緊急アナウンスを聞き、正門まで行くと若葉さんたち初代勇者パーティーも来ており、更にはクリスさんも来ていた。
そして僕らを待ち受けていたのは先日やってきたデュラハンだった。
「どうして、城に来ないのだァァ!!この人でなし共がぁぁぁぁ!!」
なんで来て早々怒ってるんだ?
「もう爆裂魔法撃ちこんでもいないのに、何怒ってるんだよ」
「何を抜かす白々しいっ!そこの頭のおかしい紅魔の娘が、あれからも毎日欠かさず通っておるわ!」
僕とカズマさんはめぐみんの方を見ると、白々しく口笛を吹くめぐみん。いつの間に行っていたのやら……
「お前、行ったのか。もう行くなって言ったのに、あれからまた行ったのか!」
カズマさんがめぐみんの頬を抓っていた。めぐみんはというと……
「違うのです。今までは何もない平野とかに撃ち込むだけで満足だったんですが、城への魔法攻撃の魅力を覚えて以来、大きくて硬いモノじゃないと我慢できない体に……」
「もじもじしながら言うんじゃねぇぇ!!」
「カズマさん、めぐみん一人じゃないみたいだよ。爆裂魔法を打ち込んだということは……」
僕とカズマさんはアクアさんの方を見た。アクアさんは顔を背けていた。
「お前かああああああ!」
「あのデュラハンにろくにクエスト請けられない腹いせがしたかったんだもの」
頬をつねられながら言い訳するアクアさん。この二人は何が原因でこういう状況になったのか解ってるのかな
「俺が真に頭にきているのは!仲間を庇い、呪いを受けた女騎士を助けようとする奴は一人も居ないのかァ!!俺が言うのもなんだが、不当な理由で処刑され、モンスター化する前は、これでも真っ当な騎士のつもりだった。その俺から言わせれば、貴様を庇って、代わりに呪いを受けたあの騎士の鏡のような……」
「……や、やあ……」
遅れてやってきたダクネスが恥ずかしそうにしていた。
「あ、あれぇ……」
そういえばあっさり呪いが解かれたこと知らなかったっけ、普通だったら呪いが解けた瞬間分かったりするものじゃないのかな?
「このデュラハン、ずっと私達を待ち続けていたの? あっさり呪い解かれちゃったとも知らずに? プークスクス! ちょーうけるんですけど!」
アクアさんはここぞばかりに挑発を始める。あんまり挑発とかしてほしくないのだけど……
「俺がその気になれば、この街の冒険者を一人残らず斬り捨てて、街の住人を皆殺しにすることだって出来るのだ。いつまでも見逃してもらえると思うなよ」
アクアさんの挑発に怒りに震えるデュラハン。流石に限界が近づいてるみたいだし、僕はそっと勇者に変身した。
「見逃してあげる理由がないのはこっちの方よ!ターンアンデット!」
「この俺を筆頭に、このアンデット軍団には魔王様の加護により神聖魔法に対して強い抵抗をぎゃあああああ!!」
アクアさんの浄化魔法に包み込まれながら、もがき苦しむデュラハン。結構効いてるみたいだけど、アクアは効いていないと思っていた。
さっきデュラハンが魔王の加護で耐性が出来ているって言っていた。だとしたら一発で倒せないのも頷ける。
更にアクアはセイクリッド・ターンアンデットを放ち、デュラハンが更に苦しみだした。そしてデュラハンは、黒い煙を上げながらも右腕を上げ……、
「街の連中を皆殺しにせよ」
そう言った瞬間、デュラハンの周りに骸骨の剣士が現れた。あれはアンデットナイトと呼ばれる種族。結構強いらしい。
普通だったら先にこのアンデットナイトから倒すべきなのだけど、僕は風先輩の大剣を取り出し、デュラハンに切りかかる。デュラハンはというと予想していたのか、僕の斬撃を受け止めていた。
「いきなり俺を狙うか!!」
「こう見えて、雑魚は後回しにする方なんだ。先にボスクラスを倒してから片付ければいい話だしな!!」
僕は後ろへ下がり、大剣を構えた。
「面白いやつだ!!俺の名は魔王軍幹部ベルディア!!小僧、貴様の名を聞こうか!!」
「………教える気はない。僕はお前の思っている以上に弱いからな。名前を覚えてもらって、僕がお前に負けたらがっかりしちゃうだろ。それだったらお前が負けを認めた時に教えてやるよ!」
「……本当に面白い奴だ!!小僧!!」
僕とベルディアは同時に動き出すのであった。
どうしてウミさんは無茶をするのか分からないけど、きっと街のために前に出て戦っているのだろうか?
私はそう思いながら、襲い来るアンデットナイトに備えたけど、何故かアンデットナイトはアクア先輩を追いかけていた。
そういえばアクア先輩……というよりかはアクシズ教ってアンデットに好かれやすかったような……
あっちはきっと何とかなると思い、私はウミさんの所へ向かっていた。
心配だって言うこともあるけど、ウミさんの精霊の力は不完全に近いもの。下手をすれば死んでしまうこともある。
そんな事にならないように、私は近くでウミさんの事を見守り、助けなくてはいけない
「ハアアア!!」
「フン!!」
ベルディアの剣とぶつかり合うのはこれで何度目になるかわからないけど、かなり重い一撃だ。さっきから押し負けてる
「どうやらその武器は使い慣れてないみたいだな!武器に振り回されていたら俺に勝つことなどできないぞ!!」
ベルディアの剣撃を大剣で受け止めるが、あまりの衝撃に僕は吹き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。
「確かにお前は弱い。だが、鍛えているみたいだな!!何のためにお前をそこまでさせる!!」
僕が弱い?確かにそうかもしれない。だけど、僕がずっと鍛え続けたのは……
「僕はある少女たちのサポートに回っていた。傷ついた身体を癒やしたり、辛く壊れそうになった心を支えたり……そんなことしか出来ないなんて悔しいじゃないか!」
僕は立ち上がるが、体中痛い。でも、諦めるつもりはなかった。
「だからこそちょっとした運命の悪戯で、僕も彼女たちの隣に立ち、一緒に戦うことを夢に描きながら、身体を鍛え続けた」
そうすれば少しでも彼女たちの、大好きな人のために戦える勇者になれたんじゃなかって………
僕は夏凛の刀を取り出し、構えた。
「そして今の僕は彼女たちと同じ勇者になった。勇者っていうのは、勇気ある者じゃない!!諦めず戦う奴の事を言うって知っていたか?」
「本当に面白い奴だ!!」
ベルディアの剣撃がもう一度襲いかかる。僕は二本の刀で受け止めようとするが、その間にダクネスさんが割って入り、ベルディアの攻撃を受け止めた。
「悪いがこれ以上は見ていられない!クルセイダーとして仲間の盾に喜んでなる!」
「ダクネスさん……」
いつの間にアンデットナイトを倒したのだろうか他の冒険者も集まってきていた。ダクネスさんは申し訳なさそうにしていた。
「ウミ、邪魔をして悪いが……」
「いや、僕は一人じゃ何も出来ないから、助かるよ」
「そうか……ならば、私が盾になっている!その間に攻撃を仕掛け続け……」
「クリエイトウォーター!」
カズマさんが魔法を発動する声が聞こえ、僕とダクネスさんが水浸しになる。ベルディアは大きく飛びのき、濡れてなかった。今のは……
「おい、カズマ、不意打ちで突然こんな仕打ちとは嫌いではないが、時と場合を選んでくれ」
「ち、違う、これは、こうするんだよっ!フリーズ!」
ベルディアの足元の水たまりを凍らせ、動きを止めた。
「スティール!」
スティール?そうかベルディアの武器を奪えばまだ何とかなるはず、カズマさんは機転が利く。だけど、ベルディアの剣はその手に握られたままだった
「……悪くは無い手だったな。レベル差と言うヤツだ。もう少しお前との力の差が無ければ危なかったかもしれんが……」
でも、さっきの動きを見て僕は理解した。
「カズマさん!!もう一度だ!ベルディアは水に弱い!!」
「水に?そうか!!」
カズマさんは冒険者全員にクリエイトウォーターをベルディアにかけるように支持を出した。
ベルディアは襲いかかる水を避け続けていた。やっぱり弱点だったのか
「ねえ、いったい何の騒ぎなの?カズマ達ったら魔王の幹部と何を水遊びしているの?バカなの?」
「あいつは水が弱点なんだよ!なんちゃって女神でも水のひとつくらい出せるだろっ!」
アクアさんがそんなことを言っていたけど、未だに理解できてないのかな?
「あ、あ、あんた、そろそろ罰のひとつでも当てるわよ無礼者!洪水クラスの水だって出せますから!謝って!水の女神をなんちゃって女神って言ったこと、ちゃんと謝って!」
「あとでいくらでも謝ってやるから、とっとと出しやがれよこの駄女神が!」
「わああああーっ!今、駄女神って言った!あんた見てなさいよ、女神の本気を見せてやるから!」
アクアさんは泣きながら、杖を取り出した。僕は樹の武器に代え始め、
「ひっく…………この世にある我が眷属よ…………水の女神、アクアが命ず、我が求め、我が願いに答え、その力を世界に示せ……!」
ベルディアが逃げようとするけど、それをダクネスさんと僕がワイヤーで動きを封じた。
「セイクリッド・クリエイト・ウォーター!」
洪水クラスの水がすべてを飲み込んでいった。流石に街に被害とか出てないだろうか心配だ。
水が引くとベルディアは目に見えるくらい弱っていた。これなら……
「カズマさん!!」
「あぁ、スティ……」
それに最初に気がついたのは水浸しになりながらも戦いの様子を見ていたクリスさんだった。
「な、何?この数!?」
アンデットナイトが他にいないか敵感知のスキルで調べていると、上の方に大量に敵の存在を感知していた。いや、感知してしまった。
そしてその敵が何なのかすぐに理解したのは、ひなたさんだった。
「この感じ!?若葉ちゃん!?みんな!?奴らが来る!?」
ひなたさんの職業『巫女』は勇者限定で支援魔法が使えるのと、ある程度の未来を予知できる事。そして特定の敵に対しての感知能力。
その特定の敵とは………
突然空が割れ、ソレが現れるのであった。