「ハァァァァァ!!」
ゆんゆんの首元に白月の刃を当て、ゆんゆんは呪文詠唱をやめた。
「私の負けですね」
「って言っても、ここ最近ギリギリでの勝利だな」
毎日続けているゆんゆんとの模擬戦は、ここ最近ギリギリの戦いになっている。毎朝続けているからか、互いの動きの癖が分かっているのもあるのだろうけど……
「ゆんゆんは飲み込みが早いというか、僕の動きをよく読んでるな」
「そ、そんなことないです。今日は負けてしまいましたし……」
「それでもだよ。段々と差が開いていきそうだしな……」
この三日間一勝一敗一引き分けという本当に互角の戦いを続けている。まぁ、ゆんゆんに僕の動きを読まれている理由はわかる。現状使用している僕の武器は勇者部みんなの武器が多い。そのせいもあるだろうな
「全くウミは何をやっているんですか!?ゆんゆんに圧勝くらいしてくださいよ」
「圧勝って、ウミだって頑張ってるんじゃないのか?」
「それでもいい勝負してるよね~」
「でも、二人共無茶はしないでね」
今日はめぐみん、カズマさん、銀、クリスさんの四人が見学に来ていた。まぁ、見られて緊張するとかないからいいけど、見てるだけでいいのかな?
「たまにはみんなも参加したら?」
僕がそう言った瞬間、銀以外が首を横に振った。
「私の場合は早朝に訓練はパスかな?他の時間ならいいけど」
「私ってこう見えて結構忙しんだよ」
そういえばクリスさん、たまにちょくちょく出かけてるな。聞いてみたら女神の仕事だって言ってたし……
「私には爆裂魔法があるので、体術はパスです」
「俺もお前らの鍛錬についていく自信ないんだが……」
「カズマさん、冒険者の職業についてるんだから、僕の持っているスキルも覚えられるから、やってみたらどうかな?」
「それ、前にやって失敗しただろうが!?」
アレは以前、カズマさんが僕の持っているスキルを覚えられるんじゃないかって、話していたので、試しに色んな勇者の武器を渡したけど、重くて上がらなかったり、操作ミスしてしまったりとかあったな。
「まぁ、無理には勧めないけどさ」
「機会があったら何かしら覚えてやるよ」
「というか海は私達の時代の武器をメインに使ってるんだから、若葉さんたちの武器を使ってみたら?」
銀の言葉を聞いて、いい考えだと思った。確かに若葉さん達西暦時代の武器も使えるし、切り札も使えるようになったんだから、使ってみるのもいいかもしれない。折角だから指導してもらえるからも知れない
僕は早速若葉さん達の所に行くことになった。めぐみんも少し興味があるということなので着いていくことに
「と言う訳でかくかくしかじかの理由で……」
早速若葉さん達の所にやってきた僕とめぐみんは事情を話した。それにしてもかくかくしかじかって言葉は本当に便利だな
「ふむ、なるほどな。お前がそうしたいと言うなら教えるが、みんなもいいな?」
「私は賛成だけど、でも私の戦い方と結城ちゃんの戦い方って一緒だよね。教えられることあるかな?」
「高嶋さん、切り札と満開は全然違うからいいんじゃないの?」
「それに私達の事をよく知ってもらえるからいいかもしれないね」
「まぁ、分からない事があったら、このタマに任せタマえ!!」
どうやらみんな、賛成みたいだ。するとめぐみんがあることに気がついた。
「そういえばヒナタはいないみたいですが、何処に行ったんですか?」
「ひなたなら藤森さんと一緒に出かけている。少し前から断片的に予知を見ているみたいだからな」
断片的な予知?何かが起こりそうなのかな?今度こそはしっかり教えてほしいけど……
「とりあえずどんな順番で教えようか……」
「ここはやっぱりじゃんけんで決めよう」
友奈さんの提案でじゃんけんをし、僕に教える順番を決めるのであった。
「と言う訳で最初に教えるのは私です」
じゃんけんで勝ったのは杏さんだった。僕は早速勇者に変身しようとするが、
「変身はしなくて大丈夫よ」
「えっ?でも、武器の使い方を……」
「私の武器はクロスボウ、遠距離戦においては海くんはそれなりに戦えてるから大丈夫だよ。ただ、立ち回り方かな」
「立ち回り方?」
「そうだね。めぐみんちゃんは爆裂魔法しか使えないんだよね」
「はい、爆裂魔法しか覚える気はありません」
「だとしたら常に後ろに下がってる感じだよね。他には銀ちゃんやダクネスさん、結城さんは近距離、アクアさんは支援。海くんはどんな状況でも立ち回れるように動くことになるのよね」
「はい」
「例えば、めぐみんちゃんを守る役目に付いたとする」
何となく想像できる。めぐみんに敵が近づかないように接近してくる敵を遠距離から攻撃していけばいい。
「基本的には近づいてくるやつだけを倒せばいいんですか?」
「ううん、それだけじゃ駄目。いくら仲間が信頼できるからって、仲間のサポートを忘れないで、常に視野を広くしてみんなのサポートできるようにしてあげて」
みんなを常にサポートできるようにか……かなり重大な役目になるな。
「あとはフォーメーション関係なんだけど、そこら辺はリーダーはカズマさん?」
「はい、カズマは私達のパーティーのリーダーですね。普段の様子から考えられないほどすごい人ですから」
めぐみんが自慢げにそんなことを言う
「めぐみんちゃんはカズマさんのこと信頼してるのね。ううん、大好きなのね」
杏さんの言葉を聞いて、顔を真赤にさせるめぐみん。これはいつも誂われてる仕返しができそうだな
「めぐみん、お前はいつ告白するんだ?」
「ウミ!?やめて下さい!?私は別に……」
「ふふ、とりあえず私の講義の終り。一応切り札の事を教えると、私の精霊は雪女郎。金弓箭から雪を出し、吹雪かせて相手を凍らせる事ができるの」
「というわけで次は私の番だな。このタマに任せタマえ!」
今度は珠子さんが教えてくれる番になった。めぐみんはと言うといじられたからかさっさと帰ってしまった。僕らは勇者の姿になり、講義を始めることになった。
「私の武器は神屋楯比売っていう旋刃盤だ。ワイヤーが着いてる分、ある程度は自由に使える」
「確か珠子さんの精霊は輪入道で、炎を纏ったり、旋刃盤の上に乗ったりできるんですよね」
「そうそう、よく分かってるじゃんか。杏やひなたが言うように頭はいいほうなんだな」
僕は旋刃盤をある程度使用して、何となく感覚をつかむことが出来た。
「まぁ、細かい操作は必要ないみたいだな。後何か聞きたいことあるか?」
「聞きたいことですか?武器の使い方じゃなくってちょっと思いついた必殺技を……」
「必殺技!!どんなだ」
必殺技と聞いてすごい興味を示した珠子さん。必殺技とか興味あるのかな?前にもめぐみんが興味持ってたし……
「とりあえず勇者部のみんなの武器をうまい具合に繋げるっていう技を……」
「みんなの武器を使えるお前らしい必殺技だな。何か悩んでるのか?」
「順番ですかね?どんな順番で武器を出していくか悩んでるんですけど……」
「なるほどな。確かワイヤー、銃、大剣、2本の刀、拳だったな」
「今のところはそんな風に、他には珠子さんたちの武器を使った技とか、銀達の武器を使った技とか……」
「それだったら、ワイヤーで拘束しながら地面に叩きつけたりして、銃で相手を牽制、大剣で相手を思いっきりぶっ叩いて、刀で切り刻み、最後には拳だ」
確かにそんな感じの順番なら、上手く行くかもしれない。少し試してみないとな
「よし、試しにやってみろ」
「はい!」
「それで土居さんと必殺技の訓練して、そんなにボロボロなの」
「はい、何となくだけど出来てきて……」
千景さんは僕の服装を見て、ため息を付いていた。
「頑張るのはいいけど、あんまり無理はしないように」
「はい」
千景さんは大葉刈を取り出すと、僕に向けた。
「私の武器や切り札は前に見せたわよね」
「七人ミサキですよね。七人同時に倒さない限り無敵だっていうの」
「そう、一人消えてもすぐに復活することができる。大鎌も使い方は教えればすぐに使いこなせるけど、私達の武器を使った必殺技についてちょっとした提案があるんだけど」
「提案?」
「七人ミサキを発動した状態で、武器を変えられる?」
「ちょっと試してみますね」
僕は白月を取り出し、七人ミサキを発動させ、七人の僕が現れた。この状態で武器を変えてみると……
「確かに出来ますね。一人だけ白月を持った状態じゃないと駄目みたいですけど、」
「その状態で同時に攻撃する。それが必殺技になるんじゃないの?」
確かにこれだったらいけるかもしれない。
「ありがとうございます。千景さんのおかげです」
お礼をいうと何故か顔を赤らめていた。
「別に、ただ思いついただけだから………ほら、大鎌の使い方教えるから」
「はい、よろしくお願いします」
次の友奈さんの番となると、僕は疲労で結構一杯一杯だった。
「大丈夫?今日一日で頑張りすぎたんじゃ……」
「いえ、切り札をちょっと使ったんで……」
「そっか、それじゃあんまり無理はできないね。えっと戦い方より切り札のことを話した方が良いよね。私の切り札は前に見せたけど、一目連って言ってね」
友奈さんは切り札での戦い方を詳しく教えてくれた。というか反射攻撃する相手に、攻撃が通るまで殴り続けるってどうなんだよ
「あともう一つ切り札があるんだけど……それはちょっと話せないかな?」
「話せないって、どういう事ですか?」
もう一つの切り札について聞くと、何故か友奈さんは俯いていた。もしかしてかなり危険なものなのだろうか?
「友奈が言っていたもう一つの切り札についてか……」
「はい、何だか危険なものなのかなって?」
「特に危険なものではないが、そのもう一つの切り札は身体と精神に対して大きな負荷が強いんだ。多分だが友奈はお前に使わせないようにと思い、言わなかったんだろう」
精神的な負荷……前に切り札にも後遺症みたいなものがあるって言ってたな。
「現状覚える必要はないだろうし、今は今より強くなる努力をしろ」
「………分かりました」
それにしてもちょっと気になる。もう一つの切り札について……
ひなたSIDE
「それで我輩に何の用だ」
私と水都さんはウィズさんのお店にやって、バニルにある話を持ちかけていた。
「貴方も分かっているはずです。私達も断片的にですが近い未来にバーテックスの襲撃があるということを、それもかなり厳しい戦いになるということを……」
「今日来たのは貴方に、その時が来た時に一緒に戦ってほしいということよ」
バニルならバーテックスに対抗する術があるはず、だとしたら協力をしてもらえればいいと思っているけど、
「残念ながら断る。バーテックスとの戦いは勇者の役目であろう。正義の勇者が悪魔に頼るなどどうかしておるぞ」
やっぱり断られた。まぁ、予想はしていたけど……
「バーテックスは厄介だな。勇者以外の攻撃は通じない。いや、ネタ種族の魔法を通じるな。だが、お前たちの敵は魔王軍やバーテックスだけじゃないということを覚えておくのだな」
「貴方みたいな悪魔も敵ということですか?」
「安心しろ。我輩は貴様らの敵でも無ければ味方でもない。フハハハ」
店内にバニルの笑い声が響いた。やっぱり勇者と紅魔族しか戦えないということなの………
だんだんと近づいてくる決戦へのフラグ回でした。