この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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73 話し合いと信頼

晩餐会の次の日、予想通りカズマさんが義賊を捕まえると言い出し、一番現れそうなアルダープの別邸にて待ち伏せすることになった。僕らもその手伝いをしようとするが、何故か勇者である僕らはクレアさんに呼び出され、お城の一室に招かれていた

 

「済まないな。カズマ殿の手伝いをするつもりだったのだが」

 

「いえ、ただ僕らが呼び出されたのって、バーテックスのことですよね」

 

「えぇ、バーテックスについて一番詳しいみたいだから、あなた方に話を聞くべきかと思って……」

 

「別にいいですけど……」

 

「あのクレアさん、私達もお伝えできるような情報は持っていませんよ。バーテックスについても長い年月をかけてもまだ分からないことだらけです」

 

ひなたお姉ちゃんの言うとおり、バーテックスについてはまだ僕らも知らないことだらけで伝えられることは限られてる。

するとクレアさんは首を横に振った。

 

「それでも構いません。我々王都に住む人間としてはバーテックスの詳しい情報を求めるつもりはないです。ただ奴らは何なのか?奴らはどうして人間や魔物を襲うのか、何故一部の個体だけ魔王軍と一緒にいるかなどで分かっていることだけでも構いません」

 

「そうですか……まずバーテックスについてですが、私達が住んでいた国に突如として現れ、人間に対して殺戮を繰り返しました」

 

「人間?ひなた殿がいた国では魔物は襲われなかったのですか?」

 

「というより魔物はいませんでしたね。それほど変わった国ですので……」

 

流石に別の世界だからとは言えないから、そう言うしかないだろうけど……ただ本当にどうしてバーテックスは魔物を襲ったりしたんだろうか?すると杏さんが挙手をした。

 

「その……魔物を襲ったという話なんですが……ただの予想ですけどバーテックスは見たことのない生物だったから魔物を襲ったりしたんじゃないでしょうか?」

 

「見たことのない……生物ですか……」

 

クレアさんは杏さんの言葉を聞いて黙り込んだ。でも、確かに杏さんの予想が正しければ、魔物を襲う理由に納得ができる。

 

「杏さんの予想に一つ加えるとしたら………バーテックスは知ろうとしているんじゃないんですか?」

 

すると東郷も何か答えに行き着いたのか語りだした。

 

「私達のいた国には他にもたくさんの国がありましたが、全てバーテックスに滅ぼされました。バーテックスは残った人間を滅ぼすために私達の国に進行をしましたけど、何らかの理由でこの国を見つけて……」

 

「滅ぼした人間がまだたくさんいるから、こっちに進行を進めた。そこでバーテックスは魔物の存在を知り、それが何なのか知るために魔物を襲うようになったということですね」

 

東郷と須美の説明を聞き、何だか本当のことに思えてきた。ただこの世界を見つけた原因は僕やカズマさんが女神を連れ出して結界に穴が空いて、バーテックスにこの世界を見つけられたということだろうな……

 

「えっと……東郷さんや須美ちゃん、杏ちゃんの説明を聞いててもよくわからないんだけど……」

 

「ママ、私もわかんない」

 

友奈と友海は話がよく分からず、頭を悩ましていた。すると銀が二人に簡単に説明をしだした。

 

「わかりやすく言うと、バーテックスが他の餌場を見つけたら、変わった餌があるから食べ始めたって言うことだよ」

 

「なるほど、わかった気がする」

 

「銀お姉ちゃん、すごい~」

 

「銀、苦労をかけるな」

 

「銀はこっちに来てから変わったわね」

 

「私が知ってる銀じゃないみたい……」

 

僕、東郷、須美に褒められる銀であったけど、須美のは褒めているのかどうか怪しい

 

「えっと話を続けてもよろしいでしょうか?魔王軍といるバーテックスについてですが……」

 

「あのバーテックスは別の個体と認識した方がいいです。あれは私達が祀っている土着神の一人が使わしたバーテックスです。何故魔王軍と一緒にいるかですが……」

 

僕は以前ハンスが言っていた言葉を思い出し、クレアさんにそれを告げた。

 

「以前魔王軍幹部が話していました。何故神樹は人間を守るのかを知りたいって、だからこそ現れたんだと思いますけど……ただどうして魔王軍と一緒にいるかは……」

 

「そちらに関してはまだ分かっていないみたいですね。ですがある程度の情報が集まりました。本日はありがとうございます。今日は城に部屋を用意してありますので……」

 

話し合いが終わり、クレアさんが立ち去ろうとするが、足を止め僕の方を見つめた。

 

「ウミ殿、カズマ殿は義賊を捕まえられると思いますか?」

 

「あー、どうだろう……」

 

カズマさんの場合、失敗しそうだな。ただ普通の失敗じゃなくって、義賊がクリスさんだって知っちゃって、ワザと失敗しそうだ

 

「もしかしたら失敗しそうですね。ただ事情があるかもしれません。カズマさんの事を変に攻めたりとかは……」

 

「他の貴族の前では不用意に庇い立てすることは出来ません。それはアイリス様も同じです。ですが、アイリス様は幻滅したりしないと思いますよ」

 

「そうですか……」

 

クレアさんとの話し合いが終わり、僕らは一旦解散することになった。僕と友奈は友海と街を観光しに出向くことになり、ひなたお姉ちゃんたちはカズマさんの手伝いをしに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

「パパ、ママ、見てみて」

 

「待って、友海」

 

母と子の交流を見ていると気持ちが穏やかになっている僕、するとそこに見覚えのある人物と遭遇した。

 

「やぁ、君はアクア様やサトウカズマと一緒にいた……」

 

「ミツルギ、王都にいたんですか?」

 

「君はどうして年上である僕を呼び捨てするんだい?」

 

そういえば確かに呼び捨てにしてるんだろう?最初にあった時の印象が悪かったからか?

 

「まぁいい。君たちの活躍は聞いてるよ。魔王軍幹部を倒したり、デストロイヤーを破壊、そしてアクセルの街に襲来した謎の生物を討伐したり……」

 

「ミツルギ……さんはこの王都を拠点にしてるんですよね。謎の生物……バーテックスなんですけど、そいつらと戦ったりとかはしてますよね」

 

「あぁ、王都に行く前に一度遭遇し、魔剣が通じなく逃げ出したさ。だけどこの王都で奴らと戦った時は魔剣が通じた。君はその理由を知っているのかい?」

 

特典……神器である魔剣でもバーテックスを倒せないのか……アクセルの街での戦いではカズマさんが巫女のスキルを使って、他の冒険者でも倒せるようになったし、王都では御神木があるからだろうな……

僕はミツルギさんに御神木や巫女のスキルについて軽く説明した。

 

「御神木や巫女の職業のスキルの力か……君の言うとおりならバーテックスはかなり厄介な相手だね」

 

「まぁしばらく王都にいるのでしたら大丈夫だと思いますよ」

 

「あぁ、分かった」

 

ミツルギさんは僕と別れ何処かへと行くのであった。さて、僕は母と子の交流をもう少し見ておきますか


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