アナウンスを聞き、飛び起きた僕はゆいゆいさんに開けてもらうように頼みこもうとしていると、
「目を覚ますの早いですね。まるで最初から起きていた感じです」
「う、海くん。もしかして起きてた?」
「何のことだ?僕は寝起きはいいほうだから……」
実は起きていて、二人の話を聞いていたなんて口が裂けても言えない。とりあえず急いで外に出たほうがこれ以上追求はされないはずだ。
「あら、ユウキさんもいらっしゃったんですね。ウミさんは3……」
「お願いしますから変なこと言わないで下さい。こめっこちゃんの教育に悪いですよ」
変な誤解をされる前に、この場から全力で逃げ出し、外へと出るとすでにカズマさん、アクアさん、ダクネスさん、銀、クリスさん、先輩、夏凛が傷だらけのシルビアと対峙していた。
カズマさんと戦っていたわけではなく、どうやらここにくる前に紅魔族のみんなにボコボコにされたみたいだな
「ちっ、あなたまで来るなんてね。さすがは魔剣使いのミツルギの仲間というべきかしら?部下の陽動には引っかからず、アタシの目的に気付いて探しに来たって事かしら?」
「そうだ、お前らの目的もここで終わらす」
「何だか海、気合が入ってるな」
「まぁ、ここでこいつを倒せば魔王軍も引くからじゃないかしら?」
「そうね。私達も海に続くわよ」
銀、夏凛、先輩が武器を構える中、アクアさんとダクネスさんは何か不審に思っていた。
「何故だろう?今のウミからはこうなんというか……カズマ見たいと言うべきか」
「そうね。何かしら仕出かしたんだけど、それを他の人にバレたくないから、全力で誤魔化そうとしているカズマみたいね」
うっ、戦いに持ち込んで狸寝入りしたことをなかったコトにしてしまおうと思ったのに、二人には違和感を感じさせてしまったみたいだ。だけど、まだバレてない
「というか今は戦いに集中しろ!?」
カズマさんがシルビアに斬りかかるが、シルビアはちゅんちゅん丸の刃を素手でつかむが、シルビアはちゅんちゅん丸を見て不思議そうな顔をしていた。
「……これが魔剣?ていうか剣の腕もお粗末だし。ねぇ、あなた本当にあのミツルギなの?こんな物が魔剣グラムっていうの?」
「ちゅんちゅん丸です」
「……は?」
めぐみんはちゅんちゅん丸はごく普通の名刀で、グラムの方を馬の骨とか言い出していた。いや、カズマさんに悪いけど、ちゅんちゅん丸より魔剣グラムのほうが凄いと思うんだけど……
「…フフッ。アハハハハハハ!あなた、魔剣使いのミツルギじゃあないわね!?本当の名前と偽名を使った理由を教えてくれるかしら」
「………佐藤和真だよ。偽名を使ったのはお前らに名前を知られたら指名手配にされると思ったからだよ」
「アハッ!アハハハハハハ!!あなた最高ね、とっても素敵な考え方よ!気に入ったわ!」
シルビアはカズマさんの顔を自分の胸に埋めるようにしていた。何だろう?カズマさん、幸せそうだな………正直うらやま………
「海、何だか羨ましそうな顔をしてるけど……」
「な、何を言ってるんですか?全く先輩は……」
「海、あんた最低ね」
「海くん………東郷さんみたいになれるように頑張るから」
「ごめん、何の話かよく分からないんだけど……」
「ふふ、坊や。あなたもこっちに来なさい」
シルビアはカズマさんをバインドのスキルを使って、縛り上げた。というかカズマさん、息できてるのかな?
「来るわけ無いだろ!!」
東郷の銃を放ち、シルビアの頬をかすめた。その瞬間、アクアさんが浄化の魔法をカズマさんごとシルビアにかけた。そのおかげでバインドが緩み、カズマさんが解放された。
シルビアのドレスはボロボロになり、半裸になっていた。浄化の魔法が通じているというと悪魔とかの系統なのか?
「や、やってくれたわね……!下級悪魔の皮でこしらえたドレスが台無しじゃないの…!でも残念ね。あたしは純粋な悪魔じゃないわ。結構痛かったけれど致命傷には程遠いわよ。でも、次に攻撃を仕掛けたならこの子の命はないものと思いなさいな!」
シルビアは脅しをかけてきた。こういう時に非常になれたらいいのに……
「おい、ウミ!?何を考えてるんだ?」
「いや、こういう時人質なんて関係ないなんて思えたら楽なんだけど、僕には無理そうだな」
「おまっ、俺ごと撃つなよ!?」
「あら、優しい坊やね」
シルビアはカズマの後頭部と胸を密着させるように密着した。どうやらカズマさんが息苦しそうにしていたのに気がついての配慮なんだろうか?
「我が名はシルビア!強化モンスター開発局局長にして、自らの体に合成と改造を繰り返してきた者!そう、あたしはグロウキメラのシルビアよ!この男は貰っていくわ!さあ、可愛いボウヤ、もう一度一つになりましょう?『バインド』!」
再度バインドをかけたシルビア。だけど僕とダクネスさんはカズマさんの行動に不信感を抱いた。
「なぁ、カズマ、今、わざと捕まらなかったか?」
「違うよ」
「いや、自分から掛かりにいったよね」
「違うよ」
明らかにあっちの方がいいと思って、わざと拘束されたみたいだ。でも、これも何かしらの作戦かもしれない。
「今助ける!」
「お構いなく………」
駄目だ。本当にあの胸に魅了されたみたいだ。ダクネスさんはそんなカズマさんに対して怒っているが、カズマさんはというと
「ダクネス。お前、最近オレの扱いぞんざいだよな。というか最近色々とアレだ。レベルはパーティーの中で一番低いし、アクア達にはバカにされるし、唯一の癒やしであるユウナはウミの彼女だし、ウミはウミで彼女が出来て、あの店誘っても来てくれないし……」
何だか愚痴りだしたよ。いやでも、サキュバスのお店に行くのを断ったのは悪いと思っている
「だけど今、この状況、美人なお姉さんにこんなことしてもらっているんだ。お前らは絶対こんなことさせてくれないよな」
「ウミ、あの男撃って下さい」
めぐみんが目を真っ赤に光らせながらそんなことを言っていた。いや、撃ったらまずいだろ
「いいわぁ、貴方本当にいいわぁ。でも駄目よ。仲間の女の子をいじめちゃ、女心をわかって上げなさい」
「魔族のくせに随分と人間の女心がわかるものだな。女としての長い年月のたわものか?」
ダクネスさんが剣を構えながらそう言うと、シルビアはカズマさんの頭をなでながら、
「あら、そんなこともちろんわかるわよ。女心も男心も」
僕らは身構える中、シルビアは衝撃の一言を告げた。
「だってあたし、半分男ですもの」
それを聞いた瞬間、その場にいた全員が凍りついた。そしてさっきまで嬉しそうにしていたカズマさんも固まっていた。
「えっと、なんて……?」
「あら、聞こえなかった?あたしキメラだから。あなたの大好きなこの胸は後から合成してつけたのよ?」
「か、カズマ、気をしっかり………」
「だ、大丈夫。だれも言いふらさないから、男の胸に嬉しそうに顔を埋めいていたって」
クリスさん、その言い方やめてあげて……可哀想だよ
「それにしてもあなたいい男ね。こうして撫でてるだけで胸も下半身もキュンキュンしちゃうわ」
「シルビアさんシルビアさん。気のせいか俺のケツに何か当たってるんですが」
シルビアは恥ずかしそうにしながらある言葉を発した。
「あててんのよ」
それを聞いた瞬間、カズマさんは気を失った。僕はすかさず東郷の銃でシルビアの股間に狙いを済ませて、銃を放つが、シルビアの前に突然としてバーテックスが現れ、シルビアを守った。
「隙をついたみたいだけど、悪いわね…………って今、何処を狙ったの?」
「いや、急所がわかったから……」
「容赦のない子ね。悪いけど逃げさしてもらうわよ」
シルビアはカズマさんを連れて逃げ出すのであった。