この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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67 その後の紅魔の里

シルビアを撃退したことで、残っていた魔王軍兵士は紅魔の里から撤退し、シルビアが操っていたバーテックスは何処かへと消えていった。

 

あの戦いから一夜が明け、僕とカズマさんは里の様子を見ていた。里はゴーレムや召喚された六本腕の悪魔によって復興が進んでいたのだけど……

 

「ねぇ、カズマさん………」

 

「何だ?」

 

「僕は里がメチャクチャにされて、シルビアに対して怒ってたんだよね」

 

「あぁ、あの時お前が自分で言ってたよな。俺も施設に向かう前に紅魔族の女の子が儚げに『里が……燃える……』って言ってたの聞いたけど……」

 

僕とカズマさんはもう一度現在の里の様子を見た。ゴーレムや悪魔の力によって見る見るうちに復興作業が進んでいる

 

「「何?この復興スピードは!?」」

 

二人してツッコミを入れるほどの復興スピードだった。あの時の怒りが恥ずかしく思えるくらいだった。するとめぐみんが見慣れない紅魔族の少女と一緒にこっちにやってきた。

 

「おや、カズマ、ウミ。どうかしたんですか?」

 

「あ、いや、復興スピードに驚いていて……というかそっちは?」

 

カズマさんがめぐみんと同じ眼帯をつけた少女の方を見ると、少女はポーズを決めながら、

 

「我が名はあるえ。アークウィザードにして上級魔法を操る者にして、やがて作家となる者!」

 

いい加減紅魔族の自己紹介に慣れては来たけど、ちょっと引っかかることが有った。この子の名前、あるえって言ったか?僕らがここに来ることになった原因の張本人じゃないか?

 

「めぐみん、彼が前に手紙に書いてあっためぐみんのお兄さん的な人物かい?」

 

「はい、そういえばあるえ。前に送ってくれた小説なんですが、どうしてウミとゆんゆんが結婚して、生まれた子供が勇者になるという話を書いたんですか?」

 

「あぁ、ヒサメに何かいいネタがないか聞いた時に、彼女がネタを提供してくれたんだよ。おかげで中々良いものが書けた」

 

なるほど、本当の元凶は氷雨さんだったのか。僕は直ぐ様氷雨さんにお説教しに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷雨さんの家にたどり着き、家のドア蹴り破った。

 

「おや、未来の勇者は行儀が悪いな」

 

「あんたな……あんたが変なネタを提供しなければ、修羅場にならずにすんだんだぞ!?」

 

「変なネタ?あぁ、あれだね。私としてはいいネタを提供できたと思ったけど……」

 

「あのな……」

 

氷雨さんは扇子を取り出し、かるく仰いでいた。この人に対して怒ってもしょうが無いと思い始めた。

 

「所でウミくん。君はデストロイヤーや紅魔族の謎についてはカズマくんに聞いたの?」

 

「一応は………紅魔族がバーテックスを倒せる理由は分かったけど、作らした人間が悪かったような……」

 

もしかするとデストロイヤーは暴走せず、対バーテックスにおいて重要な兵器になったはずなのに……

 

「少し前にあの女神と同じ力を感じる少女が話していたけど、君と彼女はある場所でこの日記の文字を見た覚えがあるんでしょ」

 

氷雨さんから例の日記を受取り、少し読んでみることにした。確かに文字に見覚えが有った。あれは僕とクリスさんが二人で一緒に行ったダンジョンで見つけたあの文字……

 

「その場所は、帰ったらもう一度調べるべきだね。もしかしたら何かしら面白いものが見つかるかもしれないよ」

 

氷雨さんは笑顔でそう告げるけど、あの壁画に書かれていた文章は恐怖から逃れたかったからのものじゃないのだろうか?

だからこそバーテックスに対抗できるものを作ろうとしたのか………

 

「あぁ、それとちょっと気になることが一つだけ」

 

「なんですか?」

 

「このページを読んでみてくれない?」

 

「えっと『これはどういう事だ?紅魔族、大型機動兵器と頂点に対抗できる存在を作り上げたと言うのに、何故こんな物が有るんだ?コレから感じる力はまるで私達の世界を守ってきたあの存在と同じだ。まさかこれから先何かがあるのか?だとしたらコレが完全に成長する頃に………奴らが来るということか』これって?」

 

「彼は私達と同じ世界から来た転生者。だとしたら彼が発見したものは神樹と似たような存在だとしたら?」

 

「………ちょっと待ってくれないか?この世界は二人の女神に守られて、今は造反神が………」

 

「どうして造反神はこの世界の結界の穴を塞いでるの?奴らと協力すればいいものを………これは彼女たちにも伝えてあるわ。そして巫女達には造反神の目的、この世界にある神樹と同じ存在……それを調べるようにってね」

 

造反神の目的、未だにわからないことだらけだな。それに神樹と同じ存在って一体何処にあるのやら?ダクネスさんあたりに聞いてみるのもいいかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷雨さんの家を後にするとどこからか大きな音が響いた。もしかしてめぐみんが日課の爆裂魔法を放ちに行ったのかな?

だとしたらこれまで以上にいい爆裂なのかもしれないな。そんな事を思っているとゆんゆんを見つけた。

 

「ゆんゆん、大丈夫そうだな」

 

「は、はい、アクアさんに治してもらって怪我も完治したんですけど……」

 

何故か顔を真赤にさせているゆんゆん、一体何があったんだ?

 

「何かあったのか?」

 

「あ、あの、実はシルビアとの戦いを見ていた人たちが、私のことを『光焔を操りし者』って呼んだりしてきて……」

 

あぁ、なるほど、二つ名で呼ばれて恥ずかしがってるのか。ゆんゆんは紅魔族の中ではかなり変わりもので、ポーズとか二つ名とか恥ずかしいんだろうな

 

「まぁ、なれるしかないだろ」

 

「あの、ウミさんも二つ名が付けられていますよ」

 

「はい?」

 

僕に二つ名が付けられたって一体どういうこと?すると先輩と友奈の二人が僕らの所にやってきては、

 

「あら、『光の刃を操りし者』じゃない。何してるのこんな所で?」

 

「『光の刃を操りし者』くん、どうしたの?」

 

「ちょっと待て!?その『光の刃を操りし者』って僕の二つ名か!?ここの住人は何ていうものを………」

 

「まぁいいじゃない。格好良いわよ」

 

「うん、凄く格好良いよ」

 

褒めてくれるのはいいけど、呼ばれるのだけは勘弁してほしいな………

 

「何だ?なんかあったのか?」

 

するとめぐみんを背負ったカズマさんと合流した。やっぱりさっきの爆裂魔法はめぐみんのだったか。めぐみんはというと何処か満足げだった。

 

「ウミ、聞いてもいいですか?」

 

「何だ?」

 

「私の爆裂魔法って、ウミのお役に立っていますか?」

 

「当たり前だろ。というか僕の場合は最初に会ったときからめぐみんの爆裂魔法を頼りにしてるんだから………」

 

僕がそう告げるとめぐみんは嬉しそうに笑顔で頷くのであった。

 

「そういえばクリスとワカバ達、先に帰ったみたいだな。俺たちも帰るとするか」

 

クリスさん達、一緒に帰ればいいのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひなたSIDE

 

ウィズさんのお店で、私と若葉ちゃんはバニルにあることを聞いていた。

 

「ほう、我輩が小柄な盗賊と勇者に話した選択の件が気になるか」

 

「えぇ、海くんは多少は無茶はするけど、流石にあの二人を悲しませるようなことはしないはずです。だとしたら貴方はどうして嘘の未来を話したんですか?」

 

「ふん、どうやら鋭い巫女だな。だが……」

 

「教える気はないですね。貴方のやり方は分かっています」

 

「これは残念。巫女の悪感情は上質なものだったのだが、まぁ良い。ならば我輩があの小僧から見た未来も知る気はないのだな」

 

「海くんの未来……?」

 

もしかしてこれから先何かが起きるというの?でも、予知でも見えないのは一体……

 

「一体これから先何が……」

 

バニルにそう聞くと、バニルは笑みを浮かべて……

 

「悪いが巫女とその勇者には教える気はない!!」

 

そうだった。この人の事は分かっていたのに……私も海くんと若葉ちゃんのことになると駄目だな………

 

「おい、仮面の悪魔。話す気はないのか?」

 

若葉ちゃんは生太刀をバニルに向けるが、バニルはまだ笑みを浮かべていた。

 

「ここで争ってもいいが、損害の大きさを考えると止めるべきだな。ならば一つだけいいことを教えよう。いずれ、あの女神と集合体の加護を受けた小僧は、世界を滅ぼすであろう。世界を守る勇者であるのにもかかわらずにな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何気に最終章に向けてのものを書きましたが、一応原作の話はウォルバク編までやった後に最終章に入る予定です

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