この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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62 三人で川の字に

「狭くありませんか?」

 

「私は大丈夫だよ」

 

「なぁ、僕だけ離れていいか?流石に色々と恥ずかしんだけど……」

 

布団は二組、僕と友奈の間にめぐみんが眠っているという状況。どうしてこうなったのかというと遡ること一時間前のこと

 

 

 

 

 

 

 

 

シルビアを退け、みんなで夕食を食べ終えた頃、ゆいゆいさんからある話を切り出された。

 

「今晩はどちらと寝るのですか?めぐみん」

 

「どちらって……昨日みたいな事をするつもりですか!?年頃の娘を何だと……」

 

「大丈夫よ。二人共そこら辺分かっているみたいよ」

 

一体何の話をしているのだろうか?もしかして今朝めぐみんが話していたあの事か?僕はそっとカズマさんに聞いてみた。

 

「昨日はどんな感じだったの?」

 

「反対するめぐみん、めぐみんの親父さんとダクネスを魔法で眠らせて、俺とめぐみんは一緒に部屋に寝ることになったな。部屋に入った瞬間にドアに鍵をかけられて……」

 

「状況が状況だったから手を出しても問題がないって感じに考えが至ったってめぐみんが言っていたけど」

 

僕らの話にクリスさんも混じってきた。というかカズマさん、手を出したら問題も何もないんじゃないのかな?

僕としては面倒事に巻き込まれたくないし、ゆんゆんの家にでも厄介になったほうがいいと思い、そっと出ていこうとすると………

 

「分かりました。今晩はウミと一緒に寝ます」

 

めぐみんの突然の発言を聞き、逃げ出すのが遅れてしまった。というかめぐみん、お前状況わかってるのか?

 

「まぁ、カズマに比べたらまだウミは安全かもね」

 

「きっとユウナも話せば分かってくれるはずだ。ウミ、今日ばかりはめぐみんの事を思ってだな」

 

「大丈夫。私と同じ宿の部屋に泊まっていたときみたいにすれば大丈夫だから」

 

「なんだろう……俺って全く信頼されてないんだな」

 

アクアさんたちの言葉を聞き、少し落ち込むカズマさんだけど、僕としては問題点は友奈が許してくれるかどうかじゃない。

友奈もきっと分かってくれるはずだけど、ただ一番の問題は……

 

「やるわね。めぐみん。まさか寝取るなんて……」

 

「東郷に知られたらどうなるか……」

 

「須美……東郷さん、怒ったら怖いからな……最悪海、死ぬかもな」

 

うん、先輩、夏凛、銀はとても分かってる。もしも友奈以外の女の子と一緒に寝たということがバレた時に一番怖いのは東郷だ。正座されてお説教か下手をすれば蜂の巣………

 

どうにかして回避しないと思い、適当な理由を考えているとめぐみんに腕を捕まれた

 

「ほら、早く行きますよ」

 

「ちょっと待った。頼むから僕に考える時間を………」

 

説得をするが聞き入れてもらえず、僕は引きづられながらめぐみんの部屋に連れてかれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めぐみんの部屋の前まで着くとめぐみんは掴んでいた手を離してくれた。

 

「なぁ、めぐみん、流石に彼女がいる身としては色々とまずいから……」

 

「何を怖がっているんですか?ユウナなら大丈夫ですよ」

 

「友奈に怒られることを心配しているんじゃない。バレたら蜂の巣にされそうな人が若干一名いるんだよ!?僕としては逃げ出したいんだ」

 

「安心して下さい。手は打ってありますから」

 

めぐみんがそう言いながら、ドアを開けると何故かすでに友奈が布団を敷いて待っていた。

 

「待たせてすみません」

 

「ううん、大丈夫だよ。でも海くん、なんで驚いた顔をしてるの?」

 

「いや、何で友奈がめぐみんの部屋にいるんだよ?」

 

そういえば夕食が終わった頃から姿が見えなかったけど、まさかこれは……

 

「さっきの話ですが、バレた時に被害に遭いそうなのは私も同じです。それに二人の邪魔をする気はありません。そう思い、今晩は三人で寝ましょう」

 

いや、三人で寝るというよりかは僕を何処かに避難させてくれたほうが一番なんだが……

 

「悪いけどここは逃げる方を……」

 

『ロック』

 

ドアの向こうからゆいゆいさんの声が聞こえ、僕はドアを開けようとするが開く気配がなかった。まさか逃げ出さないようにか

 

「諦めたほうがいいですよ」

 

「そうみたいだな」

 

「それで布団二枚しか持ってこなかったけど、どんな風に寝るの?」

 

「私が二人の間に入って寝ます。それで解決です」

 

いや、何の解決になってないからなそれ。正直どうにかしたい気持ちでいっぱいだけど、逃げ出すことも出来ないし、ここは諦めて寝た方が良いな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間経っても眠気がない。めぐみんも友奈も眠れないのか二人でずっと話していた。正直眠ってしまえば緊張とか何もなくなるはずなのに、もういい、目を瞑っていればその内眠れるだろう

 

「海くん?」

 

「ウミ?寝てしまったみたいですね。いい機会だったので聞きたいことがあったのですが……」

 

「聞きたいこと?」

 

「ユウナはウミのこといつから気になっていたんですか?」

 

うぉーーい!?いきなり何を聞いてるんだよ!?どうする聞いたほうがいいのか?聞かないほうがいいのか?どうすればいいんだ?

 

「え、えっと、なんでそんな事を?」

 

「まぁ、ちょっとした興味です。ウミに聞いても恥ずかしがって話してくれませんし」

 

「え、えっとね。最初は海くんって、結構無茶をする人だったの」

 

「今も結構無茶してませんか?」

 

「カズマさんたちから聞いてるけど、それ以上だったかな?勇者部……ちょっとした活動の時に海くん、猫を助けるために危険な目に遭ってね。怪我とかなくって良かったけど、私、一瞬海くんが死んじゃうんじゃないかって心配してね。泣きながら怒って……その時に言ったの『お願いだから海くん、忘れないで、海くんの事を心配してくれる人がいるってこと……その一人が私だって言うことを………』って………」

 

「本当に無茶ばかりしますね」

 

「それがあってからはちょっと海くんの事が心配で、いつも見てるようにしてたんだよ。多分その時かな?」

 

「心配していた気持ちから段々とウミの事が気になり始めたということですか」

 

「そ、そうかな?」

 

正直あの日のことは忘れていない。だって、僕のことを大赦の偉い人の息子だからという目ではなく、一人の友だちとして見てくれた彼女のことを意識し始めたのだから……まぁ、他の皆もそんな風に思ってくれているのは知っていたけど、何だか友奈だけはちがったのかな?

 

「ただね。今こうして一緒に入られるけど、また離れ離れになったら海くん、大丈夫かな?」

 

「………大丈夫ですよ。その時は私が、いいえ、私たちがウミの事を支えてあげます。だからもし帰る時は心配せず私達のことを信じて……」

 

「そうだね。めぐみんちゃん達なら海くんの事支えてくれそうだもんね」

 

「任せて下さい」

 

「うん」

 

何だろう?僕ってそんなに皆に心配かけてるんだ。というか頭で解ってるけど、友奈が帰った時、僕は大丈夫だろうか心配だな………

 

そんなことを考えながら、ようやく眠気が出てきた。これなら眠れると思ったその瞬間、

 

『魔王軍襲来! 魔王軍襲来!! 既に魔王軍の一部が、里の内部に侵入した模様!』

 

 

 

 

 


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