この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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今回、後日談的な話になります。


15 その後

目を覚ますと体の痛みが無かった。無かったのは良いけど、何で僕の寝ていたベッドの側でエリスさんが寝てるんだ?

 

というかどれだけ寝ていたんだ?いつの間にか泊まってる部屋で寝てるし……

 

「ようやく起きたみたいね。海くん」

 

扉の方にひなたさんがむいてくれたらしいりんごを持っていた。

 

「あれから3日は寝てたのよ」

 

「3日も!?というかあれだけの傷が全く無いんだけど!?」

 

「それはアクアさんの回復魔法で治してくれたのよ。流石は女神ね。街中の冒険者の傷を治したっていうのに、全く余裕があるんだもの」

 

女神の力ってどれだけ凄いんだよ。というか支援関係だったら、ほぼ最強じゃないのか?

 

「それにしても海くんって、いつの間に彼女を作ったのかしら?」

 

僕の側で眠っているエリスさんを見て、ニヤニヤしていた。

 

「べ、別に彼女ってわけじゃ……」

 

「驚いたな~最初はクリスさんだったのに、眠ったら別人に変わってるだもん。それにその子、前に見た女神エリス様にそっくりだし」

 

ひなたさんにエリスさんの事がバレた!?僕はため息をつき、事情を話した。

 

「なるほどね。エリスさんが海くんの精霊なんだ」

 

「って言っても、守護する力が全然発動しなかったけど……」

 

「多分だけど、海くんが使ってる……というよりこの世界にいる勇者の力は絶対防御みたいなことが出来ないんじゃないのかな?」

 

「それってどういうこと?」

 

「勇者の力は神樹様が与えた力なんだけどね。神に造られたものは同じ神様じゃなきゃ作れないんじゃないのかな?若葉ちゃんたちが使ってるのは似せて作られたもの。だからじゃないのかな?」

 

だからあんまりダメージを防いでくれなかったのか……それでも、下手をすれば死んでたりするような攻撃を受けたのに、動けたということは、ある程度は守ってくれているということか

 

「今回の戦いについてだけどね。若葉ちゃんがいうには『初めてにしては上出来だったが、最初のあのざまは何なんだ』って怒ってたよ」

 

「あ、あれは……色々と」

 

「狂気に支配されたりして戦ったら、勇者になれなくなるかもしれないから気をつけて、昔にも似たようなことがあったから……」

 

それって勇者の誰かが狂気に支配されて、勇者になれなかったとかかな?

 

「分かりました。気をつけます」

 

「それは若葉ちゃんに会って言いなさい。私からは無茶な戦いをしたし、可愛い彼女が出来たことについて黙っていたこと。そこら辺怒ってるんだから」

 

だから、彼女じゃないのに……

 

「えっと、ごめんなさい」

 

「ゴメンで済ませないでほしいかな」

 

「じゃあ、どうしろと……」

 

「私の事お姉ちゃんと呼んでくれたら許してあげるよ」

 

笑顔でそう言うひなたさん。というか血のつながりがあるけど、先祖と子孫の関係なんじゃないのかな?

 

「正直この見た目でお婆ちゃんって呼ばれたらショックなんだよね~」

 

このお婆ちゃんは何を言ってるんだよ。いい歳して……

 

「それに弟って欲しかったんだよね」

 

笑顔で言ってるけど、その笑顔、物凄く怖いですよ。断っても断りきれなそうだし、諦めるしかないか

 

「分かりましたよ。ひなたお姉ちゃん」

 

「はい、上出来です」

 

こうして何故か姉が出来た。さて、後は狸寝入りしているエリスさんを……

 

「それで、いい加減起きているの分かってますよ。エリスさん」

 

「…………バレてました?」

 

「うん」

 

エリスさんは起き上がり、ひなたさんの方を見た。

 

「その、改めまして、エリスです。今回、子孫であるウミさんを守れなくてすみませんでした」

 

「いいのよ。謝らなくても、そこまで怒ってないから……出来たら私のことをお姉ちゃんって……」

 

「おいこら、お婆ちゃん!何でエリスさんまで巻き込むんだよ!」

 

「将来二人が結ばれれば、義理の姉に……」

 

「姉にならないよね。というかエリスさんが凄く顔真っ赤にしてるし」

 

「私とウミさんが……結ばれて……」

 

本気にしちゃってるよ。何でこう冗談が通じないのかな?

 

「元気になったみたいだし、カズマさん達の所に行ってあげたら?あの人達も凄く心配してたし」

 

「そうだな」

 

思考停止しているエリスさんをおいて、僕とひなたさん……お姉ちゃんはギルドに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルドに行くと受付のお姉さんに声をかけられた。

 

「ウミさん、大丈夫そうですね」

 

「は、はい」

 

「こちら今回の謎の生物討伐の臨時報酬として一千万エリスが支払われます」

 

受付のお姉さんはそう言って、報酬金を渡してきたけど、バーテックス討伐でお金がもらえるんだ。

 

「あの生物の危険性についてはワカバさんたちにお話を聞き、ギルド側や王国の人からは討伐者に報奨金を支払うようにとお達しがありました」

 

バーテックスの危険性について理解してくれるなんて……

 

「これからもがんばってください」

 

僕は報酬をもらい、カズマさんたちの所へと行くと何故かみんな、落ち込んでいた。

 

「どうしたの?」

 

「おぉ、ウミ。ようやく起きたのか」

 

「3日も寝ていて、寝坊ですよ」

 

「ごめんなさい。それで何かあったの?カズマさんとアクアさん達が物凄く落ち込んでるけど……」

 

「実は……」

 

ダクネスさんが言うには、ベルディアを倒した報酬とめぐみんがサソリ型を倒したことで、四億エリスもらえるはずだったのだが、

 

アクアさんの出した水が、街にまで被害が出てしまい、その弁償金として四億四千万エリス払うことになった。四億は報酬で返金できるけど、残りの四千万エリスは借金になってしまったらしい。

 

「……それは大変だったんだな」

 

「海くん、協力してあげてね。仲間なんだし」

 

お姉ちゃん、念を押さなくていいから……

 

こうして僕らは平穏な日々に戻りつつあるのであった。だけど、銀からある事を聞かれた。

 

「そういえばあのバーテックスってどうしてこっちに来たんだろうね?」

 

確かに言われてみればそうだ。何でこの世界にバーテックスが来たのだろうか?おまけにアクアさんが言うには神格を感じるとか……

 

「それについては分からないわ。何かしらの原因があったのかもしれない」

 

お姉ちゃんはそう言うけど、本当に何が起きようとしてるのやら…………


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