日も暮れ、僕たちはキャンプファイヤーを囲んでいた。走り鷹鳶討伐の報酬を払ってくれるという話もあったが、原因は僕達にあるので報酬は受け取らないということにした。そんな中、須美とそのっちからある質問をされた。
「あの、海くんが使ってる勇者システムって、私とそのっち、友奈さんとはぜんぜん違うんですね」
「僕のはちょっとした事情で変わった勇者システムだからね。友奈や銀は勇者の防御力が上がってるけど、お前らのは防御力低めだもんな」
友奈と銀の勇者システムは満開も使え、ある程度のダメージを防いでくれるように出来ているけど、須美とそのっちの場合は二年前の状態でこっちに来たから、油断しているとすぐにダメージを受けてしまい、死んでしまう可能性が高い。まぁ、スキルポイントを防御面に当てていれば、この世界でも大丈夫だろうけど………
「とりあえず気をつけるようにな」
「はい」
「でも~カイくんも気をつけてね~」
「わかってる」
二回も死んでるから、本当に気をつけないとな。
深夜になり、何かの気配を感じた僕。ダクネスさんはいつもとは違い、険しい表情で警戒をし、カズマさんもその気配に気がついたのか眠っているめぐみんたちを起こしていた。
「みんな起きてくれよ。起きないと何日か恥ずかしくて俺の顔を見れないような事するぞ。いいんだな?」
「それって友奈も入ってるのか?それだったらカズマさんのことぶん殴るけど……」
「いや、俺もお前を敵に回すようなことはしたくない。というか起きてたのか?」
「何だか嫌な予感がして………」
暗くて良くは見えないけど、周りを何かがうごめいていた。こういう深夜に出現して接近してきているのってまさかとは思うけど………
「なぁ、明かりをつけるのやめないか?」
「もしかしたら別のものかもしれないけど……」
僕らがそんなことを話していると冒険者の一人が明かりをつけ、照らされたのは大量のゾンビの姿だった。みんなが悲鳴を上げている中、僕は樹の武器を取り出し、ゾンビを縛り上げていた。
「こうまで多いとは………」
多すぎて全部縛り上げるのは難しいし、ここはワイヤーでゾンビの足を切り落としたほうが早いと思い、全部のゾンビの足を切り落としていった。するとアクアさんが駆けつけ、浄化の魔法でゾンビを一掃するのであったが、何気にウィズさんが巻き込まれていた。
「とうとう来たわ!水と温泉の都アルカンレティア!」
そんなこんなでようやくアルカンレティアにたどり着いた僕ら。何だかここに来るまでかなり長かったようなきがする。
カズマさんはさっきの馬車の人から報酬を受け取らない代わりに宿泊券をもらっていた。カズマさんの提案で各自自由行動になり、僕はおんぶしているウィズさんを早い所休ませたほうがいいと思い、宿屋に向かうのであった。
宿屋に宿泊券を見せ、ウィズさんを休ませたけど、これから何をしようと考え、とりあえずお風呂に入ろう思い、宿の店員に場所を聞いた。
「男湯と女湯、あと混浴もありますよ。混浴の方がほかと比べて広いですよ」
混浴か、流石に勇気はいるけど話を聞くとまだ誰も入ってないらしいから、ちょっとした貸切状態になる。それだったら試しに入ってみてもいいか。
僕はウィズさんが起きた時様に書き置きを残して、混浴風呂に入りに行くのであった。
「人はいないみたいだな」
流石に他の人がいたら、特に女性客がいたらさっさと退散したほうがいいと思い確認をするけど、どうやら僕一人みたいだから早いところ入ってしまおう
「ふぅ、温泉もたまにいいものだな」
前に言ったのは勇者部の皆と一緒のときだったな。その前は須美たちの合宿の付き添いの時。まさか異世界に来て温泉に入るものとは思ってはなかった。
のんびりと湯に使っていると、誰かが入ってきた。
(女の人だ……これは出ていったほうがいいな)
そっと脱衣所に戻ろうとするが、ふいにその女性のことを見たけど、何だか見覚えのある人だ
「千景さん?」
思わず名前を呼んでしまった。千景さんは僕の方を見ると怒ってるような表情ですぐに僕の方に詰め寄った。
「えっと、千景さん?」
「見たの?」
見たって、ここは混浴だし、タオルで隠してるから肩とかしか見えてないし……
「そ、その千景さんってきれいな肌して………」
「それ、完全にセクハラ。結城さんに言いつけるよ」
「ごめんなさい。言いつけないで下さい。というか見たってここは混浴ですから……」
「混浴は客があんまりいないから貸し切りみたいなものだって聞いたから、こっちにしたのよ」
何だかワケアリみたいだけど、出来れば離れてほしい。ほら、タオルで隠してるけどちょっとした谷間とか目のやり場に困る
「とりあえず僕は何も見てないです。そろそろ出ますから………」
僕は逃げるように脱衣所に戻るのであった。
着替え終えベンチに座り込んだ僕、何だかさっきより疲れた。今度は普通に男湯の方に入ったほうがいいな
「あれ?海くん、こんな所で会うなんて奇遇だね」
湯上がりなのか髪を解いた友奈さんが女湯の方から出てきた。そういえば友奈さんと千景さんの二人旅行に来てるって言ってたけど、こんな所で会うなんて……
「何だか疲れてるけどどうしたの?」
「さっき混浴で………」
「結城ちゃんがいるのに、他の女性の人と入ろうとしてたの?駄目だよ。ちゃんと結城ちゃんと入ってあげないと」
いや、そういう問題じゃないんだけど………
「千景さんが混浴の方に入ってきて、詰め寄られたんですけど……」
友奈さんにさっきの話をすると、友奈さんは苦笑いをしていた。
「う~ん、海くんは肩くらいしか見てないんだよね」
「は、はい」
流石に谷間も見たとはいえない。
「実はね、郡ちゃんってあんまり他の人とお風呂に入りたがらないの」
「潔癖………それだったら温泉とかに入らないですよね」
「ううん、そういう訳じゃないの。私達とならまだ良いんだけど、本当に他の人……特に海くんや300年後の勇者の子達にはあんまり見せたくないみたいなんだよね」
「見せたくない?」
「背中の方にちょっと傷があってね。郡ちゃん、見られるの凄く嫌がってるの」
傷………確かにそういうのは見せたくないだろうけど……
「この話したの郡ちゃんに言わないでね」
「分かってますよ」
「あっ、ウミさんとタカシマさもこんな所で奇遇ですね」
「ウィズさん、もう大丈夫なんですか?」
「はい、ちょっと昔の仲間にあったりしましたが……」
それってかなりやばいんじゃなかったのか?
「それでは私も入ってきますね」
ウィズさんはそう言って混浴の方に入っていった。あれ?これは……
「友奈さん、急いで止めて」
「う、うん」
僕が止めに行ってもいいけど、今度こそ本当に傷を見てしまいそうだ。ここは気を許している友奈さんのほうがいいと思い、頼むのであったけど、ちょっと気になり、脱衣所の方で話だけでも聞くべきかと思い聞き耳を立てるのであった。
『これぐらいの傷、大丈夫ですよ』
『で、でも、さっき海くんの事を追い出すように……』
『きっとそれはチカゲさんに見惚れていたからですよ。ほら、チカゲさんもあんまり気にしないように、そんなんじゃせっかくの温泉も楽しめないですよ』
もしかしてウィズさん、千景さんを気にかけてくれてるのか?
『それにそんな傷くらい他の冒険者の方にもありますよ。皆さんもいちいち気にしてませんし』
『…………そうね』
『傷のことは詳しく聞きません。今は本当に温泉を楽しみましょう』
僕は二人の話を聞き、脱衣所を後にすると友奈さんも同時に出てきた。
「何だか取り越し苦労だったね」
「はい、というかウィズさんの優しさに負けたのかな?」
「どうだろう?折角だから私達も入ってこようか?」
「これ以上は流石に………」
「大丈夫。結城ちゃんにバレたらちゃんと説明するからね」
「いや、それは………」
それから何度か説得され、僕は根負けしもう一度混浴に入ることにしたのだった。
千景の傷のことはゆゆゆいで言っていたので、何となく入れてみました。因みに友奈と一緒に混浴に入れるつもりです