この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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57 たどり着いた目的地

僕とカズマさんがようやく落ち着き、合流したゆんゆんたちと一緒に紅魔の里へと向かうのであったが、

 

「海くん、結城ちゃんの手をずっと握ってるわね」

 

「海、もうオークはいないから大丈夫じゃないの?」

 

「いや、追いかけてきたら嫌だろ」

 

僕は辺りを警戒しながら、先へと進んできた。もうあんな目に遭いたくない。そんな中ゆんゆんがあることを言い出した。

 

「めぐみんは学校生活時代は、魔法学でも魔力量、常に一番で……みんなも天才天才と言っていたのに、こんな爆裂魔法しか撃てない欠陥魔法使いに成り下がったと知られると……」

 

欠陥魔法使いって、その呼ばれ方はどうなんだろうか?

 

「おい、欠陥魔法使い呼ばわりはよしてもらおうか。一応魔法の威力だけならば、間違いなく紅魔族随一なはず。噓偽りなんて言っていない。我が人生のほぼ全てを捧げている爆裂魔法の悪口はやめてもらおう」

 

二人の口喧嘩を聞いていると、僕は少し気になることがあり、めぐみんとゆんゆんの二人に聞いてみた。

 

「何で爆裂魔法が欠陥扱いなんだ?」

 

「あの、ですから……」

 

「さっきあげた欠点の威力と魔力関係は納得できるけど、それだけで欠陥扱いするのはどうなんだろう?バーテックスのコアを一撃で破壊も出来るし、あの戦いでも勇者が三人がかりで防いだ攻撃を爆裂魔法で相殺したし……結構使える魔法だと思うけど……」

 

「ほら、ゆんゆん。聞きましたか!ウミは私の爆裂魔法を欠陥扱いしてませんよ」

 

「でも、皆が……」

 

「まぁ、ゆんゆんが言うような事をみんなが思っているなら、めぐみんが頑張って認めさせれば良いことだしね」

 

僕がそう言い、めぐみんは嬉しそうにしていた。そんな光景を見てクリスさんは

 

「何だかウミさんとめぐみんって兄妹って感じがするね」

 

「確かに仲のいい兄妹に見えるわね」

 

クリスさんの言葉を聞いて、先輩も同じようなことを思っていたみたいだ。前にもゆんゆんが似たような事を言っていた気がするな。

 

「クリスやフウの言うように、確かに私に兄がいたら、ウミみたいな兄が良いですね」

 

「あら、と言うことはめぐみんちゃんは私の妹にもなるということね」

 

「いやいや、そうはならないからね」

 

「というかあんた達、喋ってるとモンスターが出てくるんじゃないの?」

 

「確かに地図を見る限り紅魔の里が近い。気を引き締め………」

 

「若葉ちゃん、そんな険しい顔してないで、このちょっとした旅路を楽しんでも良いんなじゃない?」

 

「だからといって……」

 

「ワカバの言うとおりだ。敵に見つかりでもしたら………」

 

「おい、こっちだ!やっぱりこっちから、人間の声が聞こえてきやがる!!」

 

そんな大きな声で喋ってないのに、敵に見つかってしまったみたいだ。

 

「どうする?ここは隠れてやり過ごすか?」

 

「隠れるのは良いことかもしれないな」

 

こっちにやってくるのがオークみたいなやつだったら、正直逃げ出したい。

 

「紅魔族を二匹見つけた!残りは冒険者風の人間だ!子供の紅魔族が二匹もいる! 今がチャンスだ、大手柄だっ!」

 

やってきたのは一匹の鎧を着たモンスター。耳が尖り、赤黒い肌をした筋骨隆々ではなくスリムな鬼。

アクアさんはそのモンスターを見て、嘲笑していた。

 

「ぷーくすくすー何よ下級悪魔もどきじゃない。下級悪魔の出来損ないみたいなやつが何頑張ってるの?」

 

「こいつ……なめ……ぶほっ!?」

 

僕は魔王軍の兵士が襲い掛かってくる前に、雪花さんの槍を投げ、兵士の頭を貫いた。

 

「悪いけど、八つ当たりさせてもらう」

 

僕は槍を引き抜くとゾロゾロと他の兵士たちがやってきた。だけど兵士たちが状況を確認し、襲いかかる瞬間、若葉さんと夏凛の二人が何体か切り裂いていた。

 

「敵が現れた以上、無駄な会話をしないほうが良い」

 

「まぁ、戦いにおいて当然よね」

 

何というか若葉さんと夏凛の二人、頼もしすぎだろ。前から思っていたけど二人って気が合いそうだしな………

 

「こいつら強えぞ!!」

 

「生物兵器連れてこい!!」

 

生物兵器ってバーテックスのことか。僕らは武器を構えようとした瞬間、兵士たちの後ろに突然、黒いローブを着た四人が現れた。

 

「肉片も残らずに消え去るがいい、我が心の深淵より生まれる、闇の炎によって!」

 

「もう駄目だ、我慢が出来ない!この俺の破壊衝動を鎮めるための贄となれえええーっ!」

 

「さあ、永久に眠るがいい……。我が氷の腕に抱かれて……!」

 

「お逝きなさい。あなた達の事は忘れはしないわ。そう、永遠に刻まれるの……この私の魂の記憶の中に……!」

 

なんだろう?呪文詠唱じゃない。言うなれば決め台詞に近い何かだ。

 

「ライト・オブ・セイバーッ!」

 

「ライト・オブ・セイバー!」

 

「セイバーッ!」

 

「セイバーッ!」

 

光り輝く手刀が兵士たちをずべて切り裂いていき、残っているのはそれはもう無残な兵士たちの残骸だった。

 

「魔王軍遊撃部隊と共にこんな場所に来てみれば……。めぐみんとゆんゆんじゃないか」

 

同じ紅い目、めぐみんとゆんゆんのことを知っているということは、この人達は紅魔族なのか

 

「靴屋のせがれのぶっころりーじゃないですか。里のピンチと聞いて、駆けつけて来たのですよ」

 

めぐみんの言葉に、ぶっころりーは首を傾げていた。なんだろう?何か違和感がある

するとぶっころりーは僕らの事を見て、ローブを翻し

 

「我が名はぶっころりー。紅魔族随一の靴屋のせがれ。アークウィザードにして、上級魔法を操る者……!」

 

自己紹介を始めていた。

 

「な、何?今のは?」

 

「何、格好良いじゃない!」

 

夏凛と先輩は紅魔族の自己紹介を始めてみたからか、戸惑っていた……いや、戸惑っているのは夏凛だけだ。

 

カズマさんはめぐみんやゆんゆんで慣れているおかげなのか、軽く合わせて挨拶を返していた。アクアさんはアクアさんで、女神だと名乗っても信じてもらえず、みんなにスルーをされており、ダクネスさんと若葉さんは恥ずかしがっており、友奈、銀、歌野さん、水都さん、ひなたお姉ちゃんは普通に挨拶を返し、全員が僕の事を見ていた。

 

「我が名は上里海!神の樹の力と女神の力を宿した勇者!」

 

「「「「おおおおおおおおおおーー!!」」」」

 

物凄く恥ずかしいけど、合格みたいだ。こういうのはノリが大切みたいだな

 

「めぐみん、いい仲間を持ったみたいだね。ここから里まではまだ距離がある。テレポートで送ってあげるよ」

 

ぶっころりーとその仲間たちは僕らをテレポートで、紅魔の里まで送り、気がつくと里の入り口まで来ていた。

 

「紅魔の里へようこそ、外の人達。めぐみんとゆんゆんもよく帰って来たね!!」

 

 

 

 

 


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