この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

44 / 145
今回から原作4巻の話に入りますが、前半は前回の後日談的な話になります。


44 新しい日々

バーテックスとの壮絶な戦いが終わった日の夜、アクセルの街の冒険者たちはギルドに集まっていた。

 

「今回のバーテックスとの戦いの報酬ですが、ウミさんの希望で報酬金を全て今日のパーティーに食事代、酒代、その他いろいろにて冒険者皆さんに振る舞うことにしました。皆さん、今日は本当にお疲れ様でした」

 

『うおおおおおおおおおおーーーーーー!!』

 

ギルド内は大変多いに盛り上がっていた。本来は皆にお金を渡すべきなのだけど、戦いが終わってすぐに、バニルさんにある事を言われた。

 

「お前がやろうとすることは、いずれ来る戦いにおいて大きな障害になるであろう。今回の報酬は金ではなく、食事代とかに使うのが吉」

 

何ていうことを言われてしまった。いずれ来る戦いって一体何のことだろうか気になるけど、今はこのパーティーを楽しまないといけない。なのだろうけど……

 

「なぁ、ウミ、食べにくくないのか?」

 

「結構食べにくよ」

 

僕の右腕は固定されていた。満開の後遺症で現在は右腕が全く動かせない。まぁ、アクアさんが言うにはしばらくしたら戻るらしいからいいけど。

するとそのっちがあることを言い出してきた。

 

「それじゃ~ゆーゆにあーんしてもらったら?」

 

「ぶふっ!?」

 

そのっちの言葉を聞いた瞬間、ジュースを飲んでいた友奈が吹き出していた。

 

「もう、そのっち、駄目よ。いくら二人が付き合い始めたからって、そうやって誂うのは………ね、友奈ちゃん」

 

「わ、私は海くんがして欲しいっていうのなら……」

 

「え、えっと、その………」

 

やってもらいたいけど、恥ずかしいので僕はそそくさと逃げ出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

逃げ出すついでに夜風にあたりに来ると、クリスさんが先に来ていた。

 

「どうしたんですか?こんな所で」

 

「ちょっと、夜風にあたりに来たんだけど、ウミさんは?」

 

「ちょっと逃げるついでに夜風にあたりに来ました」

 

「逃げ出す?」

 

「まぁ色々と……そういえば聞きたいことがあるんですが」

 

「何?」

 

僕の聞きたいことは最後、御霊を破壊する時に感じた皆の思いが右手に宿ったことだ。後々ひなたさんたちから聞いた……と言うか150年前の巫女であり勇者でもある氷雨さんが言うには、僕の精霊の影響であんなことが出来たということだ。

 

「あの時の技って、クリスさんが……エリスさんが関係してるんですか?」

 

「あれですか?そうだね……関係しているというか何というか、あの時ウミさんの右手には皆さんの思いというより、願いが集まっていました。ああいう風に願いを力に変えられたのは、ウミさんが思っている様に私の力の影響を受けているからでしょう。本来は信仰心をかき集めるものですね」

 

ということはあの時はみんなの信仰心が僕に集まっていたということか。更にああいう攻撃スキルを持っているのは現時点ではアクアさんだけらしい。アクアさんの場合はゴッドレクイエムと呼んでるとか……

 

「とりあえずバーテックスはしばらく来ないみたいだから、ゆっくり養生してくださいね。私はこれからある調査に出かけますから」

 

「ある調査?女神の仕事?」

 

「まぁ、そんな所だね。もうちょっとしたら詳しい話はするから」

 

クリスさんはそう言い残して、どこかへ行くのであった。女神の仕事って一体何なんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーテックスとの戦いから一週間後、東郷やそのっちの二人は帰った。あれからバーテックスが出現すること無く、平和な日常が流れていた。クリスさんはと言うとまだ用事が終わってないらしく帰ってきてない

 

「いや、嫌よ!外はまだ寒いんだもの!二人ともバカなの?あちこちに雪が残ってるのにどうして外に出たがるの?子供なの?そんなにお外に出たいって言うなら二人だけで行ってきて!」

 

毎朝の鍛錬から戻ると暖炉の前にあるソファーにしがみついているアクアさんを引き剥がそうとしているめぐみんとダクネス。僕はその光景を見ながらカズマさんの方を見た。カズマさんは以前、バニルさんに儲け話を持ちかけられていた。

その内容は、元の世界にあったものを商品として大々的に商品として売り出すというものだった。

 

まさかこたつを作り出すなんて思っても見なかったな。

 

「ウミも帰ってきたのでしたら、カズマをどうにかしてください!!」

 

「あの暖房器具を作ってからカズマは新種のモンスターのようになってるんだ」

 

「まぁ、僕がいた場所でもこの暖房器具は人をダメにする魔力を持ってるからね……」

 

「おい、ウミ、おまえもどうだ?クソ寒い中鍛錬してきたんだろ。温まったらどうだ?」

 

「遠慮しておくよ。友奈と銀は?」

 

「二人でしたら、クエスト受けに出かけていますよ。ほら、カズマ、二人のようにクエストに行きましょう」

 

未だにこたつから出てこないカズマさん。しばらくその光景を眺めていると屋敷のドアが勢い良く開けられた。訪問者はどうやらセナさんみたいだった。

 

「サトウさん!サトウさん達は居ますか!!」

 

セナさんがやってきた理由はどうやらリザードランナーの討伐をお願いしに来たみたいだ。リザードランナーはもともと、そこまで危険ではない。だが繁殖時期に入ると、大きなメスである姫様ランナーが現れて、その姫様ランナーとつがいになる為に、走るらしい。走って、最も早いのが姫様ランナーとつがいになれるらしい。それもかなりの数の群れで、結構被害が大きいらしい。

 

セナさんに『困った人を見過ごすことが出来ないと以前言っていた』と言われ、カズマさんは渋々依頼を受けることになった。僕も久しぶりのバーテックス以外の魔物との戦いになるからちょっと楽しみであった。

 




短めですみません

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。