友奈が帰還してから数日が経った。僕の方は少しだけど落ち着きを取り戻し、アクアさんにお酒でも奢ろうと思っていると、突然現れた黒髪のロングの女性があることを告げた。
「冒険者サトウカズマ!貴様らには現在、国家転覆罪の容疑がかけられている! 自分と共に来てもらおうか!」
「カズマさん、何かやらかしたの?」
「い、いや、全く持って身に覚えがないんだが……」
この眼鏡の人、いきなり初対面の人にそんなこと言うなんて、失礼じゃないのかな?
「私は検察官のセナと言う。冒険者サトウカズマ。機動要塞デストロイヤー戦において爆弾の転送。その爆弾は領主殿の屋敷を爆破。それにより貴様は今テロリストか魔王軍の手先ではないかと疑われている」
爆弾?それってコロナタイトの事か。まさか領主の屋敷に飛ばされるなんて思いもしなかったな。
「カズマさんはこの街を救うためにやったんですよ。それぐらい許してくれないんですかね?」
「そうでうしょ。カズマはデストロイヤー戦の功労者ですよ。確かに指示を出したのはカズマですが、あれは緊急的処置なんですから」
めぐみんの言葉を聞いて、カズマさんは涙ぐみ、周りにいた冒険者たちがそうだそうだと声を上げていた。だが、セナさんは冷たい声で……
「……ちなみにだが国家転覆罪は、犯行を行った主犯以外の者にも適用される場合がある。この男とともに牢獄に入りたいというのなら止めはしないが……言動には注意した方がいいぞ」
そう言った瞬間、ギルド内が静まり返った。更にはアクアとめぐみんの二人は……
「……確か、あの時カズマはこう言ったはずよね。『大丈夫だ!全責任は俺が取る!』って」
「わわ、私は、そもそもデストロイヤーの中に乗り込みませんでしたね。もし私がその場にいれば、きっとカズマの止められたはずなのに……。しかし、その場にいなかったものは仕方ありません。ええ、仕方ありません」
全員一気に突き放したな……
「そしてそこのカミサトウミ!貴様にも同行をしてもらおうか」
「えっ?僕も?」
「ちょっと待ってください!!ウミはコロナタイトとは全く関係ありません!」
めぐみんが反論するが、認められずカズマさんと一緒に連れて行かれるのであった。
カズマさんは牢屋に連れられ、僕はと言うと何故か豪華な部屋に連れてこられた。この待遇の差は一体何なんだろうか?
するとセナさんが嘘を看破する魔道具のベルを持ってきて机の上においた。
「すみません。あのような形で来てもらって……」
さっきまでの態度とは全然違った。一体何がどうなっているんだ?
「別にいいですけど、僕がここに連れてこられたのは一体……」
「ここ最近、この街周辺で目撃されている白い生物についてお話を聞くためです」
白い生物?バーテックスのことか。
「突然現れ、人々や魔物を襲う白い生物。貴方はその生物について何か知っているのではないかと思い、お話を聞こうと思いました」
それだったら普通に連れてこれなかったのかな?まぁ、別にいいけど……
「そうですね……あの白い生物、バーテックスは僕がいた場所では人類の敵として扱われています」
「人類の敵ですか………」
「奴らは僕がいた場所にしか現れなかったのですが、何かをきっかけにこの街周辺に現れるようになりました」
「それは貴方を狙ってやってきたということではないのですか?」
う~ん、その可能性はあるな。僕がこっちに来る前に現れる可能性だってあったはずだよな。でも、僕がこの世界に来て、奴らは現れるようになった。
「その可能性はありますね」
僕がそう言うとセナさんはベルの方を見るが、反応はなかった。
「現段階では何ともいえませんね。話は変わりますが、貴方は魔王軍の関係者とつながりはありませんよね」
繋がりか……ないといったら嘘になるな。でも、ウィズさんの事は話さないほうがいいな
「あるというか……デュラハンと言葉をかわしたり、一緒にバーテックスと戦ったんで、それがつながりになるかもしれませんね」
ベルの反応を確認し、これで話は終わりだといい、僕は帰されることになったが、
「あのカズマさんに面会をしたいですが……」
「それは無理です。裁判が終わるまでの間は面会謝絶です」
そう言われ、僕は渋々部屋を出るのであった。
警察署に出るとクリスさんが待っていいた。
「大丈夫だった?連れてかれて心配だったんだけど……」
「僕は別に……ただバーテックスのことや魔王軍との繋がりについて話しただけだし」
「じゃあ、国家転覆罪とかで捕まったわけじゃないんだね。良かった……」
安心するクリスさん。するとどこからか爆裂魔法の音が聞こえてきた。
「あれは?」
「あー、カズマさんを救出させようとアクアさんが……」
なるほど、爆裂魔法の音で気を引いてるうちにか。でも、脱走したりしたら更に罪が重くなるような気がするけど……
「カズマさんを助けるにはあっちと同じ舞台に立たないといけないけど、どうしたものか……」
正直カズマさんの弁護人として立てば良いんだけど、正直自信がないな。さてどうしたものかと考えていると、クリスさんがあることを提案した。
「それだったら助けになってくれる人がいるんじゃないの?」
「助けになってくれる人?」
僕はある人物を思い浮かべた。きっとあの人達なら何か知恵を貸してくれるはずだ。
僕とクリスさんは若葉さんたちが住む家を訪ね、上がらせてもらい、事情を話した。
「なるほど、弁護人としてか……」
「でも、僕自身そういうのやったことがなくって……」
「それだったら杏、協力してあげたら?」
若葉さんは杏さんの事を呼ぶと、杏さんは慌てていた。
「わ、私?」
「ここに来て、色んな本を読んだんだろ。それだったら法律関係も詳しいんじゃないのか?」
「う、うん、一応読んだけど……」
「協力してやってくれないか?」
「うん、分かった。海くん、裁判まで時間がないから……」
「はい」
僕は杏さんと一緒に別室へ移動するのであった。
クリスSIDE
「海の奴、少しずつだが元気を取り戻してきたんだな」
「それでもたまに泣いてる時あるよ」
ウミさんは時折一人で泣いている時がある。でも、声をかけるとすぐに何でもないと言ったりする
「海くん自身、まだ子供だからね。支えてあげてね。クリスさん」
「は、はい」
私にウミさんを支えてあげることなんてできるだろうか?でも、そうしないといけないという気持ちがずっと強かった。