僕とクリスさんは以前取っていた宿の部屋にいた。
今回の話についてはまだカズマさん達には聞かせたくないとクリスさんが希望したのだ。
クリスさんはエリスさんに姿を変え、話しだした。
「まずウミさんはこの世界について何処まで知っていますか?」
「まぁ、異世界だということ、僕らが住んでいた世界とカズマさんがいた世界の中心みたいな世界だって聞いたことがあります」
「はい、その通りです」
まぁ前にアクアさんから教えてもらったことなんだけどね。でも、それはエリスさんも僕が知っているって分かっているはずなんだけど、
「ですがまだウミさんが知らないことがあります。それは私とアクア先輩の役割です」
「役割って、若く死んだ人間の魂を導く事がエリスさんやアクアさん、女神の役割じゃなかったでしたっけ?」
「私の場合は、この世界で死んだ人を導くこと、あの時ウミさんと会った時はアクア先輩の仕事を引き継ぎました」
「でも、その後僕の精霊になったんでしたっけ?」
無理やり連れてきたみたいで、かなり申し訳ないけど……
「ですが私ももしかしたら先輩も知らない役割が一つだけありました」
「もう一つの役割?」
「はい、それはこの世界全体の結界の維持です」
「結界の維持?」
「他の世界の住人がこの世界に迂闊に干渉できなくするための結界です。私と先輩はその結界の維持を知らないうちにやっていました」
エリスさんが言うにはその結界は本当に強力で、誰にも破壊することは出来ないらしい。だけど僕は結界の話を聞いた瞬間、ある真実に気がついた。
「もしかして結界が壊された?いや、結界の力が弱わったっていうのか!?」
「…………はい、結界が弱わり、穴が空いて一時的にこの世界とウミさんがいた世界と繋がってしまったみたいです。その結果……」
「………バーテックスがこの世界に現れたっていうのか……」
僕がそう言った瞬間、エリスさんは涙を流していた。
「わ、私のせいで、私が結界の維持について早く知っていれば……バーテックスが現れることなかったのに……」
後悔し続けるエリスさん。僕はそんなエリスさんに対して……
「いや、エリスさんのせいじゃないでしょ。明らかに僕が悪いんだし、というか何気にカズマさんも原因の一つだよね」
僕の言葉を聞いて、キョトンとした顔をするエリスさん。いやだって、知らなかったとは言え、エリスさんをこの世界に引っ張ったのは僕だし、カズマさんはカズマさんで、アクアさんを特典として連れ出したんだし………別にエリスさんが気にすることじゃないのに……
「で、でも」
「勇者部五箇条一つ、なせば大抵なんとかなる!」
「はい?」
「僕が生きていた時、所属していた部活の決まりみたいなものですよ。結界の維持が弱わって、そこからバーテックスが現れたって言うなら、結界に空いた穴をふさぐ方法だってあるはずです。きっと何とかなるはずですよ」
エリスさんは突然笑いだした。僕、変なこと言ったのかな?
「ふふ、何だか前向きになる言葉ですね。何だか私もさっきまで悩んでいたのを忘れてしまいました」
「そうでしょ、この言葉は五箇条の中で一番好きな言葉なんですよ」
「ウミさん、探しましょう。結界の穴を塞ぐ方法を……」
「はい」
僕とエリスさんは結界の穴をふさぐ方法を見つけることにしたのだった。
翌日、鍛錬の後、僕はダクネスさんの実家でもらった刀を見つめていると、興味深そうに銀が声をかけてきた。
「それどうしたの?」
「ダクネスさんの実家でもらったんだけど、この刀、僕しか抜けないみたいなんだよ」
僕は銀に刀を渡し、抜かせてみようとするが、全然抜けないでいた。
「何だか不思議な刀だけど……もしかして勇者の武器だったり?」
「多分そうかもしれない。若葉さん達も同じことを言ってた」
おまけに勇者に変身しても、使えるみたいだし、もしかしたら僕の勇者の力が300年前と同じ、神話が語られている武器を使えるようになってるのかもしれない。
「名前は白月。どんな力を持っているかわからないけど、使っていればわかるか」
「まぁ、海の専用武器なんだし、いいかもしれないね」
銀はどこかへ出かけようとすると、僕はあることを思い出した。
「そういえば銀。お前が前に友奈に伝言頼んだよな」
「う、うん」
「どんな伝言だ?ちょっと気になってるんだけど……」
「あ~まぁ、何ていうか………二人に勝手に死んでゴメン。私の分までしっかり生きろよって伝えただけだよ」
「そっか……」
銀は銀で、伝えられなかったことがあったんだな。そういえば友奈の奴、ちゃんと伝言伝えたのかな?あの時の告白が衝撃的で忘れていたらどうしよう
「なぁ、海。満開使った後ってどんな感じだった?」
いきなり満開のことを聞いてきたけど、どうしたんだろう?確か銀もこの世界に来て使えるようになったけど……
「凄く疲れるな。あと一日一回が限度だし……」
「そっか……それだけ分かればいいや」
友奈SIDE
バーテックスが進行している世界に行くべきか話し合ったけど、結論は出なかった。でも、私は一人、四国の壁の前に来ていた。
「すぐに行くからね。海くん」
「友奈ちゃん、どこに行くの?」
壁の外へ出ようとした瞬間、誰かに呼び止められ、振り向くとそこには東郷さんとそのちゃん、風先輩、樹ちゃん、夏凛ちゃんがいた。
「友奈さん、そのバーテックスが進行している世界に行くんですか?」
「ごめんね。まだ話し合ってるのに……でも、あの世界できっと待ってるはずだから……」
「待ってるって誰がよ?」
夏凛ちゃんの問に私は答えることができなかった。海くんが待っているなんて、東郷さん以外信じてくれないよねって思っていると
「海の事よね。東郷から話は聞いたわ」
風先輩の言葉を聞き、私は東郷さんの事を見た。
「友奈ちゃんの話はきっとみんな信じてくれるって信じてたから話したの。それに私とそのっちはその世界に用事があるから……」
「ミノさんに文句言わないとね。伝言で謝らないでって~」
「大赦からの話では、その世界に行く道は神樹が作ったみたいなんだけど、通れる人数に制限があってね。最大でも三人までなのよね。だから、友奈、東郷、乃木、あんたら三人で行ってきなさい」
「先輩……みんな、行ってきます」
個人的に勇者部五箇条がようやく出せました。
そして勇者部組の参戦を近づいてきました。