若葉SIDE
白鳥さんから予知で見た結末が起きそうだと聞き、私たちは急いでそのダンジョンへと向かっていた。
「まだ着かないのか」
念のため白鳥さんにひなたを預けて置いたが、正直私はまだたどり着かないことに苛ついていた。すると友奈がある異変に気がついた。
「見て、あそこの空!?割れてる!!」
「バーテックスが出現してるってことね」
「早いところ行かないと、銀が大変なことになるんだろ!」
「急がないと……」
「待って!?こっちにもバーテックスが現れるみたい!?」
先へと進もうとする中、頭上の空が割れ、大量のバーテックスが道を塞ぐように立ちはだかった
「時間稼ぎ………いや、私達を押さえ込んで、海たちを始末するためか……皆!一気に蹴散らすぞ!」
全部倒して、すぐにでも助けに行かないと……
銀SIDE
最初、海のことはよく思っていなかった。あいつはたまに私達以上につらそうな顔をしているのが凄く嫌だったからだ。
あの頃はどうしてそんな顔をするのか分からないでいた。私たちはバーテックスとの戦いに傷つき、痛い思いをしているのに、それを見るたび、何であいつはあんな顔をしているんだと思っていた。
だけどある日、私は見てしまったのだった。海が大赦の人に囲まれる中、ただひたすら鍛錬をしているのを……私は物陰に隠れながら様子を見ていると
『もうお止めになったほうがよろしいんじゃないですか?海様』
『まだ、頑張れる………』
『どうしてそこまで体を鍛え続けるんですか!?貴方は勇者になれないというのに……』
『僕が勇者になれないって、誰が決めたんだよ!あいつらがあんなにボロボロになって戦っているのに、僕はそれを見ていることしかできない。それだったら頑張って、頑張って、勇者に……いや、なれなくても樹海の中に入れるようになってあいつらを助けたいんだ!!』
海は私達以上に思っているから、つらそうな顔をしていたんだ。それだったら私はもう海にあんな顔をさせないように、バーテックスを全部倒しちゃえばいいんだって決意するのであった。
そして今、私は目の前に現れた山羊型のバーテックスに対して、満開を使用した。白い神聖な衣装、4本の巨大なアームにそれぞれ巨大な斧が握られていた。これが私の満開の姿
「一気に終わらせる!!」
山羊型に一気に接近し、四本の斧で山羊型を真っ二つに切り裂いた。山羊型は真っ二つにされ、光の粒子となって消えていくのであった。
前に海から聞いた話だと、満開の状態ならバーテックスのコアを封印の義とやらなくても破壊できるって聞いたけど、本当だったみたいだ。
私は満開を解き、避難している皆にVサインをしていると
「銀!!そいつは囮だ!!」
海の声が響いた瞬間、無数の針が降り注いだ
海SIDE
銀目掛けて降り注いだ無数の針。それを発射したと思われる存在ともう一体は割れた空からゆっくりと現れた。僕が端末で情報を確認すると射手型と蟹型のバーテックスだった。
「銀!?大丈夫か!?」
立ち込める煙の中に僕が声をかけ続ける。
「…‥……あ、あはは、油断しちゃった………でも、大丈夫……」
銀の声が聞こえホッとする僕であったが、煙が晴れ、銀の姿を見たら驚きを隠せないでいた。銀の身体に突き刺さる無数の針。所々血まみれになっていた。
「銀……お前!?その傷!?」
「大丈夫……痛いけど戦えるから……それにこのバーテックスとはちょっと因縁があるから………」
銀はゆっくりと斧を構え、二体のバーテックスを見つめていた。因縁って、あの時戦ったバーテックスなのか?
「すぐに終わらせて……みんなでゆっくりご飯食べような」
銀は二体のバーテックスに立ち向かっていく。射手型のバーテックスから発射される無数の針を銀は弾いていくが、何本か身体に突き刺さっていく。このままじゃ銀が……
「行かないと……」
僕は勇者に変身し、戦いに行こうとするが身体が思うように動かない。やっぱり切り札と満開を使ったからなのか。でも、休んでいるわけには……
「おい、無茶するなよ!?」
「そうですよ!その体で戦えるわけ……」
「行かないと駄目なんだ。いくら死んでもアクアさんが蘇らせてくれるからって言っても………そんなのダメだ……」
僕が向かおうとすると、カズマさんが僕の腕を掴んだ。
「離せよ!」
「ちょっと待ってろって、おい、誰でもいいから協力してくれ!!今からこいつに体力を送るから……」
「カズマさん?」
「ドレインタッチでお前に体力を送ってやるから、それまで待ってろ。俺もギンが死ぬところなんて見たくないからな」
「………ありがとう」
僕はお礼をいうと、クリスさんが自分の体力を分けるといい、受け取ることにしたのだった。
「待ってろよ。銀」
銀SIDE
無数の針を弾きながら、バーテックスに近づいていく私。体は痛いけど、ここは私が頑張らないといけない。私は射手型に向かって跳ぼうとすると、射手型の場所と違う場所から無数の針が迫ってきた。
「その攻撃は読んでたよ!!」
無数の針を避け、蟹型に向かっていく。あのカニは反射板で射手型の攻撃を反射することができる。それだったらまずはあのカニを仕留めてからだ。
私はカニの頭に斧で攻撃を仕掛ける。だが、
「か、硬い!?」
装甲が硬いからか傷一つつかない。いや、もしかしたら身体の疲労と傷の痛みで力が入らなかったからなのか?そんな事考えた瞬間、下の方から巨大な鋏が現れ、挟まれてしまったけど、真っ二つにされることはないみたいだ。
「ぐ、ぐううううう」
蟹型は私を挟んだ状態で、思いっきり自分の鋏を地面に叩きつけた。
「かはっ!?」
叩きつけられた衝撃で骨が折れてしまった。正直痛みで泣き叫びたい。でも、そんな暇なんてない
私は痛みに耐えながら、ゆっくりと立ち上がるけど、射手型が口についている巨大な矢をこちらに向けていた。
「…………ここで終わり…………」
全身の力が向ける感覚があった。きっとここで私は死ぬんだ。でも死んでもアクアさんが蘇らせてくれるはず………それだったら一回死んで、この痛みから解放されたい。
だけど……
「にするもんか!!」
私は斧を構えて、攻撃を受け止める体制に入った。ここで私が死んだら、今度は海やカズマさんたちを狙ってくるはずだ。それだったらここで死ぬ訳にはいかない
「来るなら………来い!」
射手型の矢が発射されるのであった。
海SIDE
矢が銀目掛け発射された瞬間、戦える状態になった僕が助けに入ろうとするけど、間に合いそうになかった。
「くそ!!」
すると別の場所から若葉さんたちが現れ、助けに入ろうとするが……
「駄目だ!間に合わない………」
助けに入ろうとするが誰も銀の所にたどり着けず、もうだめかと思った瞬間、銀の姿が消え、矢がさっきまで銀がいた場所に突き刺さっていた。
「銀?」
「間に合った!!大丈夫?銀ちゃん」
気がつくと別の場所に銀を抱えている友奈さん?いや、あいつは……
「全くもう~どうしてミノさんはいつも死にそうになってるの~」
「……えっ?お前は……」
更には金髪の少女が抱えられた銀に声をかけていた。更には二人の前に黒髪の少女がやってきて、射手型と蟹型に銃を放ち続けていた。
「その無茶する所……変わってないわね」
「何で……お前らが……」
銀はゆっくりと地面に下ろされ、三人の少女は目の前のバーテックスを見つめた。
「それじゃ~ミノさんをここまでボロボロにさせたバーテックスを………倒しちゃおうか」
「そうね………前のときの分も入れてね」
「ふ、二人共怒ってるね……でも、友達を傷つけられたんだから当然だよね。それだったら私も頑張る!」
銀を助け、今二体のバーテックスと立ち向かおうとする三人の少女の名前を僕は呼ぶのであった。
「友奈、東郷、そのっち!」
次回原作3巻の分の話が終われたらいいな~