この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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お頭としての頑張り

盗賊団の団員もそれなりの数になってきた。とはいえ団員はなんというか個性的な人が多い。

ユミやボタンやみゆはまだ良い方だけど、他の団員は本当に個性的と言うべきかくせがあると言うべきか……

 

どうにかまとめ上げないと思い、私はカズマに相談することにした。

 

「問題児をまとめ上げる秘訣?」

 

「はい、カズマは私達のリーダーです。その何というか問題児が多いのによくまとめ上げられているなと思います」

 

「なぁ、めぐみん。それは僕と友奈も入ってるのか?」

 

「ちょっと待った!?私は問題児じゃないからね」

 

銀が慌てて否定してきた。確かにまともだけど正直言うと色々と巻き込まれやすい感じがする

 

「まぁウミたちの場合は問題児と言うか……色々と一人でやろうとしてるし……」

 

「そ、それはまぁ……」

 

「あ、あはは……」

 

「そう言われると……」

 

こんなメンバーをカズマはよくまとめられていると思う。何かコツでもあると思い、相談してみた。

 

「そうだな……別にまとめているわけじゃないんだけどな……ほら、ウミたちはいいとして、お前ら言っても聞かなかったりするだろ」

 

カズマは私、ダクネス、アクアを見てそう言うのであった。何というか改めてそう言われると申し訳ない気がする。

 

「待ってくれないか?アクアとめぐみんはともかく、私は……」

 

「お前、色々とやらかしてるだろ……」

 

ダクネスは問題児扱いされ落ち込むのであった。

 

「まぁ秘訣があるとしたら、相手をよく理解することかな?誰にだって良いところがあるんだからそこさえ知られればな」

 

「そうですか……ところでウミ、ウミはどんな感じにまとめ上げているんですか?」

 

「めぐみん、僕が勇者部をまとめ上げてると思ってたのか?」

 

「はい、違うんですか?」

 

「勇者部のリーダーは風先輩だよ。でもよくよく考えれば先輩は頑張ってたな……まぁ僕もアドバイスを上げるとしたら理解してあげることかな?」

 

「カズマと同じですか……」

 

相手を理解する……試して見る価値がありますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、私はユミ、ボタン、みゆの三人に試しに訪ねてみた。

 

「3人共、今一番やりたいことってなんですか?」

 

「どうしたの?師匠、突然……」

 

「いえ、ちょっと興味があって……」

 

「やりたいことですか……特にはないですけど……そのやりたいという事ではなく、欲しいものでもいいですか?」

 

「ボタンがそういうのは珍しいですね。何ですか?欲しいものって」

 

「えっと……い、妹か弟が……」

 

「……それはトウゴウに頼んだほうが良いですね」

 

「そ、そ、それは……ちょっと……」

 

ボタンは顔を真赤にさせていた。流石に頼むのは難しいか……それにしてもどうしてそんなことを……

フッとユミとみゆを見た。なるほど、確かにこれは……

 

「ボタン、貴方は遠慮しがちですから少しはわがままを言ってみたら良いんじゃないんですか?別に悪いことではないのですか」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

「そうですよ」

 

「分かりました」

 

「それでみゆは?」

 

みゆに聞くとみゆは少し考え込んでいた。みゆの年だとそれなりにやりたいことがあると思っていたのだが……

 

「えっと、私はまだわからない」

 

「わからない?」

 

「うん、パパがいて、ママがいて、一緒にいてくれるだけで十分なの。だからやりたいってことは……」

 

みゆは笑顔でそう答えた。私はそっとみゆの頭をなで、微笑んだ。

 

「みゆは今が幸せなんですね」

 

「うん!」

 

本当にみゆはいい子ですね。さてユミは……

 

「ユミはどうですか?」

 

「私?私は師匠を超えることだよって言いたいけど、もう一つあるよ」

 

「もう一つ?」

 

「うん、パパたちを……師匠たちを助けたい。いつも助けてもらってばっかりだから、今度は私が助けたいの」

 

ユミはいろんな事があったからかそう思うようになったのかもしれない。でもそういうのは悪いことではない。

 

「それじゃ未来でも私は助けてもらうことを願っていますね。ユミ」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日になり、クリス、セシリー、ゆんゆん、イリスにも同じ質問をした。何というかみんないろいろとあるものなんだな。そして最後に私は……

 

「チカゲ、今やりたいことはなんですか?」

 

「どうしたの突然?」

 

チカゲに同じ質問をしてみた。チカゲはしばらく考え込み……

 

「特にないわね」

 

「ないのですか?」

 

「えぇ、ないわね。どうしてそんなことを聞いたの?」

 

「えっと実は言うと……」

 

私はリーダーとしてみんなをまとめ上げられるようにするためにとチカゲに話した。するとチカゲは……

 

「そう」

 

「何というか駄目でしたか?」

 

「いいえ、ただ貴方はそういうことをしっかり考えられることができるのね」

 

「どういうことですか?」

 

「……昔の乃木さんはリーダーだったけど、私達のことを考えるよりも自分のことばっかり考えていたわ」

 

「ワカバがですか?そうは見えないですけど……」

 

「昔の話よ。だから色々と大変なことがあったり、私もひどいことを言ったりしていたわ。だけどちゃんと自分がリーダーとしてやるべきことを考えてくれるようになった」

 

ワカバもワカバで色々と大変なことがあったのか……

 

「何か困ったことがあったら、ちゃんと私達に相談しなさい。ウミくんたちがよく言ってるじゃない」

 

「そうですね。悩んだら相談ですね」

 

改めてみんなと話してみて、リーダーとしてすごい人になるのではなく、助けあうことが重要な気がしてきた。というか私はこの事を知っていたのに、忘れていたのかもしれない。

 

だって私達はいつだって助け合ってきたのだから……

 


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