平穏な日常が流れる中、僕は屋敷のリビングで正座をしていた。周りには心配そうにしている友奈、クリスさん。羨ましそうにしているダクネスさん。苦笑いをしているカズマさん、アクアさん、めぐみん、銀が見ており、僕の前には仁王立ちしている風先輩とちょっと頬を膨らましている樹がいた。
何故僕がこんな目に遭っているかは、遡ること30分前
「風先輩が来るって」
カズマさんとめぐみんのチェスを観戦していると、友奈から先輩が来るという知らせを聞くのであった。
「先輩が?」
「あと樹ちゃんもだって」
犬吠埼姉妹がこっちに遊びに来るのか。それにしてもいつ来るんだろうか?
「なぁ、こっちに来る子ってお前の知り合いなのか?」
「うん、犬吠埼風先輩、僕より一つ年上の先輩で、その妹の犬吠埼樹は一つ下で、二人共勇者だよ」
「前に聞きましたが、勇者は沢山いるのですね」
いやいや、めぐみん。この世界には勇者候補が沢山いるんだぞ。勇者がいっぱいいるくらい気にしないでほしいものだな。
「滞在中はここに泊まる感じになるのかな?」
「まぁ、部屋も余っていることだし大丈夫だろ」
カズマさんはそう言うと、出かけていたクリスさんと銀が帰ってきた。僕はクリスさんにも先輩たちが来ることを話すと……
「な、何だか自由に来れるようになっちゃったね。まぁ、しょうが無いちゃしょうが無いけど……」
結界に穴が空いた事が原因で繋がりやすくなってるみたいだけど、本当に気にしすぎだと思うけどな
「とりあえず部屋の準備でもするかな?」
「それでしたら買い出しに行っているアクアたちが戻ってきてからにしましょう。せっかくウミの友だちが来るんですから、食事も豪華なものを……」
「そうだな」
カズマさんとめぐみんがそんなことを言った瞬間、アクアさんたちが帰ってきた。来たのだが、アクアさんたちの後ろに見覚えのある二人がいた。その二人はさっき話していた風先輩と樹の二人だった。
「ウミ~何だかあんたの知り合いみたいなの連れてきたけどいるー?」
「本当にタイミングが良いのか悪いのか……来るの早くないですか?先輩、樹」
「まぁ、早いのに越したことないじゃない。それはそうと海、正座」
突然そんなことを言われ、困惑する僕。何でいきなり正座なんだろうか?
「あんた、あっちで勝手にいなくなったし、こっちでも色々とやらかしてるみたいじゃない。そこら辺の話し、聞かせてもらえないかしら?」
笑顔で言ってるけど、目が笑っていないし、隣にいる樹も笑顔が何だか怖い。これは拒否しないほうが良いのか?
「あんた、私達のためにあんな事をしたんだろうけど、あんたのこと聞いた私達のショックは散華した時以上だったわよ」
「本当です。残された私達のことも考えて下さい」
「はい、本当にすみません」
自殺した件について、誰かに怒られるだろうなと思ってたけど、まさか最初にやってきたこの姉妹に怒られるとは思っても見なかった。でも、誰だって皆を救うためにやりそうなことですよ…………と言い訳したら余計に怒られそうだから言わないでおこう。
「それとアクアさんとダクネスさんだっけ?あんたがこっちでやったことについて聞いたわよ。女性の服をひん剥いてたって、あと女性を盾代わりにしたって」
「ちょっと待った。そこら辺は色々と誤解してる」
服をひん剥いたっていうのは、裁判のときのことだろうし、女性を盾代わりにした覚えは全くな………いや、一番最初にダクネスさんの一件か!!
僕はアクアさんとダクネスさんの方を睨むと、ダクネスさんは悦んでいた。僕は必死にその2つについて誤解を解くのであった。
それから一時間、僕がこっちでやってきた無茶や今までの無茶について怒られ、ようやく解放された。
「悪いわね海。東郷に海のことたくさん怒っておいてって言われてたのよ」
「東郷先輩、私達の言うことなら聞くだろうって言ってました」
「海くん、前から風先輩と樹ちゃんには頭上がらないもんね」
いや、だって先輩には学校では色々とお世話になってるから頭が上がらないし、年下の樹に怒られることだけはしたくないって思ってたから……
「あっ、これつまらない物だけど」
先輩はカズマさんにあるものを渡し、カズマさんは中身を見てみると……
「うどん?」
「私達の所では高級なうどんよ。海や友奈がお世話になってるしね」
「あ、あぁ、ありがたくもらっておくよ」
カズマさんは何だか微妙なものをもらったって顔をしてるけど、高級うどんならまだマシじゃないのかな?きっとどっかの誰かさんは2つの候補がどっちも外れだからな……
いや待てよ。一番怖いのはそのっちか。そのっちが一番何を持ってくるか心配だな
「まぁ、今回来た目的の一つは達成できたし、あと一つ、大赦から海に仕事頼まれてるわよ」
「仕事ですか?」
「えぇ、こっちの事とバーテックスについてよ。何だかあっちでは取らなかった行動を取ってるって聞いたからね。そこら辺まとめたら勇者部の誰かに渡してもらえばいいからって」
「分かりました」
まぁ、色々と気になることがあるから伝えるべきだな。
「それと海さんの勇者としても能力を教えてほしいって頼まれてます」
「僕の?そうだな……」
口で説明するよりかは見せたほうが早いということで、僕らは屋敷の庭に移動するのであった。
屋敷の庭に移動した僕ら、何故かカズマさんたちは見学するということで見ているし、ダクネスさんは僕の前に立ちはだかっているし
「あの、ダクネスさんはどうして?」
「二人にウミの能力を見せるんだろ。それだったら相手が必要だと思って、決して自分のためというわけでは……‥」
明らかに自分のためだよね。まぁ、突っ込まないほうがいいな。僕は勇者に変身すると
「僕の勇者の能力は先輩たちが使っているものとはちょっと違うんですが、みんなの武器が使えるんです」
試しに樹の武器を取り出し、ダクネスさんを縛り上げた。
「東郷の言うとおりね。私達の武器が使えるなんて結構便利じゃない」
「おまけにあの武器、結構使ってるぞ」
カズマさんの言葉を聞いて、樹は嬉しそうにしていた。
「私の武器、使いやすいですか?」
「あぁ、使う頻度は多いな」
拘束することができるし、ワイヤーで敵を切り裂くこともできる。かなり使い勝手いい
「あとは満開ですが、物凄い疲労と身体機能が一時的に使えなくなるくらいですね。まぁ、一日立てば戻りますけど……」
「それはこっちも一緒みたいね。多少の仕様変更で私達もそうなってるし」
「でも、海さん、うっかり死んじゃったりしないでくださいね」
「分かってる」
ごめん、一回だけうっかり死んだことあるんだけど、言わない方が良いな
それからある程度の能力について話し、夕食は高級うどんで宴会をするのであった。
友奈SIDE
「はぁ!?海に告白された!?」
「はい」
私は皆が寝静まった頃、風先輩と樹ちゃんにあることを相談していた。相談の内容はもちろん告白の件だ。
「海さん、前から友奈さんの事好きでしたもんね」
「そうだったの!?知らなかった……」
「というかアレくらい誰だって分かってたんじゃないの?」
二人共、海くんの気持ちにずっと前から気づいてたなんて、私、全然気が付かなかった
「それで返事は?」
「そうです。返事はしたんですか?友奈さん」
「そ、それが……まだなの」
私がそう言った瞬間、二人して何かを話し出していた。
「友奈って本当に恋愛関係になるとヘタレるわね」
「何だか海さんが可哀想だよ~」
「とりあえず友奈。返事はしっかりしないと駄目だからね。今の自分の気持ち、ちゃんと伝えること、分かった?」
「は、はい」
海SIDE
深夜、僕は先輩たちの部屋を訪れていた。
「何よ。こんな時間に女子の部屋に入るなんて」
「すみません。帰る前に伝えておきたくって」
「伝えたいことですか?」
「伝えるというか言い忘れたというか………二人共身体が元に戻ってよかったな」
僕がそう告げると何故か二人は申し訳なさそうにしていた。
「こうして身体が戻ったのって、あんたのおかげなの?」
「私達、海さんが犠牲になったから……」
そういえばその件について話してなかったな。僕は二人に僕がやったことが実は無駄だったと言うことを話すのであった。
「あんた、それって……」
「そんなことって……」
二人はどう言えばいいのか分からないでいるけど、僕は笑顔である事を告げた。
「別に二人が気に病むことはないですよ。自殺した件については僕の早とちりだったわけだし、変なことだけど死んだことで、この世界でカズマさんたちと出会えたんだし……今は全然気にしてません」
「でもさ、あんた、友奈に………」
「その事は言わないで下さい。返事はちょっと気になってるけど、僕としては思いを告げただけで十分ですから」
僕はそう言い、二人の部屋を後にするのであった。
「あの子、本当に色々と溜め込んでるわね」
「うん、園子さんも言ってました。もう少し素直になればいいのにって……」
「そこら辺は友奈か誰かがどうにかしてくれるわよ」
犬吠埼姉妹回でした。