めぐみんSIDE
ウミから教わった作り方で私は盗賊の衣装を作り、アジトへ行きユミとみゆとボタンの三人にある衣装を渡した。
「わぁ~国防仮面の衣装だ~みゆちゃん、知ってる?」
「はい、ママが子供の頃にいた正義の味方だよね」
「この衣装……二着目……というか友海も二着目だよね」
ボタンは何か言っていたいけど、友海は聞こえていないのか私に嬉しそうに話しかけていた。
「師匠、この衣装も師匠が作ったんですか?」
「いえ、折角だからという理由でウミが作ってくれました」
ウミはカズマと同じように私がみゆとユミと遊んであげていると思っているみたいで、割と協力的だった。二人共どうしてこう信じてくれないのだろうかと思っていた。
とはいえ盗賊団も割と順調だ。何故ならセシリーがアクシズ教団に手紙を送ったら、入団したいという希望があったり、ゆんゆんも里に手紙を送ったら格好良さそうだからと言う理由で紅魔族全員が入団したいというのもあったり、イリスもまた父親に盗賊団を作ったという話をしたら腕利きの騎士を何人でも連れて行けと……入団希望者が多くなったりしている。
ただ少し問題が発生していた。現在のメンバーの職業を見てみると勇者二人、新職業である巫女勇者(魔法使いより)1人、アークウィザード二人、プリースト1人、チメンドンヤ(王族)1人……盗賊団という割にはまったくもって盗賊職がいない……
「師匠、私、盗賊系のスキル持ってるよ」
「ユミ、嬉しいですが本職がほしいところですね」
「はい、お頭。できれば冒険にでかけたいので前衛職をもう一人くらい……」
「私はこういった集まりだけじゃなくって、普段一緒に御飯を一緒に食べたりとかできる人が……」
「私は金髪イケメンのお婿を……」
「これは友達募集でも、冒険者仲間募集でも、お婿さん募集でもないのですよ!!」
何というかこうもまとまりがないというのは……ユミやボタンやみゆはまだ落ち着きがあるからかまだまともだけど……
何というかカズマはよく私達をまとめ上げていますね。
「そういえば前衛職で優しくて金髪イケメンと言えばある話が……」
イリスはある元貴族の話を話し出した。その人物は隣国の下級貴族生まれで、生まれながらドラゴンに愛され、最年少ながらも素晴らしい才を見せ、槍を使わせれば王国一。ドラゴンナイトと呼ばれる超レア職業についたらしい。
彼はまじめで騎士の鏡と呼ばれ、その国の姫の護衛となった。まぁその後はお決まりの展開で、お姫様はその男に恋をし、男もまた姫の思いを知り、二人は逃避行をしたという……
「つまりお姫様を拉致ってエリート街道を棒に振ったろくでなしの話ですね」
「違います!これは身分の差から決して結ばれない恋にもかかわらず、彼なりに姫の思いに答えようとしたお話なんです」
「は、はぁ……」
何というかイリスはもちろん、ゆんゆんもそういった話が好きみたいですね。とはいえもしかして……
「イリスお姉ちゃん、そのドラゴンナイトってこの街に?」
「えぇ、いるみたいですよ」
みゆは話をきいて、目をキラキラさせていた。みゆもまたそういうのが好きみたいですね
「まぁ折角ですから探してみてもいいですね。とはいえ本当の目的は……」
探すという言葉を聞いて、イリス、ゆんゆん、みゆが嬉しそうにしていた。全く仕方ないですね
私達は(セシリーは寝ていたため置いてきた)ギルドに行き、受付のルナに声をかけた。
「この街でそれなりに名前が売れていて、真面目で誠実で、金髪でイケメンで実力者で紳士な槍使いを紹介してください」
「途中から願望が混ざっていますよ。というかそんな素敵な方がいたら、私の方こそ紹介してもらいたいくらいです」
遠い目をしながらそう呟くルナ。何というか色々と大変なんだな……
ルナは気を取り戻し、咳払いをした。
「この街には特に問題がある方が多いので、そんないい特徴を兼ね備えている方は聞いたことがないですね」
「それじゃそれに近しい人はいないですかね?やりを使う冒険者なんてあんまりいないですし、真面目で誠実というだけでも目立っている気が……」
「一番目立っているのはめぐみんさんのいるパーティーですね。それに勇者のみなさんもですが」
いや、まぁ確かに目立っているけど……
それからルナからドラゴンナイトに近い特徴の人たちを紹介してもらった。
紹介してもらったのだが、おじいさんだったり、シモネタだったり、そもそも冒険者じゃなかったりしていた。そして挙句の果てには……
「頼む!酒おごってくれよ!」
ゆんゆんに土下座して頼み込む、カズマの悪友のダストだった。
「ダストおじちゃんは相変わらずだね」
「えぇ、何というか……」
「あんな人がいるんだね」
ユミ、ボタン、みゆは物凄く呆れていた。というかそろそろ……
「本来の目的である盗賊を探さないと……」
「あのゆんゆんさんはいいんですか?」
「まぁゆんゆんは……いけ……ダストとどこか行くみたいですから放っておきましょう」
「めぐみんさん、今、生贄って言い掛けませんでした?」
「気の所為ですよ。ボタン。というか今更だったのですがいい人材がいたのを思い出しました」
私、イリス、ユミ、ボタン、みゆは急いでギルドに戻るのであった。
ギルドの酒場に行くとある二人を見つけた。
「クリス、チカゲ。ちょうどよかったです」
「あれ?めぐみん、どうしたの?」
「珍しいわね。貴方が私に声を掛けるなんて」
「チカゲには……いえ、考えてみるとそれっぽい能力を持っていましたね。お二人にお願いがあるのですが……私が作った盗賊団に入ってもらえませんか?」
クリスは思いっきり飲んでいたものを吹き出し、チカゲは思いっきり首を傾げるのであった。