この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

118 / 145
118 バニルの進言

桔梗が来てから数日が経ったけど、未だにクリスさんが戻ってこないのが気になっていた。呼び出して話を聞くべきかどうか……

 

「どうしたんだ?ウミ」

 

「カズマさん……ちょっとクリスさんのことが気になって……」

 

「クリスの事か。多分だけど大丈夫じゃないのか?何を調べてるか知らないけど、何かあったらすぐにお前に知らせに来るって」

 

そうだといいのだけど、何だか嫌な予感がしている。クリスさんが帰ってこないから?それともそれよりももっとやばいことが起き始めようとしてるのか?

 

「そういえば桔梗は?」

 

「ん?アイツなら東郷と一緒にギルドに行ったぞ」

 

「ギルドに?」

 

「何だか冒険者登録しに行くって言ってたな」

 

まぁこの世界のことを知るためには良いことかもしれないし、桔梗からしてみれば東郷と一緒で嬉しそうだしな……

 

「ウミ、暇だったら今からウィズのところに行くか?アクアが何かしらしでかしてそうでな……」

 

「そうですね」

 

僕らはウィズさんのお店へと向かうのであった。

 

お店の中に入ると何故かウィズさんは焼け焦げ、アクアさんとバニルさんがまた喧嘩をしていた。

 

「貴様らはどうしてこう邪魔ばかりをするのだ!!」

 

「邪魔なんかしてないわよ。私的に画期的にお金を稼ぐ方法を考えたのよ!!」

 

「そのせいでまた大赤字だ!!」

 

今度は何が原因で喧嘩してるんだ?僕とカズマさんはため息をつきながら、二人の喧嘩を止めに入った。

 

「何かあったの?」

 

「アクア、お前、また何かしでかしたのか?」

 

「今回はしでかしてないわよ!ただ赤字で困ってるから、画期的に赤字を黒字にする方法をやっただけよ」

 

画期的にお金を稼ぐ方法って何だろう?何だかさっきとは別に嫌な予感がしてきた。

 

「いい?要はお金が増やすことができればいいのよ。それだったらギャンブルで………」

 

アクアさんが言いかけた瞬間、カズマさんは思いっきりチョップを喰らわした。そして殺気の篭った目でアクアさんを睨みつけた。

 

「お前………まさかと思うけどウィズを連れてカジノに行ったのか?隣国まで……」

 

「そうよ。あれはルーレットで大穴を狙って……でも外しちゃった」

 

うん、これはアクアさんが悪い。カジノでお金を増やすというのはいい方法かもしれないけど……

 

「アクアさん、連れて行ったメンバーは?」

 

「私とウィズの二人よ」

 

「………バニルさんを連れていけばいいのに……バニルさん、失ったお金分、僕がアイテムを買うので……」

 

「まぁ、失った分を取り戻してくれるなら良いが、そこのプロポーズ(笑)。お礼として良いことを教えてやる」

 

「いや、プロポーズ(笑)って何?」

 

「プロポーズをしたのにもかかわらず、未だに返事がもらえてない小僧にはプロポーズ(笑)で十分だ」

 

この人は本当に人のことを……今に始まったことじゃないけど、ちょっと頭にくるな

 

「貴様らはすべてが終わったと思っているというならば、それは間違いだ」

 

「間違い?いや、確かにまだ大元の目的の魔王を倒してないから終わったなんて……」

 

「まぁ俺としてはもうのんびり暮らしたいんだけど……」

 

カズマさん的にはもうお金も一生暮らせるくらいあるから良いけど、やっぱり最初の目的である魔王討伐をした方がいいんじゃないのかな?アクアさんも帰れないだろうし……

 

「魔王のことではない。天の使いのことだ」

 

「バーテックス?」

 

「おいおい、そいつらならあの戦いでほとんど倒したし、しばらくは出てこないんじゃないのか?おまけにこの世界の結界やらは造反神がどうにかしてるんだろう」

 

「確かに天の使いが強化された結界を越えて来るのは無理だろう。それにあの戦いで奴らは大幅に戦力を失ったのだ。再度進行するとしたら長い年月が過ぎたころだろう」

 

それは前に聞かされた。だから暫くの間は平和だからとも言われた覚えがある。だったら現状バーテックスとの戦いは終わってるんじゃ………

 

「だが、もしバーテックスの残党がいたとしたら?」

 

「残党って……おいおい、ウミやワカバたちがあの時に全滅させたんじゃないのか?おまけにあの後街中の冒険者たちと協力して残党がいないか探したんだぞ」

 

カズマさんの言うとおりだ。僕も目覚めた後にその話を聞かされ、自分でも残党がいないか調べたんだ。残党なんているわけ……

 

「ふはははは、残党と言っても、あの戦いのではない。忘れたのか?あの戦いの前に一度だけあったであろう」

 

あの戦いの後……まさか!?

 

「最初にバーテックスが大規模進行してきた時の奴が……生き残っているというのか?」

 

「おいおい、それってつまりやばいんじゃないのか?今すぐギルドに連絡しようぜ。おい、アクアは何頭抱えてるんだよ!?」

 

「何よ!?カズマが叩いたんでしょ!?というかそんなに急がなくても、出てきたらウミの持ってる端末で分かるんじゃないの?」

 

「いや、そうはいうけど……ウミ、出てきたりしてるか?」

 

僕は端末を取り出し、調べようとした瞬間、端末から警戒の音が鳴り響いた。この出現位置って……

 

「まずい、街の外にもう……それに東郷が……」

 

僕らは急いでウィズさんのお店から出ていくのであった。こんなにも早く奴らが出てくるなんて……このままじゃ……

 

 

 

 

 

「大丈夫でしょうか?」

 

「まぁ大丈夫だろう。奴らが着いた時にはもう終わっているであろうしな」

 

「終わってるって、まさか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この番外編の話では、原作10巻の話は終わっていることになっています。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。