エリスSIDE
朝方目が覚めるとソファーで寝ていたはずのウミさんの姿がなかった。
一体どこに行ってしまったのかと思い、エリスからクリスに変わり探しに行くが街の中では見当たらなかった。
一体どこに行ってしまった?もしかして一人で無茶なことをしているんじゃないか?
午前中の間ずっとウミさんの行方が気になってしまっていた。
「……クリス。何か機嫌が……」
「バインド」
どうして書き置きもせずに宿を抜け出してしまったのだろうか、ずっと理由が何なのか気になっている。
「な、なぁ、クリス。町中でこういうのはどうかと思うぞ……」
気がつくとダクネスがロープで縛られていた。
「どうしたの?いきなり縛られて……」
「い、いや、気がついてないのか?とりあえず解いてくれないか……」
さっきから気がつくとダクネスがいつの間にか縛られている。一体どういうことだろうか?
「こういうプレイはいいが、流石に何度もされるのは……」
一体ウミさんはどこにいるのやら………
少し遅めのお昼になってしまい、ギルドに行くとウミさんがアクア先輩たちと楽しげに話しているのを見つけた。
この人は人が心配していたというのに……
だから私は少しだけど睨みつけたりした。
アクア先輩を特典に選んだカズマさんに盗賊のスキル『スティール』を教えたのだが、何故か彼のスティールは人のパンツを盗ってしまうというものだった。
カズマさんはどうして財布やナイフじゃなく、パンツを盗るのだろうか?もしかして物凄い幸運だからか?
とりあえず一度ウミさんに言えば、カズマさんのこと怒ってくれるだろうと思い、ギルドに戻った。
その時私が目にしたのは、ウミさんが一人の女の子の腕を掴んでいる姿だった。
「友奈!!」
「えっ!?」
その時のウミさんは今まで見たことない表情をしていた。
僕は何故かこの世界にいる友奈の腕を掴み、呼び止めていた。
「え、えっと?」
何故か友奈は困った顔をしている。どういうことだ?僕のことを忘れてしまったのか?
その時、僕の首元に鈍く光る刃が当てられた。
「……高嶋さんが困ってるでしょ。その手離して……」
いつの間にか後ろに見知らぬ少女がいた。この子は一体何者だろうか?というか高嶋って、結城じゃないのか?
「群ちゃん!?ダメだよそんな事しちゃ」
もしかしてこの友奈は僕が知っている友奈じゃないのか?
僕は友奈?の腕を掴んでいた手を離した。
「ごめん、知り合いだと思って……」
「あ、ううん、ちょっとびっくりしたけど……」
「高嶋さん、知り合いだと思って声をかけるっていうのはナンパの一種だよ。気をつけて」
この大鎌の少女はさっきから軽蔑な目で僕の事を見ているけど、僕は決してナンパが目的じゃないのに……
「お~い、何だ揉め事か?」
「あんまりギルド内でそういう事をしていると追い出されてしまうぞ」
カズマさんとダクネスさんが僕に近づいてくると同時に、友奈?と大鎌少女の所に何人かの少女がこっちにやってきた。
「何を騒いでんだー」
「千景さん!?武器をしまって下さい!?じゃないと怒られますよ」
「何かあったのかしら?」
「やれやれ、千景。何を………」
やってきた少女たちの中に若葉さんがいた。更には遅れてアクアさん、めぐみん、銀もやってきた。
「あら?ワカバ達じゃないの。何してるの?」
「何だか一悶着起きてるみたいですね」
「海、お前も意外とトラブルに巻き込まれるんだな」
銀、お前じゃあるまいし……
一旦落ち着こうとカズマさんの提案で、僕らは席につき話をすることになった。
「私が今朝言っていた未来の勇者であり、ひなたの子孫である上里海だ」
「貴方が子孫の海くんね。私は上里ひなた。ねぇ、さっきのはやっぱりナンパとかだったり?」
「違いますよ。ナンパじゃなくって、友達にそっくりで……」
「ナンパの常套句……」
「あの、そっちの大鎌持ってる人は誤解を生みかねないことを言ってるのは何でですか?」
「ほら、ウミ。お前も聞いたことないか?百合とかそういうのだよ」
隣りに座るカズマさんがボソッと呟いた瞬間、大鎌少女は大鎌を抜こうとした。
「群ちゃん落ち着いて!?よく分からないけど、ウミくんはナンパとかそういう目的じゃないと思うよ。ねぇ、ウミくん。私とその友達の子ってそんなに似てるの?」
「あぁ、はい。えっと写真があるんだけど……」
僕はスマホの中にある友奈の写真を見せると、僕以外の全員が驚いていた。
「そっくりだな……」
「そっくりというかうり二つじゃないか?」
「髪飾りないと見分けがつきませんね」
「……」
写真を見せたことで大鎌をしまった少女。誤解は解けたのかな?
「にしてもこうまでそっくりな奴っているのか?」
「よく言うじゃないですか、自分と似た人が世界には何人もいると」
「まぁ、正直こういう確率って結構低かったりするのよね。というかこの写真の子もユウナって言うのかしら?」
「うん、そうだけど……」
それを告げた瞬間、若葉さんとひなたさんが何かに気がつき……
「まだ伝わっているんだな」
「大赦が考えた風習ね………」
この人達、何か知ってるのかな?
「えっと、ごめんね。勘違いさせちゃって」
「あっ、いや、間違えたのは僕の方ですから……ごめんなさい」
申し訳なさそうにしているが、勝手に勘違いしたのは僕の方だ。
「私、高嶋友奈。えっと海くんでいいかな」
「うん、高嶋さん」
「それでこっちが郡千景ちゃんで、土居 球子ちゃん、伊予島 杏ちゃん」
高嶋さんは皆のことを紹介し始めていた。
「海くんは若葉ちゃんとひなたちゃんの事は知ってるんだよね」
「うん、若葉さんとは今朝あったし」
「そうだったな」
「私は海くんのご先祖様になるから………こっちだとおばあちゃんに!?」
確かにそんな感じになるけど、流石にお婆ちゃん呼びはやめよう。言い続けたら怒られそうだし……
「とりあえずまとまったみたいだな」
色々と話しがまとまったのをカズマさんが確認し、僕らと初代勇者様たちは別れようとした時、ふっと僕はクリスさんがいないことに気がついた。
「ダクネスさん。クリスさんは?」
「そういえばいつの間にかいないが……あいつは盗賊職だ。他のパーティーに呼ばれているんだろう」
「そう……ですか」
宿に戻ったら謝らないとな……
私はギルドから少し離れた場所に来ていた。あの時、あの少女の腕を掴んでいたウミさんを見た時、何故だか嫌な思いをした。
「一体どうしたんだろう?あたし……」
別にウミさんが他の女性と話していても、こんな思いはしないのに、どうしてだろうか?
あの人とウミさんが出会ってはいけない気がした。これから先仲良くなってしまってはいけない。
どうして女神である私がそんな事を思ってしまうのだろうか?
「わからない」
初代勇者たちの紹介的な話とエリス様の思いでした。
エリス様の想いがどうなるのかはお楽しみに……