんと一緒に切り札を使って動きを封じながら、友奈、東郷、須美、銀が倒していった。

ただカワイそうだったのが、コボルトに囲まれて殺されてしまったカズマさんだった。これでまたカズマさんの評価が落ちなければいいけど………

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後がちょっと急ぎ足だったのはごめんなさい。


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