この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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71 上里友海は勇者である

突然落ちてきた花びらから謎の少女が現れ、僕のことをパパと呼んでいた。その場にいた全員が僕のことを見ていた。

 

「いや、待て、僕にまだ子供とか……」

 

「えっ?パパじゃないの?でも、少し若いけど……パパだよね」

 

「おいおい、ウミ。認知くらいしろよ」

 

認知とか言わないでほしんだけど、と言うか本当にこの子は一体何者なんだろう?

するとまたどこからともなく一枚の青白い花びらが落ちてきて、地面に落ちるとまたもや姿を変えた。

 

「ん……ここは……」

 

黒く長い髪の少女に姿を変えた。少女はあたりを見渡すと僕のこと……というより僕の側にいる少女の方を見て安堵していた。

 

「友海!!勝手にいなくならないでよ」

 

「えっ、私勝手にいなくなってた?」

 

「そうよ。神樹さまから放たれた光に包まれたと思ったら、友海がいなくなってるし……って海おじさま!?」

 

今度はおじさまですか……というか色々とこの状況をまとめたい。僕らは一旦城へと戻り彼女たちから話を聞くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

僕らが泊まっている部屋に戻り、僕、カズマさん、アイリス、クレアさんは二人の少女に話を聞くことになった。

 

「えっと、お前らは……」

 

「ねぇ、牡丹。この人カズマおじちゃんだよね」

 

「おじ!?」

 

「しー、ちょっと黙っていなさい」

 

見知らぬ少女におじちゃん呼ばわりされてショックを受けるカズマさん。というかこの子達はカズマさんの事を知ってるのか?

 

「だって、カズマおじちゃんも若いし、アイリスお姉ちゃんは私達と同じくらいだよ」

 

「お姉ちゃん?」

 

「カズマ殿、ウミ殿。本当にこの子たちに覚えは?」

 

「うん、まるでないけど……」

 

「なぁ、ウミ、気がついたか?この二人誰かにどことなく見覚えがあるんだけど……」

 

カズマさんも見覚えがあるみたいだな。特に友海って子がある人物に似ている。

牡丹という少女は僕らが話している内容が聞こえたのか、状況を理解した。

 

「なるほど………神樹様が言っていた事はこういうことですか」

 

「なんて言ってたっけ?」

 

「友海、貴方も聞いたはずですよ。『二人の勇者、時を遡りその時代の勇者の助けとなれ』って、つまりは私たちは未来から来たって言うことよ」

 

「そうなの!?」

 

「そうなの!だからカズマおじ………カズマさんや海さんはもちろん、アイリスさんも若いんですよ」

 

「それじゃ私達のことわからないよね」

 

「改めて自己紹介をした方がいいわね」

 

なんだか気になるワードが聞こえたのは気のせいだろうか?過去がどうのこうのとか……

いや、でも神樹が関わっているとなると須美やそのっちの事もある

 

「こちらでは初めましてですね。私は東郷牡丹です」

 

「私は上里友海です。えっとね、なんだか未来から来ちゃいました」

 

未来から来ちゃいましたって……そんな軽く言われても……

 

「未来ということは、ウミお兄様、勇者というのは時間を渡り歩くことが……」

 

アイリスは目をキラキラさせながらいうけど、勇者が時間を渡り歩くことは出来ないんだよな……おまけに神樹がどうのこうのとか言っていたということは、造反神関係か

 

「アイリス。僕ら勇者は時を渡り歩くことは出来ないけど、多分さっき話した神様が関係してるかもしれない。そういうことでいいのか?友海、牡丹」

 

「うん、そうだよ~」

 

「流石は海おじ様です。すぐに理解して下さり助かります」

 

「なぁ、色々と聞きたんだが……」

 

ショックから立ち直ったカズマさんがある質問をした。多分だけど僕も聞きたいことだ。

 

「お前らが未来から来たっていうのは信じるとして、えっとユミの両親は……」

 

「パパとママだよ」

 

「友海、名前を教えて上げなさい」

 

「そうだったね。パパはここにいるパパで、ママは友奈って名前だよ」

 

やっぱり誰かに似ていると思ったら、僕らの子供か……いやいやまさか将来こんな可愛い子が生まれるなんて……

 

「おい、ウミ、感動してないで……駄目だ。未来の自分の子供の可愛さに感動してる」

 

「あの、私の方からいいですか?」

 

「はい」

 

「先ほど私のことをお姉ちゃんって呼びましたけど、未来では私とカズマお兄様達と交流があるんですか?」

 

「えぇ、私の両親と友海の両親……海おじ様と友奈おば様は色々と忙しい方で、こちらにいらっしゃるカズマおじ様のパーティーやアクセルの街の魔道具ショップの方々、もちろんアイリス姉様がよく私達の面倒を見てくれています」

 

「クレア、クレア、聞きました?姉様ですって」

 

「アイリス様、何だかカズマ殿に毒されていませんか?私としてはまことしやかに信じられませんが……」

 

「はっ!?」

 

ようやく正気に戻った僕は、さっきのクレアさんの言葉に対して返した。

 

「あんまり全部気にしない方がいいですよ。そのうち疲れますから」

 

「えぇ、ウミ殿がそう言うのであれば……」

 

とりあえず友海と牡丹の二人は僕らとは別の部屋に案内されるのであった。それにしても過去からではなく、未来から勇者を呼ぶなんてそこまで造反神はやばいということなのか?

それに明らかに二人は御神木から振ってきた花びらから現れたのも気になる。一体あの御神木は何なんだろう?

そんなことを悩んでいると、カズマさんがアイリスにチェスに負けていじけているのが目が入った

 

「ウミ、かたきを討ってくれ……」

 

「しょうがないな」

 

悩んでいてもしょうが無い。クリスさんかアクアさん辺りにでも聞いてみればいいか。今は気分転換にアイリスと遊ぶか

 

「じゃ、僕と一勝負」

 

「はい」

 

しばらくアイリスとチェス勝負し、ギリギリの所で僕が勝った。

 

「よし!」

 

「も、もう一回です!もう一回お願いします!」

 

「もう遅いし、今日は休もう。僕もいろんなことが起こりすぎて疲れたよ」

 

「では明日お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、体が鈍ってきたので、いつもの鍛錬をしようと思ったけど、どこでやろうかと悩んでいるとクレアさんとその両隣には友海と牡丹がいた。

 

「おはようございます。ウミ殿。どうされましたか?」

 

「早朝の鍛錬をしようと思いまして、友海たちは?」

 

「私達も鍛錬だよ」

 

「こう見えて現役の勇者ですから鍛錬は欠かしたことありません」

 

流石は未来の勇者だな。僕の教育が良いのかな?とありあえず僕らはクレアさんの案内でお城の修練場に案内され、一緒に鍛錬をすることにした。

 

 

一通りの鍛錬が終わると僕はあることが気になった。

 

「そういえば二人の勇者の姿ってどんな感じなんだ?」

 

「見せましょうか?友海」

 

「うん、見ててね。パパ。変身」

 

二人が眩い光に包まれ、光が止むと友海は桜色の衣装に身を包み、両手に鉄甲を装備していた。牡丹は青白い衣装に、弓矢を装備していた。

 

「母親の装備を引き継いだみたいだな」

 

「うん、ママが使っていたシステムを引き継いだんだよ」

 

「こっちではお母様は銃を使っているそうですが、私は弓矢のほうが良いと思いまして……」

 

「それじゃ折角だから一戦やるか?」

 

「うん、いいよ」

 

友海は楽しそうにジャンプしていた。僕は勇者の姿に変わり友奈の鉄甲を装備した。

 

「海おじ様は色んな勇者の武器を使えると聞きましたが、本当みたいですね」

 

牡丹は一対一のほうが良いと後ろに下がり、友海は拳を構えた。

 

「それでは両者準備はいいですね。スタート」

 

クレアさんが合図をした瞬間、一瞬の内に距離を詰められ、友海の蹴りが僕の顔面に迫ってきていた。僕は咄嗟に鉄甲で防御し、反撃のパンチを繰り出そうとするが、友海は直ぐ様後ろへ下がった。

 

「パパ凄いよ!?今の防ぐなんて」

 

「未来の僕は防げなかったのか?」

 

「うん」

 

元気良く頷くけど、何だか未来の自分が情けないというか年なのだろうか……

 

「でもパパ、これはどうかな?」

 

友海は右腕を思いっきり引くと同時に、右拳に何かが集まっているのに気がついた。この感じ……まさか……

 

「友海、それは駄目!?」

 

「必殺!爆裂!勇者パンチ!」

 

眩い閃光とともに友海の拳は僕の頬をかすめ、後ろにあった壁を破壊した。

 

「「………………はっ?」」

 

僕とクレアさんは今のパンチで破壊された壁を見て、ただ呆然としていた。

 

「どう?めぐみん師匠から教わった爆裂魔法とママのパンチを合わせた必殺技」

 

「友海!?それは対人に使用しては駄目だと言ったじゃないですか!!クレアさん、申し訳ありません。弁償を……一生かけて弁償しますんで」

 

「い、いえ、私の方もこんなことになるとは思っていませんでしたので……」

 

うん、未来の勇者はすごすぎだろ……

 

 

 

 

 

 

 

牡丹が必死に謝り、とりあえず弁償はしなくていいとのことになったが、ちょっと気になったのは勇者システムについてだ。

 

「なぁ、未来だと勇者システムって、こっちの世界のスキルと組み合わせられるのか?」

 

「はい、このシステムはカズマおじ様が作ったものですよ。あっ、この事はこの時代のカズマおじ様には内緒でお願いします。思いつかなくなるので」

 

「まぁ、未来に影響があるからしょうがないけど……ん?思いつかなくなる?」

 

何だろう?誰にだって思いつきがあるんだけど、ここに来て思いつきという言葉は嫌な言葉にしか聞こえなくなっている

 

「大赦の勇者システムの管理者とカズマおじ様がお友達になって、二人が酒の勢いでこのシステムを作って……」

 

ろくなものじゃないな。しかもデメリットとかないみたいだし……どんだけだよ

 

「満開や切り札といった強力ですが危険度が大きいシステムは全部廃止し、勇者の防御面とスキルスロットに集中して作られたものが私達の勇者システムです。防御面は力尽きなければほぼ攻撃を受けきれます」

 

「未来って本当に進んでるんだな」

 

僕がそう呟くと、僕らの部屋からカズマさんの大声が聞こえ、直ぐ様駆けつけドアを開けた

 

「どうしたの………すみません、部屋を間違えました」

 

「どこへ行くんだ?ウミ、お前が付いていてこんな状況になっているのはどういうことだ?」

 

ものすごい形相のダクネスさんがカズマさんを締め上げていたので、立ち去ろうとするけど逃げられなかった。

 

「もう駄目じゃない海くん、友奈ちゃんをこんなに放っておいて……」

 

「縄きつめにしておきましょう」

 

あの東郷、笑顔が怖いし、何故か来ている須美も僕を縄で縛ろうとしていた。それを見ていた友奈、杏さん、銀はオロオロしていた。

 

「聞いたけど王女様と遊んでいたんだって?」

 

ひなたお姉ちゃんも怒ってるし、アクアさん達は呆れて僕らのことを見ていた。どうにかして逃げ出したい。すると友海は……

 

「あっー、ママだぁー」

 

友海は友奈に抱きつき、友奈は戸惑っていた。いきなりのママという発言にダクネスさんは僕のことをゆっくり見た。

 

「説明してくれるな」

 

「はい……」

 

二人のことをある程度話した。皆話を聞き終えて驚きを隠せないでいたが……

 

「神樹が未来から送ってきたということは、造反神関係ね。それに王都にある御神木も気になるわね」

 

ひなたお姉ちゃんが冷静に考えていた。すると友海はひなたお姉ちゃんに向かって

 

「ひなたおばあちゃん、凄く若いね」

 

「おばあ……!?」

 

おばあちゃん呼びにショックを受けるひなたお姉ちゃん、するとカズマさんは笑みを浮かべ、友海にあることを訪ねていた。

 

「なぁ、ユミ。未来での皆の呼び方はどんな感じなんだ?」

 

「えっとね、美森ママでしょ、杏お姉ちゃんでしょ、ママはママでしょ、銀お姉ちゃんでしょ」

 

「美森ママ……未来でも海くんと友奈ちゃんとの付き合いがあってよかった」

 

「はい、仲がいいですよ。お母様」

 

「ひなたさんがお婆ちゃんなのに、私がお姉ちゃんで良いのかな?」

 

「というか未来でもお姉ちゃん呼びなんだ」

 

「それにめぐみん師匠、アクアお婆ちゃん、ダクネスおばちゃんでしょ」

 

「どういった経緯で師匠なのか気になりますが、いいですね」

 

「お婆ちゃん!!」

 

「おばちゃん!?」

 

ひなたお姉ちゃん、アクアさん、ダクネスさんの三人はショックをうけるのであった。

 

 

 

 


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