この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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今回と次回で残り二話となります。


126 ドタバタな結婚式

ついに結婚式当日。みんなのお陰で式場の準備も終え、僕らにとって立派な式場が出来た。

僕はタキシード姿で控室で時間になるまで待っていた。流石にこれは緊張する……

 

「ウミ、大丈夫か?」

 

「カズマさん……」

 

「何ていうか、お前も緊張とかするんだな」

 

「そりゃするよ……大事なものだしな……」

 

「そっか……」

 

カズマさんは部屋のソファーに座り込み、じっと僕の事を見つめていた。どうかしたのかな?

 

「何だかんだで長い付き合いだよな。俺たちって……」

 

「うん、カズマさんとアクアさんがこの世界に来てすぐに会ったからね」

 

「カエル退治の時だもんな。出会ったのって」

 

「うん、あの時はアクアさんがカエルに飲まれていて大変だったよね」

 

同じクエストを受けた僕は、カエルに襲われている二人を見て助けたんだっけ。それからの付き合いだもんな……

 

「まさかあれからベルディア、バーテックス、デストロイヤーとかあんまり関わりたくないものと関わるようになっちまったもんな……」

 

「でもカズマさんは何だかんだ言って何とかしてくれたもんね」

 

僕らはしばらく黙り込むとカズマさんは黙ったまま手を僕の方に差し伸べてきた。

 

「結婚しても一緒にいるんだよな。お前は」

 

「うん、一緒にいるよ」

 

「だよな」

 

僕らは握手を交わした。もしかしてカズマさんなりの祝福なのかな?

 

「………所で結婚してもあの店には付き合ってくれるよな」

 

「………友奈にバレなければいつでも」

 

 

 

 

 

カズマさんが嬉しそうにしながら出ていくと同時に今度はダクネスさんが訪ねてきた。

 

「ウミ、カズマと何か話していたのか?」

 

「うん、ちょっとね……ダクネスさんはどうかしたの?」

 

「あぁ、いざ仲間が結婚するって聞いて、個人的に祝福の言葉を伝えようと思ってな」

 

カズマさんと似たようなことをしに来たのか。この人は……

 

「私の場合は政略結婚だったからな……みんな私を助けるために色々と………ふふ」

 

どうしたんだろう?もしかしてあの時カズマさんに言われたこと思い出してるのか?でもこんな所でやったらちょっと不気味だからやめてほしいな

 

「何だその目は……そんな目で見られると……」

 

「ダクネスさん、お願いだからこういった場でそういうのは……」

 

「おっと済まなかった。ウミ、ユウナの事を幸せにしてやるんだぞ」

 

「当たり前だよ」

 

僕は笑顔でそう答えるとダクネスさんは満足そうに部屋から出ていった。しばらくしてから今度はウィズさんとバニルさんが入ってきた。

 

「ウミさん、結婚おめでとうございます。何だか羨ましいですね」

 

「羨ましい?ウィズさんくらいだったらいつでも……」

 

「ふははははは、小僧よ。この行き遅れ店主は長い年月リッチーをやっているが相手がいないものだ。このまま人間としてもリッチーとしても行き遅れるであろうな」

 

バニルさんの言葉を聞いて、部屋の隅で膝を抱え込みながらすすり泣くウィズさん。あの、可哀想だからやめてほしいのだけど……

 

「悪魔である吾輩が祝福の言葉をかけることはないが、貴様にいつか訪れるであろう選択肢を与えようではないか」

 

「選択肢?」

 

「違う世界にいる同じ人間をお前は救うか?」

 

違う世界の同じ人間を救う?どういう事だ?誰のことを言ってるんだ?

 

「貴様は違う世界だから関わらないほうがいいか悩むであろう。さて貴様はどうする?」

 

よく分からないけど、その人間が友奈に当てはめると……

 

「決まってるよ。僕は救うよ。違う世界でも……必ず救う」

 

「ふははははは、それが正しいかどうかはいつか未来で知るがいい」

 

本当に祝福の言葉も言わずにウィズさんを引きずりながら出ていったあの人……それにしてもいつか未来……何が起きるんだろうな………

 

「お兄様、よろしいですか?」

 

気がつくとアイリスとクレアさん、レインさんの三人は訪ねてきた。何だか色々と来るな……

 

「ウミ殿。この度はご結婚おめでとうございます」

 

「クレアさん、ありがとうございます。というか王女様を結婚式に呼ぶなんて、無理しすぎですよね」

 

「本当ですよ。本来ならこのようなことは……」

 

「まぁいいじゃないですか。この会場はある意味安全な場所だったりするんですから」

 

「お兄様。あのお二人の世話は任せてくださいね。いつかの未来で会えるんですから」

 

世話って、一国の王女様に頼むってどういう考えをしてるんだろうな。未来の僕って……

 

「ほら、アイリス様、そろそろ」

 

「もうクレアは……それではお兄様。また後で」

 

アイリス達はそう言って部屋から出ていった。それにしてもちょっと気になるのが色んな人が尋ねてくるのにあの二人が来ない。どうしたんだろう?

 

「海くん。そろそろ時間ですよ」

 

「お姉ちゃんに若葉さん」

 

「花嫁を待たせるな。早く言ってやれ」

 

「うん」

 

僕は二人に連れられ、友奈がいる控室に向かった。部屋に入るとそこには純白のドレスを着た友奈の姿があった。

 

「えっと……海くん。似合うかな?」

 

「……あぁ似合うよ。友奈」

 

「えへへ、ありがとう」

 

友奈は眩しいくらいの笑顔でそう言うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして結婚式が始まった。外に集まった招待客は僕がこれまでお世話になった人たちを呼んだけど、やっぱりあの二人の姿がない。

 

「めぐみんとゆんゆんどうしたんだろう?」

 

僕はそう呟く中、神父役のアクアさんが口上を始めた。

 

「ウエサトウミ。貴方はユウキユウナを妻とし 神の導きによって夫婦になろうとしています、汝 健康の時も病めるときも 富ときも貧しき時も、幸福の時も災いにあうときも、可能な時も困難なときも、これを愛し敬い慰め遣えて共に助け合い 永久に節操を守ることを誓いますか?」

 

「誓います」

 

「ユウキユウナ、貴方は?」

 

「誓います」

 

「二人の誓いは女神アクアと女神エリスが確かに聞きました」

 

突然アクアさんの隣にエリスさんが姿を現した。集まっていた人たちも驚いているけど、まさかこれも演出なのかな?

 

「ウミさん、女神エリスとしてあなた方の祝福の儀を見届けさせてください」

 

エリスさん……本当に有難うございます。

 

「そして二人のために祝福の光を!!」

 

どこか遠くの方から聞き慣れた爆音が鳴り響いた。あれってもしかして爆裂魔法?でも二発聞こえたのは……もしかしてウォルバクさん?

 

「あんた達二人には女神も邪神も関係ないみたいね。まぁあとは悪魔もだけど」

 

アクアさんはいつもの口調でそう告げた。何だか本当に僕らは……

 

「友奈、絶対に幸せにするから」

 

「うん、幸せにしてね」

 

「それでは誓いのキスを!!」

 

アクアさんが高らかに宣言し、会場中キスコールが鳴り響いた。みんな、これ結婚式ってわかってるのかな?

 

友奈は恥ずかしそうにしながらも目を閉じていた。僕はゆっくりと友奈にキスをしようと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

したのだったが、何か慌てたセナさんがやってきた。

 

「冒険者全員ここにいたんですか。結婚式の途中申し訳ありません。先程の爆裂魔法の影響でジャイアントトードが冬眠から目覚めて……」

 

「おいっまさかと思うけどこんな大事な時に退治しにいけっていうのか?」

 

「本当に申し訳ないです」

 

何だかただでは終わらないな。この結婚式は……カズマさんが怒るのも無理もない。

すると友奈が直ぐ様駆けていこうとしていた。

 

「友奈?」

 

「海くん、行こう。困った人がいるんだったら見過ごせないよね」

 

「はぁ、そうだな。行こう。友奈」

 

「ちょ、ウミ、たくっ、しょうがねぇな!!」

 

何だかんだ僕らはジャイアントトード退治に向かうのであった。




次回最終回です。


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