この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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60 紅魔の里での模擬戦

氷雨さんから色んな事を聞いた次の日の早朝、僕は外に出ていつもの日課である訓練をしようとすると、めぐみんとゆんゆんの二人を見つけた。

 

「二人共朝が早いな」

 

「ウミ、昨日はユウナとクリスの三人で何処に?」

 

「ちょっと氷雨さんの所で色んな話を聞いてたんだ。悪かったな。折角準備とかしてもらっていたのに」

 

「いえ、正直ウミが巻き込まれないで良かったです」

 

「めぐみん、昨日の夜急に訪ねてきたんですよ」

 

「何があったんだよ?」

 

めぐみんの話を聞くとどうやらゆいゆいさんの策略でカズマさんと一緒に寝ることになったそうだ。カズマさんはカズマさんでその策略に乗ってしまったみたいで……

 

「まぁ、カズマさんも男だから……」

 

「ウミはどうなんですか?ヒサメの家は狭いですから部屋を分けてもらうことも出来ませんし」

 

確かに昨日は若葉さん、ひなたお姉ちゃん、氷雨さん、友奈、クリスさんと同じ部屋で寝ていたけど、

 

「特に皆気にしてなかったし、僕自身も手を出す勇気はないというか………」

 

「ウミらしいですね」

 

そんなことを話しながら、僕らは里の外に出て鍛錬を始めた。めぐみんは僕らの鍛錬を見学していた。

 

「それじゃ模擬戦始めるか」

 

「はい!」

 

僕は白月を構え、ゆんゆんはワンドを構え、めぐみんに開始の合図をしてもらった。

 

「ファイヤーボール!」

 

迫りくる火球を僕は避けると同時に短剣を持ったゆんゆんが接近し、短剣を振りかざした。

僕は友奈の鉄甲で短剣の斬撃を受け止めた。最初の頃は次の攻撃は魔法だったのに、成長したものだな。おかげで今のところの戦績は56勝35敗8分けだ。全部勝つっていうのは難しいものだな

僕はゆんゆんを蹴り飛ばし、距離を置いて短銃を使おうとした瞬間、急に足が地面に沈んでいった。

 

「ボトムレス・スワンプです。さっき接近した時に詠唱をしておきました」

 

動きを止められたか。ちょっと驚いてしまったからかゆんゆんは次の準備に入っている。大技でくるというなら……

 

「借りるぞ!樹」

 

僕は樹の武器を装備するが、ゆんゆんは拘束に注意をして一旦魔法詠唱を止めて距離を置こうとしているけど、僕の狙いは拘束じゃない。

ワイヤーで近くの枝を縛り、ボトムレス・スワンプから脱出をし、短銃でゆんゆんの足元を撃った。

 

「きゃ!?」

 

銃弾を撃たれて一瞬動きを止めたゆんゆん。僕は一気に接近し、ゆんゆんの首筋に白月の刃を当てた。

 

「…………引き分けみたいだね」

 

「はい」

 

「えっ、どういう事ですか?」

 

何が何だか分からないでいるめぐみん。僕はゆんゆんの右手を見るとライトオブセイバーが発動していた。

 

「距離をおいたのは拘束されないためじゃなくって、魔法の詠唱を終わらせるためだったのか」

 

「はい、少しでも時間を稼いだほうが良いと思って……」

 

「………いつの間にかゆんゆんがずる賢い事を考えるようになりましたね」

 

「ずる賢いって!?ウタノさんたちから戦略を立てるのが上手くなったって言われてるのに……」

 

「まぁ、ずる賢いとは言わないけど、戦略を考えるのは良いことだ。カズマさんがこれまで考えてきたことも戦略みたいなものだしね」

 

ベルディアとの戦いの時に見せたクリエイトウォーターとフリーズの組み合わせとか、バニルさんとの戦いの時の潜伏の使い方とか、リザードランナーの時に立てた作戦とかもかなり素晴らしい戦略だ。

 

「確かにカズマが立てる作戦や思いつきは評価しますけど………」

 

「前にも話したけど、僕一人対カズマさん、アクアさん、ダクネスさん、めぐみんのパーティーで戦うとしても僕には勝ち目がないって覚えてるか」

 

「はい、ダクネスが盾になり、アクアが支援。私がとどめですよね」

 

「カズマさんはその隙に何かしらのスキルを使って、僕の妨害をしてくる。正直一番戦いたくない相手だって思ってる」

 

もしも戦うことになったら、勝てるかどうか………

 

「まぁまずはゆんゆんに完封だな」

 

「そうですね。ウミにはゆんゆんに勝ち越してほしいです。互角の戦いは見ていてハラハラしました」

 

僕とめぐみんの二人がそんなことを話していると、おずおずとゆんゆんがあることを告げた。

 

「あの………私、ウミさんとの実力が互角だって思ってないんですけど……」

 

「なんですか?余裕だと思っているんですか?」

 

めぐみんがゆんゆんのことを睨みつけていた。僕としてはなんでそんなことを言うのか気になるけど……

 

「余裕だって思ってないよ。ただ模擬戦でウミさんは満開とか切り札とか全く使わないから………」

 

「それは模擬戦で本気になるわけには……」

 

「私としては切り札や満開を使ったウミさんに勝たないと互角だって言われても素直に喜べないの」

 

切り札と満開を模擬戦でか………満開は使ったら後遺症があってしばらくは戦えなくなるし、切り札を使ったら使ったで大人げないというか………

でも、ゆんゆんは本気の僕と戦ってほしいって思っている。どうしたものか……

 

「そうだな。今の僕の勝利数を超えられたら考えておくよ」

 

「はい」

 

ゆんゆんは嬉しそうに返事をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんとめぐみんは家に戻るのだが、僕はまだ少し続けるために残っていた。昨日氷雨さんに言われた僕自身の切り札を発動させないと……

 

「僕自身の切り札……」

 

満開はあるのに切り札だけないというのはおかしいとは考えた事もなかった。いや、僕の切り札はこの白月の力で若葉さん達の切り札を使うものだと思っていたけど、何だか違うと思い始めている

 

「というか本当にあるのかどうかわからない。素直にエリスさんかアクアさんに聞いてみるか」

 

後はちょっと気になった満開と切り札の同時発動。発動できるかどうか分からないけど、出来たらどれほど凄いのか………

 

「勇者の力を使いこなせるようにしないとな」

 

僕はそう呟き、めぐみんの家に戻ろうとすると何だか騒ぎが起きていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 




短めですみません。

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