この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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53 二人っきりで

ハンス撃退から次の日、バーテックスはハンスを撃退したと同時に全部殲滅できた。残っていた数は多かったが、我慢できなかっためぐみんが爆裂魔法を放ち、全て殲滅することが出来た。

こうして無事アルカンレティアは救われた。…‥………はずだったのだが、

 

「ぐすっ……。私、頑張ったのに……! 今回は、本当に頑張ったのに……!!」

 

宿で泣きじゃくるアクアさん。何故かと言うと昨日ハンスを倒した時に使用したアクアさんのゴッドレクイエムで源泉の汚染を浄化したと同時にアルカンレティアの温泉は全てお湯に変わってしまったのだった。

ゼスタさんは今回の件についての処遇を考えるとの事で、僕らは宿でしばらく待機することになってしまった。

 

「お前は加減っていうのを知らないのか!!」

 

「だって!?だって、仕方ないじゃない!?私だって頑張ってこの街を救おうとしたのにぃぃぃぃーーーーー!?」

 

カズマさんとアクアさんの口論が始まり、須美がどうすればいいかオロオロしている中、友奈はあることを聞いてきた。

 

「そういえばダクネスさん、めぐみんちゃん、ウィズさんは?」

 

「三人ならお風呂入りに………」

 

突然扉が開かれるとタオル姿のめぐみんと半透明になったウィズさんを抱えたダクネスさんが大慌てで入ってきた。というかその姿であんまり戻ってきてほしくない。僕は目のやり場に困るので、視線をそらした。

 

「お前ら何っていう格好で戻ってきてるんだよ」

 

「三人共そういう性癖があったんだね」

 

「銀!?一体どういう所でそういう言葉を!?」

 

「こ、これは………」

 

「くっ、慌ていたとは言え、こんな羞恥プレイを………ではなく、ウィズが温泉に入った瞬間、こんな風に………」

 

温泉に入っただけでこんな目に合うなんて、一体どういうことだろう?昨日までは普通に温泉に入ってたけど…………

 

「何だかお取り込み中みたいね」

 

どうしてなのか理由を考えていると、雪花さんが訪ねてきた。雪花さんは半透明のウィズさんの事を見て、ため息を付いた。

 

「この人、アンデットかなにか?」

 

「え、えっとそれは………」

 

僕はカズマさんの方を見ると、カズマさんは首を横に振った。いくら同じ勇者だからと言っても、ウィズさんがリッチーだということはあんまり喋らないほうが良いと決めてある。おまけに今いる場所はアクシズ教徒が多くいる。誰が聞いているかわからない状況で迂闊に話さない方が良い

 

「まぁ、話したくないなら別にいいけど、今日はちょっとした報告できたのよ」

 

「報告?」

 

「アクアが昨日浄化した源泉ね。見た目はお湯なんだけど、性質が変わったみたいなのよ」

 

雪花さんが言うにはただのお湯ではなく、入ると傷の治りが早くなったり、アンデット系にかけると浄化できる聖水になったりと、かなり凄い力を持ったお湯になったらしい。

 

「教団からしてみれば結果的には良かったかもしれないわね。ゼスタさんも温泉を売りにするよりもこっちの方がより利益が得られるって嬉しそうにしてたわ」

 

結果的に良かったのかな?でもそれでも温泉を全部お湯に変えたんだから、もっと怒られたりするんじゃないのかな?

 

「とはいえ、街の住人にはまだ詳しい説明はしてないみたいだし、迂闊に街に出たら事情を知らない人たちにボコボコにされかねないから、今日中に街を出たほうが良いわね。馬車の手配は済ましといたから………まぁのんびりこの宿で待ってなさい」

 

「なぁ、ナツメ。どうして俺たちにそこまでしてくれるんだ?」

 

話を終え、帰ろうとする雪花さんにカズマさんはそんなことを聞いてきた。確かにわざわざ説明しなくても、やり方は他にもある。例えば本気で強制的に追い出したりとか……

でも、わざわざ説明しに来てくれたのは何か理由でもあるのかな?

 

「悪いけど、私や棗がってわけじゃないわ。ゼスタさんにそうしろって言われてね。まぁ私達としたら勇者のよしみとして説明しに来ただけだしね」

 

雪花さんは後ろを振り向きながら手を振るとあることを言い残した。

 

「困ったことがあったらいつでもここを訪ねなさい。私や棗はどうか知らないけど、ゼスタさんは大喜びで協力してくれるからね」

 

雪花さんが帰っていき、僕らはとりあえず帰る準備をしようという話になった。ダクネスさんはウィズさんを着替えさせたり、自分の着替えをするために脱衣所に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荷物をまとめ終え、あとは馬車が来るのを待つだけになったのだけど、特にすることもなく暇を持て余していた。

折角だから最後にもう一度お風呂に入りに行ってこようかな?

 

「ちょっとお風呂入りに行ってくる」

 

「おう、行って………ちょっと待った。俺達が入っても大丈夫か聞いてくる。めぐみん、ちょっと付き合ってくれ」

 

「え、私達さっき………」

 

「いいから」

 

カズマさんとめぐみんの二人は一緒に部屋の外へと出ていくのであった。でも、さっきめぐみんたちが三人が入っていたのに一々聞く必要あるのかな?

しばらくしてからカズマさんとめぐみんが戻ってきて、特に入っても問題がないとのことで僕はお風呂へ行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カズマSIDE

 

「さて、ユウキもこっち来てから色々あって、入ってないだろ。入ってきたらどうだ?」

 

「えっ、う、うん」

 

俺はユウキを見送るとめぐみんにサムズアップするのであった。ソレを見たダクネスと銀は何か不審に感じていた。

 

「カズマ、お前、何をしたんだ?」

 

「何、ちょっとした手助けだよ」

 

「はい、この宿の職員も協力してくれるそうですからね。まぁ、ちょっとした約束をしちまったけどな」

 

「でも、あの二人なら約束守ってくれますよ」

 

「一体何の約束をしたんですか?」

 

銀の問に俺は笑顔でこう答えた。

 

「あの二人が将来的に結婚式をあげる時は、アクシズ教会であげてもらうようにって」

 

まぁ、どうするかはあの二人が決めることだからそこら辺は大丈夫だろうな。すると泣きじゃくるのに飽きたのか、アクアがあることを聞いてきた。

 

「ねぇ、ねぇ、カズマ。ちょっと聞いていい?」

 

「何だよ」

 

「私、誤解してた。てっきりカズマは二人の応援とかせず、邪魔ばかりするようなもてない男特有の行為をするような人間だと思ってたんだけど」

 

「お前な………他の相手ならともかくあの二人に関しては邪魔をする気はない。むしろ俺としてはウミの事を応援したいくらいなんだよ」

 

「カズマはウミの事を思った以上に支えてるな」

 

「ウミは色々と大変だったからな。少しでも幸せにしてあげたいからな」

 

あいつがユウキと付き合うまでは、たくさん苦労していてずっと応援していたっていうのもあるからな。なるべく協力してやろうという気持ちのほうがずっと強かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

どうにもおかしい。お風呂に入ろうとすると職員に男性浴槽は改修工事をやっているからと混浴の方を進められた。それだったら諦めて戻ろうとするが何故か強く入るように進められた。

これは何かあるのかな?それとも気にしすぎなのか………

 

「それにしても普通のお湯に見えるけど、本当に傷とか治るのかな?」

 

昨日の戦いの傷はアクアさんに治してもらったから、効力を確かめるすべがない。でも、本当にそうだとしたらアクアさんの女神の力って本気で凄いだろ

 

「そういえば……神樹と女神の盟約ってなんだろう?」

 

盟約に関してはクリスさん、もといエリスさんが調べてくれているみたいだけど、一体どんな盟約なんだろうか?おまけに今その盟約は破ってしまっているらしいけど………その盟約を破ったのは神樹なのか造反神なのか……おまけに造反神はなんで魔王軍に協力をしているんだ?人間のことを知りたいって……

 

「何だかバーテックスを倒したり、魔王軍と戦ったりしているだけじゃダメかもしれないな。僕も調べないと………」

 

フッと脱衣所の扉が開くとそこにはタオルをまいた友奈がいた

 

「えっ!?海くん!?」

 

「ゆ、友奈!?何で混浴風呂に?」

 

「えっ、ここ混浴なの!?私が入った時女湯になってたよ」

 

これは一体………まさかと思うが宿の職員の仕業なのか?でも、何のために………

いや、思い返すとこんなことを思いつく人間が一人いる。あの時、カズマさんとめぐみんの二人が部屋から出ていった。まさかその時に………

 

「やられた!?」

 

僕は頭を抱え、今この状況をどうにかしないと考えた。とりあえず素直に出たほうがいいな

 

「僕は先に出るよ。友奈はゆっくりと………」

 

「あの、海くん!折角だから………その、一緒に入ろう」

 

「いや、でも……」

 

ごめん、正直目のやり場に困る。普段見ることない肩とか東郷ほどではないけど、ちょっとだけ見える谷間とか………

僕は何を考えているのだろう?明らかに変態じゃないか!?

 

「友奈、一緒に入るのはいいけど、せめて背中合わせで頼む」

 

「えっ、う、うん」

 

これなら色んな所を見ずに済むだろうけど、ちょっと失敗した。どうしてかというと背中合わせだと直接肌を重ねることになる。まぁ、友奈はタオルをしているからいいけど……

 

「いい湯だね~」

 

「あ、あぁ」

 

緊張して何を話せばいいのかわからない。もう急いで湯から出たいくらいだ

 

「ねぇ、海くん」

 

「なに?」

 

「私ね。こっちに来て色々と吃驚したことがあったの。300年前の勇者の人に会ったり、バーテックスと戦ったりとか、魔物と戦ったりとか、あっちじゃ考えられない生活でたくさんのことに吃驚するんだけど、でも新鮮で楽しいんだ」

 

「………僕も同じだな。この世界に来て、カズマさん達と出会ったり、若葉さん達と出会って……色んな事を教えてもらえた。それにちょっと後悔した」

 

「後悔?」

 

「みんなともう会えないんだって、どうして自殺なんてしたんだろうって………」

 

あの時はみんなの散華を治すためにって思っての行動だったけど、実は全部ムダだったってわかった時は正直泣きたくなったけど、それでもみんなは平穏な日々を送っているってわかった時は嬉しかった。

 

「こうして皆とまた会えたり出来て正直うれしかった。友奈、お前と恋人同士になれたのも……」

 

「海くん…………」

 

「でも、また別れることになるかもしれないな」

 

「えっ!?」

 

やっぱり友奈は気がついていなかった。友奈がこの世界にいられるのは、この世界に出現するバーテックスと造反神を倒すために、僕や若葉さんたちと協力するために派遣された存在。もし全て終わったらまた別れないといけない。

 

「全部終わったらの話だけどな………今の僕とお前は住む世界はもう違うんだ……」

 

「海くん………」

 

「もしそうなったら、僕のことを忘れても………」

 

僕がいいかけた瞬間、友奈は立ち上がり僕の前に来て、キスをした

 

「そんなの嫌!?忘れたくないし、忘れないよ。離れ離れになるとしても私はきっと海くんに会いに行くから………だからそんなことを言わないで………」

 

「友奈………ありがとうな」

 

僕は泣きそうな顔をした友奈をそっと抱きしめるのであった。

 

 

こうして僕らの初めての旅行は終わりを告げるのであった。だけど、もしも本当に離れることになったら、僕はどうすればいいのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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