116 その後の世界
あの劇から一週間が過ぎた。僕は友奈にプロポーズしたのだが、未だに返事がもらえてない。
「はぁ~」
「いつまで落ち込んでるんですか?未来のことは分かってるんですから、別に落ち込む必要はないですよ」
めぐみんの日課に付き添う僕だけど、めぐみんはいつまでも落ち込んでいる僕に対して、呆れていた。
「いや、そうは言うけど……」
「というかユウナにも少しは考える時間をあげてください」
いや、そうは言うけど……僕としては不安でしょうがないし……
「あんまり急かしているとユミに怒られますよ」
流石に僕を怒りに未来から来るわけ無いだろうとは思うけど、何だか本当に来そうで不安だ。
めぐみんは僕に呆れつつも、日課の爆裂魔法を撃ち終え、僕に背負われていた。
「そういえばもうバーテックスは攻めてくるようなことはないのですよね」
「うん、あの戦いでほとんど倒しちゃったし、造反神も僕らのことを認めてくれたから、もう魔王軍と協力するようなこともないだろうし……」
「それはそれで安心なのでしょうか?そういえばウミはどうして私の日課にここ最近付き合ってくれるんですか?」
「別に何となくだけど……」
「そうは言いますが、何だか私が出かける度に直ぐ様ついて行こうとしているので……」
ちょっと付き添いすぎたかな?僕としてはこの日課についていく理由はちょっとした恩返しが目的だったりする
「この間の戦いで、めぐみんが最後の最後にとどめを刺してくれただろう。その御礼を兼ねて……」
「ウミ、あの時のトドメは私としてはウォルバクさんの一件での恩返しだったので、気になさらないでください」
背負われているめぐみんが何故だか微笑んでいる気がするのは気のせいだろうか?流石に確認する気にはなれないし……
屋敷に戻ると広間で友奈がうなだれて、その隣には東郷とカズマさんがいた。ダクネスさんはその三人の様子を見ており、アクアさんと銀の二人は暖炉で温まっていた。
「どうしたんだ?友奈」
「あ、海くん……今、東郷さんとカズマさんに勉強を教えてもらってるんだけど……」
「友奈ちゃんがこっちにいる間、皆との勉強が遅れたらまずいだろうって、大赦から言われてね。こうして教えに来たの」
「勉強だったら僕が……」
「海くん、何だかんだ言われて友奈ちゃんに甘いから……」
確かにそう言われてみればそうだけど、いやでも、東郷も何だかんだ甘いんじゃ……あっ、でもこういう時は厳しいから適任だろうけど……
「トウゴウはいかにも勉強できそうなのはわかりますが、カズマは勉強できそうに見えないんですけど……」
「おい、めぐみん。俺のことを馬鹿にしすぎじゃないか?俺だってこう見えてそれなりに勉強できるんだぞ。まぁ途中引きこもりになったけど……」
「めぐみん。カズマの言っていることは本当だぞ。ユウナが持っている本を見ても、まず何が書かれているか私には分からないが、カズマはスラスラと答えたぞ」
まぁ、ダクネスさんが文字を読めないのはしょうがない。僕らのいた世界の文字って、こっちじゃちょっとした古代文字になってるし……でも、本当にカズマさんが勉強できるのは意外だけど、これまで色んな道具を作ってきた事を考えると、頭がいいと言われて納得できる。
「そういえば東郷。僕が頼んでおいたのは?」
「あるわよ。はい、頼まれていた参考書」
僕は東郷から受け取った紙袋の中身を確認した。確かに頼んでおいた参考書だ。こっちに来てから勉強することはないだろうと思ってたけど、このままじゃ駄目だと思い、東郷に頼んでおいたのだ。
「お前も真面目だよな……こっちに来てまで勉強だなんて……」
「やっておいて損はないかなって……それにそこで暖炉に温まっている銀にも必要だと思うし……」
「おい、私は別に勉強するなんて一言も……」
「銀。友奈ちゃんの勉強が終わったら次は銀の番よ」
東郷はどこからともなく紐を取り出し、笑顔でそう言うのであった。銀は逃げられないと思い、うつむくのであった。
「あぁ、そういえば海くん」
「何だ?」
「そのっちから伝言頼まれてたんだけど、近いうちに大赦の子を連れてこっちに来るって、確か名前は……神宮……」
神宮ってもしかして……
「神宮桔梗か?何でまたあの子がこっちに来るんだよ。というか何しに……」
「大赦としてはこれから先の事を考えて、こちら側のことを知るべきだと話しているみたい。その先遣隊の第一号がその子みたいなの」
これから先のことを考えてか……確かに必要かもしれないけど……
僕はアクアさんの事を見た。アクアさんは退屈そうにしながら東郷の持ってきたぼた餅を食べていた。
「あんまり簡単に世界を超えてほしくはないけど、まぁウミたちの世界のことを考えると、私やエリスと交流するっていうのも悪くないわね」
何だか買収されたのかな?
短めですみません。
最後ら辺に出てきた桔梗は海たちの世界の桔梗なので、12歳位になっています。