ゆんゆんのピンチに何とか間に合った僕。僕は白月を構えた。
「ダクネスさん、ゆんゆんを」
「分かった」
「カズマさん、ソレって魔術師殺しを破壊できる兵器だよね」
「あ、あぁ、だけどコレを使うには……」
「準備が必要なんだね。だったら、それまでの間このクソ野郎は僕が相手する」
目の前のシルビアを睨みながら、そう告げるとシルビアは怒りの氷女を浮かべていた。
「人のことをクソ野郎だなんて、バカにするのも大概にしておきなさい!!」
巨大な尻尾が頭上から迫ってきた。僕は直ぐ様後ろへ避け、シルビアに向かって斬りかかろうとするが、シルビアの前にバーテックスが現れ、斬撃を代わりに受けていた。
「あはは、あんたは魔術師殺しの天敵みたいだけど、そう簡単に破壊させるものですか!!こっちには盾代わりになる生物兵器がまだまだいるのよ!!」
魔術師殺しを尻尾のようにうまく使いこなし、僕に迫りきていた。僕は白月で受け続けるが、一撃一撃が重すぎる
「さっきの威勢はどうしたの?防いでいちゃ私に勝てないわよ!!」
「ちっ!!」
もう一度斬りかかるが、またバーテックスが盾になり、シルビアに届かなかった。こいつとバーテックスの連携すごすぎだろ
カズマSIDE
ウミが戦っている間にこの兵器に魔法を溜め込まないといけないのに、さっきからアクアが魔法を溜め込んでいる割には全く使える気配がない
「コレ壊れてるんじゃない?長い間ぞんざいに扱われてたし………」
「そうは言うけどな……」
ウミの奴はバーテックスに邪魔をされて、シルビアに攻撃を当てられないでいるしどうすれば……
「カズマさん、お待たせしました」
「海の奴、一人で戦ってるのか?」
ユウキとギンの二人が粗方敵を倒してきたのかこっちに合流してきた。それだったら……
「おい、二人共、シルビアの周りにいるバーテックスをなんとかしてくれ!!じゃないとシルビアに攻撃が通らない」
「分かりました」
「行きますよ。友……」
二人がウミの所へと行こうとした瞬間、ウミの所に誰かが現れ、シルビアの周りにいるバーテックスを切り倒した。
ウミSIDE
何体ものバーテックスを切り倒したのは夏凛だった。
「邪魔するわよ。海」
「夏凛……」
「安心しなさい。そこのオカマはあんたに譲るわ。だけど周りにいるバーテックスは私が相手するわ」
「頼む」
「…………あんたが素直にそう言うなんて珍しいわね」
「お前にだけには言われたくないよ。勇者部に入った直後は素直になれなかったくせに………」
「うるさい!!あんたこそ、一人で戦おうとしてるじゃない!素直に私たちに頼みなさいよ!」
「いや、コレには理由があるんだよ」
僕はある人物の方を見た。その人物は僕が見ていることに気がついたのか頷いていた。
「前に見せ場を譲ってもらったからな。今回は譲ってやらないと……」
「損な役回りね」
「つべこべ話してんじゃないよ!!」
シルビアが魔術師殺しを叩きつけてきたが、僕と夏凛でそれを受け止めた。
「それでどうする?バーテックスは数が多いから、私や友奈たちで削っていくしかないけど……」
「そういえばずっと気になっていたけど、僕と銀以外の勇者……勇者部のみんなは満開を使わないのか?性能的には僕らと同じだって聞いたけど……」
「満開の後遺症が危険だってわかったからね。大赦は満開を使えないようにしたのよ」
「なるほど………なっ!!」
僕と夏凛が同時に受け止めていた魔術師殺しを蹴り飛ばした。さてどうしたものか……数が多い以上満開で一気に殲滅することが出来るけど、できなかった場合を考えると迂闊に使えない。だとしたら切り札しかない。だけど切り札はさっきゆんゆんを助けるために使って、体力的にも長時間は使えないけど………
「やってみるか………アレを」
僕は白月を構えながら、目を閉じた。
「何をするつもりか知らないけど、戦っている最中に目を閉じるのは命取りよ!!」
集中しようとするが、シルビアが攻撃を仕掛けてきた。だけど、僕の前に若葉さんと先輩の二人が現れて攻撃を防いでくれた。
「海の邪魔はさせない」
「海、こいつは抑えてあげるから、あんたは集中しなさい!!」
「ちっ、生物兵器共!!坊やを……」
シルビアの指示に従い、バーテックスが迫ってくるが、今度は友奈、銀、歌野さんが助けに入ってくれた。
「海くん、ここは私達に任せて!!」
「あぁ!!」
僕は目を閉じ、勇者の力を白月に集中させた。どうして白月が僕にしか使えないのか?どうしてダクネスさんの実家にあったのか?どうして西暦組の切り札を使えるようになったのかわからなかったけど、きっと僕らが来るずっと前に転生した人間が残してくれたものなのだろう。だとしたらきっと考えてくれているはずだ。使用者自身の切り札を………
めぐみんSIDE
「ゆんゆん!?大丈夫ですか!?」
私はぶっころりーとそけっとの二人に介抱してもらっているゆんゆんに駆け寄った。ゆんゆんは体中傷だらけだった。
「め………ぐみん………」
弱々しい声で私の名前を呼ぶゆんゆん。こんな風になるまで頑張ったんですね。ゆんゆんは………
「ごめんね………格好良い所…………見せようとしたんだけど………」
「ゆんゆん………」
私はウミの方を見ると、ウミはじっと私のことを見つめていた。最初は何なのかわからなかったけど、ウミが言いたいことは分かった。
「全く、普段は恥ずかしがって名乗りも出来ないくせに、格好いいところを見せようとしているからそんなぼろぼろになるんですよ」
私は杖を構えながら、更に言葉を続けた。
「ですからウミ曰く大親友の私がお手本を見せてあげます!!」
ウミはきっと私に見せ場を譲ろうとしている。それだったら期待に答えないといけないですね
海SIDE
見えた!!僕自身の切り札が………折角だここは紅魔族風に……
「白に輝きし月よ。闇を静かに照らせ!!」
白月が眩い光を出し、僕を包み込んだ。
「切り札発動!!白月!!」
僕は白い神秘的な衣装に変わり、白月の刃は白く輝く巨大な刃へと変わった。これが僕の切り札……
「姿が変わろうと………かんけ………」
シルビアが何かを言いかけた瞬間、僕はシルビアの右腕を切り落とした。
「ぎゃああああああああああああああ!!」
「白月の能力は他の勇者たちの切り札を使えるだけじゃないみたいだな。刃を自由に伸ばすことも出来る」
「うぐ………あんた……甘いんじゃないの?」
シルビアは右腕を抑えながら、苦しそうにそんなことを言っていたけど、
「甘いって何がだ?」
「さっきの刃で私の首か魔術師殺しを破壊すればよかったのに、わざわざ腕を切り落とした。それが甘いんだって言うのよ」
確かにシルビアの言うとおり、今ので倒せたかも知れなかったな。
「あんたがあのお嬢ちゃんの所に駆け寄った時、私を倒すって言ったわよね。それもかなり怒っていた状態でね。あの怒りはどこからきたものかしら?そして今、その怒りは何処に行ったのかしら?」
「確かに怒っていたさ。あんたが紅魔の里を破壊して、笑っているのを見て、殺したくなった」
若葉さんたちの時代はバーテックスの襲来で、人間はもちろん四国以外は全て壊滅状態だった。その話を聞いた上でシルビアの行いは許せなかった。人々を苦しめる存在が笑っているという状況が本気でムカついた。
「あぁ、さっきの発言撤回してもいいか?」
「撤回?何がよ」
「お前みたいなクソ野郎を倒すものだって発言だよ」
僕はゆっくりとこっちに歩いてくる人物に目をやった。その人物は杖を掲げて有る準備に入っていた。
「ウミ、譲ってくれますか?」
「あぁ」
「感謝します」
「何?とどめを刺すのはその紅魔族の小娘だというの?あんたらみたいな口から出まかせしか言わないような種族が、この魔術師殺しと合体した私に勝てると思っているの?」
「それはどうでしょう?私の必殺魔法にあなたの魔術師殺しは耐え切れますか?」
「必殺魔法………ね。どんなものか見せてご覧なさい」
シルビアは知らないみたいだな。めぐみんのいう必殺魔法は、完全体のバーテックスのコアを一撃で破壊し、バーテックスの攻撃を相殺させることが出来るということを……
「では、喰らって下さい。感想はあなたが生きていたらでいいですよ」
周辺が地鳴りを上げていた。流石のシルビアもめぐみんの言う必殺魔法がどんなものか理解した
「な、なにこれ?まさか………アンタが言う必殺魔法って……」
「太陽すら消し去る必殺魔法!!エクスプロージョン!!」
眩い閃光がシルビアに向かって放たれ……………なかった。何故かめぐみんが出した爆裂魔法はカズマさんたちが持ってきた兵器の中に吸い込まれたのだった。
「…………」
「ぶはっ、あはははははははは、今のは完全に危なかったわ!!だけどやっぱりあんたら紅魔族はネタ種族みたいね!!」
笑い声が響く中、僕はカズマさんが持っている兵器の方を見た。何だか側面が小さく点滅していた。そのことにもカズマさんもアクアさんも気がついていた。
「シルビア。やっぱりあんたは終わりだよ」
「はぁ?何が…………」
シルビアが何かを言いかけた瞬間、眩い閃光がシルビアの胸に大穴を空け、更にはその後ろにいたバーテックスの群れを何十体もの消し去った。
きっとカズマさんが油断している隙を突いて、兵器を使ったんだと思い、カズマさんの方を見ると………
「我が名はこめっこ! 家の留守を預かる者にして紅魔族随一の魔性の妹……!」
こめっこちゃんがポーズを決めていた。めぐみん、あなたの妹は美味しいところを持っていきましたよ