「うぅ………」
「ウミ、お前どうしたんだ?おまけにタカシマとコオリの二人もいるし……」
四人で混浴に入ることになってしまい、色々と刺激が強すぎ、おまけにのぼせたせいで体がすごくだるくなり、横になっているとカズマさんたちが帰ってきた。
「ちょっと色々とあって………」
「海くんには色々と刺激が強すぎちゃったのね」
「結城ちゃん、ごめんね。次は一緒にお風呂入ってあげてね」
「えっ?えっ?どういう事?」
「さっきまで四人で混浴に入っていたんです」
ウィズさんが笑顔でそう言った瞬間、カズマさんが僕の胸ぐらをつかんできた。
「お前!?なんて羨ましいことをって言いたいけど、本当に大丈夫か?」
「ごめん、あのお店関係は平気なんだけど………生身はきつかった……」
「何の話かわかりませんが、ウミは意外と純情なんですね」
「皆の方はどうだったの?観光してきたんでしょ?」
僕が聞いた瞬間、カズマさん、めぐみん、須美、銀の四人はいきなり疲れた顔をしていた。逆に通常運転はそのっちとダクネスさんと友奈。一体何があったんだ?
「正直この街来るんじゃなかった………」
「出会う人、出会う人に勧誘されましたしね。おまけに銀の不幸体質も重なってましたし………」
「正直今日ほどこの不幸体質直したいって思ったことはないよ」
「まさか本当に教えたことをやるなんて………」
「何があったんだよ……」
「う~ん、別に何もなかったよ~私とゆーゆは神樹様を祀ってるって言ったら、声かけられなくなったし」
「うん」
「私の場合は群ちゃんが追い払ってくれたもんね」
「明らかに怪しかったから……」
「私はエリス教のペンダントを見せたら、あんなことを………なぁ、カズマ、いつかこの街に移住を……」
「絶対に断る!!」
話を聞く限り、この街のアクシズ教の勧誘がかなり酷いみたいだな。僕も街に出たら友奈とそのっちみたいにやってみるか………
「皆疲れてるみたいだし、お風呂でも入ってきたら?」
「あぁ、そうする………」
「じゃあ、私達も部屋に戻るね。ご飯の時は一緒に食堂に行こうね」
カズマさんたちは温泉へ、友奈さんたちは自分たちの部屋に戻るのであったが、何故か友奈だけ残っていた。
「友奈は行かないのか?」
「そんな状態の海くんを放っておけないよ」
そう言って友奈は自分の膝に頭をのせるように手招きをしていた。いや、流石にソレは恥ずかしいんだけど……
「お二人、仲が良いんですね」
おまけにウィズさんがいる前でやれというのか?
「ほら、ウィズさんがいる前だと……」
「風先輩に付き合い始めたって話たら、誰かが目の前にいても気にせずいちゃつきなさいって言われたから大丈夫だよ」
顔を赤らめていってるけど、流石にかなり恥ずかしい。逃げ出したいけどまだ身体が動かない。
僕は諦め、友奈に膝枕をしてもらうことにしたのだった。
「ど、どうかな?」
「う、うん」
「ふふ、ウミさんとユウキさん、顔が真っ赤ですよ」
というかウィズさんは何でそんな平気そうなんだよ。これが大人の余裕というものなのか?ん?大人?
「そういえばウィズさん、失礼を承知で聞きますが、いくつなんですか?」
「私ですか?20歳ですよ」
20歳にしてはかなり落ち着いてるけど、僕も二十歳になったらこんな風に落ち着いた大人になれるのかな?
「ウィズさんって人間じゃなくってリッチーっていうモンスターなんですよね」
「はい、バニルさんと出会った頃にちょっとした理由でリッチーになったんです」
そういえばバニルさんとは古い付き合いだって聞いたけど、ウィズさんとバニルさんの出会いってどんな感じなんだろう?
「歳はリッチーになってから取らなくなり、長い月日を過ごしましたが、お二人を見ていると昔の仲間のことを思い出します」
遠い目をしてそんな事を言うウィズさん。機会があったら聞いてみるのも良いかもしれないな
すると勢い良く扉が開けられ、入ってきたのはアクアさんだった。アクアさんは戻ってきては、ウィズさんに抱きついていた。
「聞いてよぉぉぉぉーー!?アクシズ教会の温泉に入っただけなのにぃぃぃぃ!?」
ウィズさんに泣きついているけど、ウィズさんが見る見るうちに半透明になってきてないか?
とりあえず事情を聞くと、温泉に入ったらアクアさんの体質で温泉を浄化してしまい、ただのお湯になってしまったらしい。それを温泉の管理人に怒られたとか……
「何だか祀っている街でそんな目に合うなんて災難ですね………」
「分かるでしょ!?おまけに一番腹がたったのが女神だって言ったら鼻で笑われたことよ!?」
「アクアさんってたまに忘れちゃうんだけど、女神様なんだよね」
「ユウナ!?信じてなかったの!?」
「ううん、そういうわけじゃなくって、ただこうして一緒にお屋敷で暮らしてるからかな?女神様じゃなくって、仲間だって思っちゃって……」
「確かにアクアさんやエリスさんは女神じゃなくって仲間として見てたから、女神だって思わなくなったな……」
「あんたら、本当に良い子ね。もしかしたら私の祝福でいい事あるわよ」
アクアさんが僕と友奈の頭を撫でながらそう言うのであった。その後戻ってきたカズマさんに僕らに話したことをすると、カズマさんに鼻で笑われるのであった。
次の日、友奈さんと千景さんを交えながら食堂に出向くとアクアさんがある話を切り出した。
「この街が危ないみたいなの」
「いや、アクアさん、意味がわかりません」
「どうでもいいが、お前はこの宿以外の温泉に入るな。この街にとって危険なのはお前なんだからな!?」
「ちゃんと聞いて!!私だって好きこのんで、浄化した訳じゃないの。まあ、屋敷のお風呂場に置いてあった高級入浴剤ですら、全部使ったにも拘わらず、簡単に浄化しちゃったし、そりゃ温泉も浄化しちゃうわよね」
「ええ!?あれを全部使ったのか!?わざわざ王都から取り寄せたのに!」
悲しむダクネスさんを無視して、アクアさんは話を続けた
「でも、変なの。あの温泉を浄化するのに凄く時間が掛かったの。私の浄化能力はそれはもう凄いの」
アクアさんはカズマさんのコーヒーに人差し指を入れて、一瞬で浄化する。アクアさんの浄化能力ってすごすぎないか?ほとんど一瞬だったぞ
「ね?」
「ね?じゃねぇよ。何すんだバカ!さっさと新しいの買ってこい!!」
コーヒーを浄化してしまい、カズマさんに怒られるアクアさん。でも、アクアさんの話が本当ならちょっと気になるけど………
「アクアさん、まだ情報不足だからなんとも言えない。もしかしたらアクアさんの気のせいかもしれないし……」
「ウミまでそんな事……」
「信じてないわけじゃないけど………」
アクアさんはとりあえずダクネスさんを連れて、温泉の危機を詳しく調べることにしたのだった。残った僕らはどうしようかと話していると、めぐみんが爆裂魔法を放ちに行きたいと提案し、僕、カズマさん、友奈、銀、須美、そのっちで行くことにしたのだった。
アルカンレティアの外に広がる森までたどり着き、早速めぐみんは爆裂魔法を放った。
「おや、何体か魔物を巻き込んだみたいですね。おかげでレベルが上がりました」
めぐみんは誇らしげに冒険者カードを見せた。そういえばレベルとかあったな
「ん?おい、何だかこっちに何かが近づいてきてないか?」
カズマさんは念のためにと感知スキルを発動させていると、何かを感知してみたいだった。そして茂みの中から黒い獣が突然現れた。
「うわ!?初心者殺しじゃねぇか!?」
「「「「初心者殺し?」」」」
「そういえば四人とも初めて遭遇するんだっけ、初心者殺しって言うのは、始めたばかりの冒険者にとってトラウマみたいな獣だよ。ゴブリンとかの初心者でも倒せる魔物の群れをうろついていて………」
「ようするに厄介な魔物って言うことか。それだったら……」
僕は勇者に変身しようとした瞬間、突然どこからともなく槍が飛んできて、初心者殺しの腹に突き刺さり、更に別の茂みから誰かが出てきて、鈍器みたいなもので初心者殺しを殴り倒した。
「大きな音が聞こえて来てみれば、観光できた人かしら?」
「………大丈夫か?」
僕らの前に現れたのは、一人は鈍器……ヌンチャクをもった褐色の少女。もう一人は初心者殺しに刺さった槍を抜く、メガネを掛けた少女だった。
「た、助かった。ありがとうな」
カズマさんは二人にお礼を言おうとしていると、僕と須美はこの二人が身にまとっている衣装に気がついた。
「あ、あの、何だかお二人の衣装………神秘的で、まるで……」
「もしかして勇者なんですか?」
「「!?」」
僕らの言葉を聞いて、驚く二人。どうやら本当に勇者みたいだ。もしかしてこの二人、前に聞いた若葉さんたちが来る前に現れた勇者だというのか?
「勇者について知っているというと、あなた達も勇者みたいね。ちょっと詳しい話を聞きたいわ」