リザードランナーの討伐を終え、僕は一旦カズマさん達と別れてギルドに須美とそのっちの二人を連れ、ひなたさんに会わせていた
「えっと、この子達は前に来た二人でいいのよね」
「はい、しかも僕のことも知ってるみたいですから、同じ世界から来たみたいですね」
ひなたさんは二人のことをじっと見つめ、考え込んでいた。なんで二人がここにいるのか、しかも前に二人が来たときにはここに来たことがあるって言ってないし……本当にどうなっているんだ?
「もしかしたらあの神託が……」
「神託?」
「この間のバーテックス襲撃後、私と水都さん、氷雨さんの所に神樹から神託がありました。『造反神が女神に守られし世界に出現する。それらに対抗するために女神との盟約を破り、勇者を送り込む』と………」
「女神との盟約?」
「もしかしたらアクアさんたちと神樹の間には何かしらの約束事があったのかもしれないわね。造反神に対しては以前より聞いていたと思うわ」
確かに僕も何故か造反神に関しては誰かから聞いていた。確か……
「バニルさんか………あの人はここまで見通していたのかな?」
「多分ね」
おまけにエリスさんから聞いた結界の穴を塞いだのも造反神の可能性が高い。まだバーテックスが魔物を襲う理由とかも分からないまま、今度は神が関わってくるのか………
「あの」
「何だか置いてきぼりだね~」
話に夢中で二人のことを忘れていた。とりあえずこの世界についてや今の状況について話しておかないと
「実はかくかくしかじかで………」
「えっとここは異世界で……海くんは私達より何年か先の未来の海くんで、この世界は死んだ人が転生することが出来る世界………おまけに未来では海くんは死んでる………」
一気に話しすぎたのか困惑してるな……
「とりあえずは柔軟に受け止めろ。因みに二人はいつの頃なんだ?」
「えっとね~ミノさんが死んでから少しした後くらいかな~でも、ここにミノさんもいるんだよね~それに未来の私達も尋ねてくるんだね~」
「まぁ、後で紹介するけど………」
それから二人から話を聞くと、どうやら気がついたら本当にこの世界にいたらしい事がわかった。だけど僕の頭の中にはある言葉が浮かんでいた。
『今ここにある現実は、いずれたどり着いたであろう未来の一つだった』
以前バニルさんが言っていたいずれたどり着いていた未来って一体どういうことだ?似たようなことが起きる可能性があったということなのかな?
だとしても過去の勇者や今の僕らが集まるような状況になるってどんな事が起き始めていたんだろうか?
とりあえず須美とそのっちの二人はひなたさんたちの方で預かるということになり、僕は屋敷に戻るのであった。
屋敷に戻るとカズマさんはめぐみんの落書きについて怒っていたのであった。
須美達が来てから数日後、ようやく二人もこの世界になれてきたというよりかは、いろんなことに納得することが出来た須美が銀に会いたいということで、屋敷に連れてきたのだが、
「あのロリガキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
カズマさんの怒りは未だに収まっていなかった。まさかあのいたずらの怒りがここまで長引くとは思っていなかった。
「あ、あの海くん……」
「須美、気にするな。僕もここまでとは思っていなかったんだ……」
「えっと、海くん、この子たちが前に話した昔の東郷さんとそのちゃん?」
みんなにはある程度の事情を話しておいたけど、このままゆっくり話すのは無理そうだな。そんな時玄関のドアが叩かれた。
「ようやく帰ってきたか!!」
カズマさんがすぐさま玄関を開けるとそこにはバニルさんが高笑いをしていた。バニルさんが今回訪ねてきたのは、冬の間カズマさんが開発した商品について、バニルと商談となり、月々の利益還元か知的財産権を売るかの選択をバニルから提案された。ちなみに利益還元なら月に百万エリス、知的財産権売却なら三億エリスという提案だった。
「一応考えさせてくれ」
「分かった。答えはいつでも聞こう」
バニルさんがそのまま帰ろうとすると、僕はある事についてバニルさんに質問をした。
「バニルさん」
「何だ?彼女のあーんを逃げたのが心のなかでずっと悔しがっている小僧よ?」
「聞きたいことがあるんだけど、いずれたどり着いた未来の一つってどういう事なの?この世界みたいに勇者がたくさん集まるという未来があったの?」
「我輩は見通す悪魔。無数にある未来を覗き込むことも出来る。ゆえに小僧が知りたがっている答えを言うならば、貴様ら集合体の勇者共は集合体の中に作られた世界で、全く同じ状況になっていた未来があったと言うべきだな。とはいえ、その未来には女神の加護を受けたお前の姿は………いや、この世界の女神の加護を受けし小僧と集合体と天を繋ぎし境界の勇者は存在しなかっただろうな」
僕がいない世界の未来の出来事が、今、僕らがいる世界みたいになっているのかな?というかバニルさん、沢山ある未来の……というか平行世界の未来まで見通すことが出来るのかよ。どんだけ凄い悪魔なんだよ
「そしていずれお前の前に造反神の審判が下るだろう。楽しみにしておくがいい」
バニルさんがそう言い残して、帰っていくのであった。造反神の審判って一体………
短めですみません。最後のバニルがいう集合体の中に作られた世界で、似たような状況になった未来はゆゆゆいの世界となります。海がいないというのもその世界には海がいないという感じです。あと境界の勇者は、自分が最初に書いたゆゆゆの主人公のことです。もしかしたら息抜き程度に別作品としてゆゆゆいの話を書くかもしれません。もしかしたらですが……