この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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122 桔梗vs桔梗

桔梗が桔梗さんに勝負を申し込んだ次の日、僕は見届人として街の外に来ていた。

 

「全く……何で自分自身と戦わないといけないんだよ」

 

「桔梗さん、そう言わないでくださいよ。桔梗のやつも色々と思うところがあるんですよ」

 

「そうだけど……」

 

僕と桔梗さんがそんなことを話していると、友奈と東郷の二人を引き連れて桔梗がやってきた。友奈と東郷は僕の所に行くと

 

「お待たせ。海くん」

 

「あぁ、というか東郷も来たんだな」

 

「まぁ賞品だから……」

 

何というか人をモノ扱いするというのはちょっと嫌だけど、東郷もよくこの話を引き受けたな。

 

「それでルールは?」

 

桔梗さんは手に持った模擬鎌を構えながら、桔梗に聞くと桔梗も模擬刀を構えた。

 

「相手が動けなくなるまで、もしくは相手の武器を奪ったら勝ちで……」

 

「降参とかはいいのか?」

 

「必要ない」

 

「そうか……」

 

二人は互いににらみあっていた。それにしても相手の武器を奪うか……

 

「それじゃ二人共準備万端みたいだし、始めっ!!」

 

僕の掛け声とともに桔梗が直ぐ様駆け出し、桔梗さんに向かって模擬刀を思いっきり振った。

だが、桔梗さんは模擬鎌で桔梗の攻撃を受け止めた。

 

「思いっきりはいいみたいだけど………ハァ!!」

 

鋭い蹴りを喰らった桔梗はそのまま地面に倒れ込み、蹴られた箇所を押さえていた。

 

「かはっ」

 

「攻撃を喰らった瞬間、しっかり受け身を取ったほうがいいぞ。余計なダメージを喰らわないで済む」

 

桔梗さんは立ち上がるのを待っていた。何だか決闘というより指導みたいな感じだな……

 

「まだまだ………ハアアア!!」

 

立ち上がった桔梗が模擬刀での攻撃をするが、また桔梗さんに防がれる。だが、それと同時に桔梗は足払いをしようとするが、桔梗さんはジャンプして回避していた。

 

「そう、攻撃は一発だけで済ませんな。同時か一撃目の直ぐ様に二撃目を食らわせることを覚えろ」

 

桔梗さんは桔梗の足を払い、転ばせたと同時に首筋に模擬鎌を当てた。

 

「それと相手を倒すには攻撃を食らわせるだけじゃなく、相手を脅してでも勝つ。まだやるか」

 

殺気の篭った目で桔梗を見下ろしていた。何というか怖いな桔梗さん……僕には真似出来ないよ。

 

「桔梗くん、大丈夫かな?」

 

「止めなくていいの?海くん……」

 

「東郷、あれは男同士の戦いだから。止めるなんて無粋な真似はできないよ。だけど今回の勝利条件を聞く限り……カズマさんあたりが関わってるだろ」

 

「まぁそうだけど……」

 

「昨日と今日の間にレベルアップしてたからね」

 

どうやら友奈もそれに付き合っていたみたいだな。それはそうと嫌な気配を感じているのは僕だけか?

 

地面に倒れ込んでいる桔梗は未だに立ち上がろうとしていなかった。もう諦めているのかと思い、桔梗さんは模擬鎌を首筋にあてるのをやめた瞬間だった。

 

「今だ!!スティ………」

 

桔梗が模擬鎌に手を伸ばした瞬間、突然空から何かが降りてきた。そいつは多数のモンスターの体の一部が混ざった巨大な怪物だった。

 

「こんな時に!!」

 

桔梗さんは桔梗を背負い、直ぐ様そいつから距離を取った。まさかと思うけどこいつがキメラ・バーテックスなのか?

 

「桔梗さん」

 

「あぁ、こいつがどうやら例のヤツみたいだな。桔梗、お前は屋敷に戻ってカズマたちを呼んできてくれないか」

 

「は、はい」

 

桔梗は模擬刀と模擬鎌を持ちながら直ぐ様街へと戻っていった。僕、桔梗さん、友奈、東郷の四人はキメラの前に並び立ち、勇者に変身した。

 

「海、こいつの体に混ざったやつってモンスターの一部だよな」

 

「そうですね。見覚えのあるものもあります。それに嫌な予感が……」

 

キメラは僕らに向かって口から炎の息を吐いた。これってドラゴンとかのブレスってやつだよな。東郷の狙撃でもキメラの体は撃ち抜けず、友奈の拳もキメラの皮膚が硬すぎて攻撃が効かないみたいだ。

 

「いたた……どうしよう。攻撃が効かないみたい」

 

「狙撃でも貫けない。モンスターのいいところだけを吸収したみたいね」

 

「とはいえ、奴の顔を見ろ。星屑と同じ顔だ。あそこだけなら勇者の力で何とかできないか?」

 

「そうさせないためにブレスで僕らを近づけさせないみたいですよ。おまけに背中の羽根とかで防御できるし……桔梗さんの天神刀は?」

 

「あれなら何とか出来るけど、避けられた場合のことを考えるとな……」

 

本当に厄介なやつだな。めぐみんの爆裂魔法なら簡単に………ん?爆裂魔法?

僕はスキル一覧を確認すると項目が二つ増えていた。僕にも使えるみたいだな。しかも何となくだけど、同時使用できるみたいだし……それだったら

 

「桔梗さん、友奈、東郷。時間稼ぎを頼めるか?」

 

「うん、任せて」

 

「友奈ちゃん、返事早いけど、まだ海くん、何も言ってないよ」

 

「まぁ友奈らしくっていいんじゃないのか?それで海、何とか出来るんだな」

 

「はい、体に掛かる負担は散華に近いけど……やります」

 

「そうか……なら!!」

 

桔梗さんは大鎌を構えた瞬間、黒い影になってキメラを切り刻んでいった。だけどキメラに対して致命傷にはなっていないみたいだ。

 

時間を稼いでる間に僕はゆっくりと体中の力を開放した。

 

「切り札発動!!酒呑童子!!」

 

炎の柱が上がったとともに額には鬼の角を、両手には真っ赤な鬼の手のような鉄甲が装備された。これが酒呑童子………若葉さんが使っている大天狗に並ぶ最強の切り札……

切り札と満開の同時使用した時とは体への負担が小さいけど、それでも負担は大きい。

 

「一気に決めるか。借りるぞ友海……必殺!!」

 

僕は拳を構えた瞬間、キメラは危険を察知したのか翼を大きく広げ、逃げ出そうとしていた。だけどそれと同時にどこからともなく現れたロープによってキメラの体が縛られた。

 

「またせたなウミ!!」

 

どうやらカズマさんたちが間に合ったみたいだな。これなら……

 

「爆裂!!勇者パアアアアアアアアアンチ!!」

 

眩い閃光とともに放たれた拳がキメラに当たった瞬間、キメラの体が消えるのであったが、頭部だった星屑だけが残っていた。

 

「脱出したみたいね」

 

「見て、逃げるみたいだよ」

 

「やらせるか!!」

 

逃げようとする星屑を黒い影になって、切り裂いた桔梗さん。これで全部終わりか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は友奈に支えられながら、桔梗さんと桔梗の様子を見ていた。

 

「とんだ邪魔が入ったけど、どうする?続けるか?」

 

「続ける?どうしてですか?」

 

「………まぁしょうがないよな。あんまり落ち込むなよ」

 

「落ち込む?何でですか?勝ったのは僕ですよ」

 

「はっ?」

 

桔梗の言葉を聞いて驚きを隠せないでいる桔梗さん。すると桔梗は僕の所に駆け寄り、

 

「敵の武器を奪ったら勝ちでしたよね」

 

「あぁ、そうだよ」

 

「あの時、あなたは僕に武器を渡しましたよね。それってつまり……」

 

「………はぁ」

 

何というか桔梗の奴、大物になるかもしれないな。桔梗さんも文句はないみたいだし……

 

「そうだな……お前の勝ちだよ」

 

「はい」

 

笑顔で返事をする桔梗。すると東郷の所へと行くと……

 

「東郷さん……」

 

「えっと、桔梗くん……」

 

「僕、別世界の自分と戦ってわかったんです。力も心の強さもまだまだです。だから……僕が僕を越えられるように強くなったら……」

 

「………そうね。その時が来たらその言葉の続き聞かせてね」

 

「はい」

 

こうしてキメラとの戦いは終わりを告げるのであった。

 

 

 




何だかグダグダですみません。次回でキメラ編終了です

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