「お邪魔しま~す」
「お邪魔します」
ある日、屋敷に訪れてきたのはそのっちと東郷の二人だった。
「今回で勇者部メンバー全員来たことになるんだな」
「私やそのっちは二回目だけどね」
「前にギンの事を救ってくれた人たちですね」
「あの時はちゃんと話せなかったな」
「私も話でしか二人のことは聞いてないが、ウミやギンとは古い付き合いらしいな」
「まぁ、古いっていうか何とかいうか……」
「この中では一番付き合いが長いのはそのっちくらいか?」
「生まれる前から交流があったからね~」
僕らがそんなことを話していると、アクアさんとクリスさんの二人がそのっちの事を不思議そうな顔をしてみていた。
「ねぇ、ウミ。そっちの金髪の子って女神か何か?」
「どういう事ですか?」
「何だかうっすらだけど神格的なものを感じるんだけど……」
「私も似たようなものを感じるんだけど……」
そのっちから神格的なものを感じる?そのっちは至って普通の女の子なんだけど、あぁ、でももしかしたらアレが関係してるのかな?
「もしかしたらちょっとした事情で半神扱いされてたからかもしれないです」
「「「「「「半神!?」」」」」」
そのっちが半神だということを聞いて驚くカズマさんたち、そういえば銀にはその事を話してなかったから驚くのも無理はないか
「海くん、本人の許可もなく勝手に話して大丈夫なの?」
「私は別に大丈夫だよ~今はこうしてわっしーやゆーゆ達と一緒に学校に通えてるから」
本人の許可も得たことだし、僕はカズマさん達にそのっちのことを話した。そのっちは友奈達勇者より前の勇者だったのだが、とある戦いで満開を何度も繰り返して、身体が全く動かせない状態にまでなった。そんな彼女を大赦は生き神として崇めていた。
「多分だけどアクアさんやクリスさんが感じた神格的なものはその時の名残みたいなものじゃないですか?」
「何というか人の祈りって本当に凄いもんだな」
「でもね。カズマ。いくら人の祈りがすごくっても、ただの半神。本物の女神には到底及ばないわよ」
「本物の女神?そんなのどこにいるんだ?」
「ここに!?ここにいるわよ!?」
カズマさんとアクアさんがいつも通り喧嘩を始める中、そのっちは僕にあることをお願いしてきた。
「カイくん、ご先祖様達のところに行きたいんだけど?」
「別にいいけど、何か用があるのか?」
「前来た時は事情を説明しただけだからゆっくり話もできなかったんだよね~」
そのっちの提案で、僕、銀、ダクネスさんの三人は若葉さん達の所へと向かうのであった。友奈は東郷に何か相談したいことがあるということで屋敷に残るのであった。
友奈SIDE
「ごめんね。東郷さん。街をゆっくり見たかったよね」
「大丈夫よ。友奈ちゃんの相談の方が何より優先させなきゃ」
笑顔で答えてくれる東郷さん。東郷さんっていつも私を支えてくれる。
「実は………海くんにまだ返事してないの」
私がそう言った瞬間、喧嘩をしていたカズマさんとアクアさんの二人が喧嘩を止め、話に入ってきた。
「ユウキ、お前……まだ返事してないのか?」
「いくら何でも返事して上げなさいよ。あの仮面の悪魔に会うたびに誂われてるのよ」
「あとめぐみんにもな」
海くんがバニルさんとめぐみんちゃんに誂われているのは知ってる。私も早く返事をしてあげないといけないっていうのは解ってるけど、いざ返事をしようとすると上手く話せなくなってしまったりしている。
「先輩の言うとおりね。友奈ちゃんは恋愛関係になると困惑しちゃうのね」
「確かにちょくちょく私の爆裂魔法についていく時に悩んで、返事しようとすると何かと誤魔化して、返事をしなかったりしてますね」
「うぅ~どうすればちゃんと返事できるかな~」
どうすれば良いのか悩んでいる私。するとクリスさんがそっと私の手を握り、
「無理に悩まなくて良いんだよ。ただ君はウミさんの事はどう思ってるの?」
「海くんの事………私は海くんの事は……」
私は海くんの事が好き。大好きなのかもしれない。いざ離れ離れになってしまって悲しい思いをしたり、あの時の告白を聞いて嬉しい気持ちがあった。
「しっかり答えようとしなくて良いんだよ。ただ、言いづらくてもちゃんと答えてあげてね」
「クリスさん………」
この時のクリスさんは何故か女神様のように思えた。そのせいか少し勇気をもらえた。
「ちょっと追いかけてきますね」
私は海くんたちの後を追いかけるのであった。残った東郷さん達はと言うと……
「全く、返事するのに時間かかりすぎよね」
「いっぱい悩んで、自分の納得できる答えを見つけるのが友奈ちゃんらしいわね。所でクリスさん?」
「ん?」
「本当に良かったんですか?」
「………何が?」
「こうして皆さんとお話をするのは初めてですけど、クリスさんは海くんのことを……」
「いいの。私の場合は想い続けても叶わないから………」
「そうですか」
海SIDE
僕らはそのっちを若葉さん達の所へ連れて行くと、
「こんにちわ~ご先祖様~」
「う、うん、お前は確か……私の子孫の……」
「はい、乃木園子で~す」
「園子か……」
何だか若葉さん、そのっちの事が苦手そうな感じがしてるのは気のせいだろうか?僕はひなたさんの方を見ると、
「若葉ちゃん、自分の子孫とどう関われば良いのかわからないみたいなのよ」
「そういうもんですか?」
「そういうものなの」
まぁ、自分の子孫との関わり方なんて普通はわからないものだよな。僕とひなたさんの場合は特殊みたいだけど、
「所で今日はワカバとヒナタの二人だけなのか?」
ダクネスさんが友奈さんたちの姿を探すが、見当たらないためかそんなことを聞いてきた。
「他の皆は来たる戦いに向けて、街の外周辺を回ってるわ」
「来たる戦い……バーテックスとの戦いか」
「何だか話しか聞いてないけど、私がいた時以上の数が攻めて来るんだよね」
さすがの銀もこれまで以上の数が来ると聞いて、弱気になっている。それは僕もだ。この世界を守れるかどうか不安でしょうが無い。
「安心しろ。私達が力を合わせれば何とかなる。園子、もしもの時はお前たち勇者部の力を借りるぞ」
「うん~私達も頑張るよ~」
来たるべき戦いに向けてそんなことを話していると、突然扉が勢い良く開けられ、入ってきたのは友奈だった。
「どうしたんだ?友奈?」
「う、海くん、は、話があるの」
「話?」
話って何だろう?本当に何かあったのか?
すると何かを察したひなたお姉ちゃんとそのっちはニヤニヤ笑っていた。
「海くん、ここじゃなんだし、場所移動したほうが良いんじゃないの?」
「そうだよ~折角だからね~」
二人に勧められ、僕と友奈は別の場所へと移動するのであった。
「さて、園子ちゃん」
「うん、ひなタン」
「二人共、何処に行こうとしてるんだ?」
「「もちろん!!見届けに!!」」
ひなたお姉ちゃんとそのっちの二人は親指を上げそう答えるのであった。
「よし、私も行く!ダクネスさんも行きましょう」
「い、いや、私は……」
「お前たちは………」
ひなたお姉ちゃんたちの行動を見て、呆れる若葉さんだった
若葉さんたちの家からそんなに離れていない場所に着いた僕と友奈。さっきから気になってたけど、どうして顔が赤いんだ?
「あ、あのね。海くん、話ってね……」
「う、うん」
「返事、ちゃんとしないといけないって思ってね」
その言葉を聞いて僕は友奈が何を言おうとしているのか理解した。返事ってあの事か……
「海くんは私のこと好きだよね」
「改めて聞くなよ。あの時の気持ちは今も変わってない」
「そうだよね。でね、私の気持ち…………私は海くんの事が……」
友奈が自分で考えて、考え抜いた答えを言おうとした瞬間、突然空が割れる音がした。そして、
『緊急!緊急!冒険者の皆様は、装備を整えて冒険者ギルドへ!街の住民の皆様は、直ちに避難してください!!』
空が割れ、この警報……まさかこのタイミングで!?
次回、総力戦となります。返事の件はちゃんとやります