ハンスの周りに突然現れたバーテックス。ハンスが言うにはこのバーテックスは造反神が使わした存在らしいけど……
「色々と気になることが多くなったけど、この状況をどうにかしないと……」
僕らは迫りくるバーテックスを倒していくが、ちょっとした隙にハンスは源泉を汚染させていた。
「お前らはそいつらの相手でもしてろ!!俺はゆっくりと汚染させてこの街を滅ぼしてやる!!」
本気で面倒くさいことになったな……正直何があるか分からないから満開は使わないでおきたいけど……
するとカズマさんたちが戻ってきた。アクアさんは直ぐ様源泉に手を突っ込み浄化の魔法をかけ続けた。
「なんだ。また来たのか?何にせよ、あとこれを汚染すれば、この忌々しい街からおさらばできるんだ。さっさとさせてもらうぞ」
「お前、どれくらいこの街にいたんだよ。あれ?そういえば管理人のじいさんはどうしたんだ?ここにいるんだろ?」
「食った」
その言葉を聞いた瞬間、友奈さんと千景さんは直ぐ様ハンスに攻撃を仕掛けるが、ハンスは平気そうな顔をしていた。
「今、なんて言ったの?」
「何の罪もない人を………食べたって!?」
「あん?当たり前だろ。俺は食うことが本能だ。食わないと擬態できないしな」
ハンスはバーテックスを二人に差し向け、後ろへ下がろうとしたときだった。
「カースドクリスタルプリズン!!」
冷たい声とともに、巨大な氷の柱が現れ、ハンスの右腕を氷漬けにしていた。そして後ろからは今まで感じたことのない殺気を僕は感じていた。
「確か、私が中立の立場でいる条件は、戦闘に携わらない者以外の人間を殺さない方に限る、でしたね」
「ウィズ!止めろ!早く魔法を解け!」
殺気の正体はウィズさんだった。ウィズさんは今まで見たことのない表情でハンスを睨みつけていた。
「冒険者が戦闘で命を落とすのは仕方ないことです。彼らだって日夜モンスターの命を奪いそれで生計を立てていますから、自らも逆に狩られる覚悟は持つべきです。そして騎士もそうです。彼らは税を取り、その代価として住民を守っている。対価を得ているのですから、命のやり取りも仕方ありません」
「ウィズ!本気で俺とやりあう気か?!ここでまともにやり合えばこの辺り一帯が完全に汚染され…!」
氷漬けにされ、苦しむハンスは助けをこうが、ウィズさんは遮るように
「ですが、温泉管理のおじさんは何の罪もないじゃないですか」
更に魔法を放とうとした瞬間、ハンスは自分の右腕を切断し回避した。
「くそ、こうなったら………」
ハンスの身体がみるみるうちに赤黒い蛇型のスライムへと変貌した。まさか真の姿ということか?だけどさっきのウィズさんの魔法を見てあることに気がついた。
「スライムって凍らせれば倒せるみたいだな」
「そうか!?それだったらウィズに凍らせてもらえば……」
カズマさんも弱点に気がつき、ウィズさんに魔法を使うように頼もうとするが、ウィズさんはさっきの表情は消え、困った顔をしていた。
「ごめんなさい。残りの魔力ではあの大きさを凍らせるのは……」
「じゃあどうするんだよ!?」
「いや、手はある!!借りますよ!!杏さん!!」
僕は杏さんのクロスボウを取り出し、切り札を発動させた。杏さんの切り札『雪女郎』はクロスボウから雪を降らせ、吹雪かせることで相手の動きを鈍らせられる。ということは凍らせることだって可能だ。
「完全に凍らせれば、友奈たちが砕けば何とか出来るはず………ただ問題は……」
切り札を発動していて、動けないでいる僕に、バーテックスが迫ってきた。だけど、僕の前にダクネスさんが出て、バーテックスの攻撃を受け止めてくれた。
「私はバーテックスからお前を守れば良いんだな」
「お願いします!カズマさんは巫女のスキルを使ってください!」
「っていっても、ダクネスに巫女の力を使っても攻撃が当たらなきゃ意味が無いんじゃないのか?」
「カズマ!?こんな時にそんなことを言うな!!ユウナたちの支援としてだろ」
「あぁ、そっか」
「ウミ!!私はどうすれば良いんですか?適当に爆裂魔法を放てば良いんですか?」
「バーテックスを一箇所に集めてもらって、一気に爆裂魔法で………」
「カイくん、バーテックスが~」
「こいつらも合体するのかよ!?」
いつものバーテックスと鳥型と魚型のバーテックスが一箇所に集まると、巨大な鳥型のバーテックスへと姿を変えていた。造反神のバーテックスも合体するなんて、それもそうか。元々は天の神側の方にいたんだからな。
「一気にやっつけちゃえば……あれ?」
「こいつ!?」
友奈と銀の二人が鳥型に攻撃を仕掛けるが、動きが早すぎて避けられてしまう。あんなに巨大なのに機動力が凄いとかって……
「わっしーの弓矢で撃ち落とせないの?」
「動きが早くて狙いが……」
止めるすべもなく、鳥型は街の方へと向かっていった。このままだと街が危ない。僕が行こうにもハンスの足止めをしているから無理だ。どうすれば……
「気になって来てみたら、魔王軍幹部にバーテックス………厄介なことになってるわね」
どこからか声が響いた瞬間、鳥型の身体に一本の槍が突き刺さった。更にその上から何かが降ってきて、鳥型を地面に叩きつけた。
「大丈夫か?」
僕らの前に現れたのは雪花さんと棗さんの二人だった。その後ろにはアクシズ教の人たちが集まっているし、二人はまだ残っているバーテックスの方を向き、武器を構えていた。
「魔王軍幹部の方は任せたわよ。こっちは私達がなんとかするから」
「アクア様は源泉の浄化に集中して下さい」
「あんた達、セッカとナツメだったかしら?」
「覚えてないみたいね。まぁ、女神の仕事って大変みたいだから一々送った人間のことを覚えてないのも無理がないわね」
「アクア様が覚えてなくっても、私たちは貴方のことを覚えている。それだけで十分」
バーテックスを殲滅しながらそんなことを話してるけど、この二人はかなり強い。これだったら爆裂魔法を使わなくっても殲滅できる。それだったら僕は一気にハンスを仕留める
「一気に凍らせてやる!!」
吹雪の勢いが強くなり、ハンスの身体が直ぐ様氷漬けになり、僕は切り札を解除した。
「借りるぞ!!友奈!!」
友奈の鉄甲を装備し、ハンスを砕こうとした瞬間、アクアさんがゆっくりと立ち上がるのが見えた瞬間、アクシズ教の人たちが『悪魔倒すべし』『魔王しばくべし』という掛け声を出していた。
「よくも私のかわいい信者たちの温泉を汚したわね。その罪、万死に値する」
アクアさんの左手に光が集まるのが見えた。あれって、前に僕がやったあの光と同じものなのか?
「ウミ!!行くわよ!!」
アクアさんはアクアさんで、普段と違ってかなり真面目な顔をしている。アクアさんも本気ということだな。
「はい!!勇者!!」
「ゴッド!!」
「パァァァァァァンチ!!」
「レクイエム!!」
ほぼ同時に氷漬けのハンスに拳を当てた瞬間、眩い光が辺りを包み込むのであった。