この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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今回、鷲尾須美の章の映画の話がちょこっと出てきます。


50 アクシズ教と大赦

助けてくれた二人の勇者、秋原雪花さんと古波蔵棗さんの二人に連れてこられた場所はアクシズ教会だった。中に入ると司祭みたいな格好をした人が声をかけてきた。

 

「おや、セッカさんにナツメさん」

 

「あら、ゼスタさん、これからお出かけ?」

 

「………また嫌がらせに?」

 

「嫌がらせとは人聞きの悪い。私はただエリス教に教えを請いに行くのです。エリスの胸はパット入りと……」

 

何だか物凄い偏見な発言が聞こえたのは気のせいだろうか?するとゼスタさんは僕らに気がつくと……

 

「おや、アクシズ教に入信………これはめぐみんさん!?お久しぶりですね」

 

「はい、あの時以来ですね」

 

ん?めぐみんとゼスタさんって知り合いなのか?

 

「私がアクセルに来る前に色々とお世話になったんです。あの時の約束果たしましたよ」

 

「というと彼らがめぐみんさんの仲間ですね」

 

「なぁ、めぐみん、約束ってなんだ?」

 

カズマさんが約束について聞くと、めぐみんが言うにはいつか仲間ができた時に仲間と一緒に観光に来るとのことだった。だからめぐみんがこの街に行くことを勧めたのか

 

「めぐみんさんのおかげで大分信者が増えました。貴方が教えてもらったあの方法で………」

 

「そ、それは!?」

 

教えた方法って何のことかと考えると、カズマさんと銀の二人がめぐみんの肩を掴んだ。

 

「なるほどな~あの勧誘を教えたのはお前だったのか………」

 

「そのせいで昨日私達があんな目に……」

 

「い、いや、それは………確かに私が教えましたが!!私だって被害者なんですよ」

 

「お前が余計なことをしなければなぁぁぁ!!」

 

カズマさんはめぐみんのほっぺたを抓っていると、セッカさんが呆れた顔をしていた。

 

「何だか話が進みそうにないし、あの二人は置いて私達勇者で話を勧めましょうか。ゼスタさん、部屋の一つを借りるわ」

 

「えぇ、どうぞ。こちらの二人も後ほどご案内しますのでご安心を」

 

カズマさん達二人を置いて、僕らはセッカさんの後をついていき、教会の一室に入った。

 

「私は北海道の勇者」

 

「………私は沖縄の勇者だ」

 

「「「「「北海道?沖縄?」」」」」

 

「みんな、聞き覚えがないみたいね」

 

「あの、もしかして300年前に存在した土地のことですか?歴史の教科書で名前だけは………」

 

「………君たちは未来から来たということか」

 

「なるほどね。私達が住んでいた土地は滅んだのかもしれないわね。ちょっと詳しい話を聞かせて」

 

みんなと相談し、僕が代表して話すことになり、簡潔だが未来での出来事について話した。四国以外が滅んだこと、未来での戦いについて、僕と銀はこの世界に転生。友奈はこの世界に現れたバーテックスに対抗するために派遣されたこと、須美とそのっちは何かに巻き込まれてここに来たことを………

 

「何だか未来は色々と大変みたいね」

 

「雪花さんと棗さんは転生でこの世界に?」

 

「えぇ、アクアっていう女神の案内でね」

 

「………ゼスタさんが言うには、アクア様はこっちに来てるらしいけど……」

 

確かにアクアさんはこっちに来てますよ。今は温泉を汚した犯人を探してるだろうけど……ん?というか棗さん、様付けしなかったか?

 

「あの、今アクアさんの事を様って……」

 

「………アクア様は水の女神。私は海が大好きで、きっと未来の海がきれいなのはアクア様のおかげなんだろ」

 

いや、確かに海はきれいだけど、アクアさんが関わっているかどうかはわからない。

 

「まぁ、彼女からしてみれば海に関係する神様は崇める対象なのよ。アクアもその一人ってこと」

 

「というか300年前だと崇めている神様って違うんですね」

 

「えぇ、地方によってはね。あなた達は土着神が集まったもの、神樹を祀っているのね。前に氷雨から聞いてるわ」

 

氷雨さんと知り合いだったのか……そういえばアルカンレティアを少し行った先に紅魔の里があるんだっけ?機会があったら氷雨さんに会いに行くのも良いかもしれないな

 

そんなことを思っていると、カズマさんとほっぺたを抑えためぐみん。そしてゼスタさんが入ってきた。

 

「話は盛り上がっているみたいだね」

 

「まぁね。こうしてアクシズ教と関わったお陰で、未来の勇者たちに会えたんだからね」

 

「………私たちは出会うべくして出会ったんだな」

 

「そうですか………では」

 

ゼスタさんは一枚の紙を僕に渡した。その紙はアクシズ教入信書だった。もしかしてアクシズ教って隙あらば入信させようとしてるのか?おまけにかなり自由な教義を持ってるみたいだし………

だけど、何故か入信したいという気持ちがあった。

 

「あの入信してもいいですか?」

 

「ほう?」

 

「おい、ウミ、何を血迷ってるんだ!?」

 

「そうだよ!?どこか頭でもぶつけた?」

 

カズマさんと銀が必死に止める中、僕はあることを告げた。

 

「アクシズ教って、何だか自由でさ。大赦とは大きく違うなって思って……」

 

「「あっ!?」」

 

僕が思っていることに須美とそのっちの二人が気がついた。

 

「大赦とは?」

 

「僕がいた場所で大きく影響力がある団体です。僕はその団体のかなり偉い方の家なんですが………昔、友達がなくなった時に大人たちが話してたことを聞いていて、ちょっと許せなくって………」

 

クラスメイトやその子の家族は悲しんでいる中、大人たちは誇らしいだの。お役目で死ねたのだからとか………正直聞いていて苛立ちを覚えた。ただ苛立ったのは……

 

「いつか僕もあの時の大人たちみたいなことを言うんじゃないかって思ってしまった僕自身に苛立ちを覚えてしまったんです。だけどアクシズ教は色々と好きにやってるみたいだけど、誰かが死んだら子供や大人たちはきっと泣いてくれるんじゃないかって思って………」

 

「海くん……」

 

友奈は誰のことを言っているのか気がついたみたいだった。別に大赦が嫌いって言うわけじゃない。ただそんな風に思ってしまっただけだ。

 

「ウミ殿。来るものは拒わないのがアクシズ教ですが、貴方からはうっすらですが、女神エリスの守護といくつもの神の祝福が見えます。自覚がないようですが、他の神を崇めている貴方にはアクシズ教に入る資格はありません。ただ、何か迷った時には宗教の壁など乗り越えて、いつでもアクシズ教を訪ねて下さい。アクア様は迷えるものには誰にだって微笑んでくれますから」

 

誰にだってか……確かにアクアさんはそうしてくれるかもしれない。いやアクアさんだけには限らない。カズマさんたちにはいつだって迷ったときには力を貸してくれた。

 

「それと自分に苛立つようならば、変えてしまえば良いのですよ。そうすれば貴方が先程言ったようなことにはならないですからね」

 

変えるか……それもいいかもしれないな。やってみる価値はある。

 

「では、そうして見ますよ」

 

僕は笑顔でそう告げたのだった。だけどその時だった。突然部屋にアクシズ教徒が大慌てで入ってきた。

 

「大変ですゼスタ様!?」

 

「客人の前ですよ」

 

「も、申し訳ありません。ですが、街中の温泉から、次々と汚染された温泉が湧き出して……!」

 

街中の温泉が汚染された!?一体何が起きているんだ?

 

「ふむ、エリス教の仕業というわけでは?」

 

「い、いえ、確認しましたがそのようなことはないとのことです。信じられませんが……ただ頻繁に温泉に入っている者がいるみたいで、髪と瞳が水色の、淡い紫色の羽衣を纏った女が………」

 

ソレを聞いた瞬間、僕らはある人物が思い浮かんだ。いやいやまさかアクアさんがそんなことをするわけない。というかあの人の場合、片っ端から温泉に入って浄化していたんじゃ……

 

「おまけにその女、先程広場の方で自分が女神アクアだと……そのせいで、現在アクシズ教徒全員でその女を……」

 

僕とカズマさんの二人は頭を抱えた。そんなことを言って信じてくれる人がいるのか………

 

「と、とりあえず俺たちはここで、皆行くぞ」

 

カズマさんに従い、僕らはアクシズ教会を後にしようすると、雪花さんがある事を教徒の人に聞いていた。

 

「ねぇ、二番目に温泉に入った人物はどんな人かしら?」

 

「え、えっと、浅黒い肌で短髪の茶色い髪の男です」

 

「なるほどね。ゼスタさん、悪いけどなるべく教徒達を抑えといてもらえないかしら?」

 

「分かりました。なるべくですね」

 

「ウミくんたちは急いで源泉に向かってもらえないかしら?多分だけどあなた達の仲間と合流できるかと思うから………」

 

「は、はい」

 

「サトウさん方、でしたらこちらを持っていきなさい」

 

ゼスタさんから貰った紙、最初はこんな時に入信書かと思ったけど、何かの許可書だった。とりあえず僕らは雪花さんに言われるまま、源泉のある場所まで向かうのであった。

 

 

 


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