この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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今回はカズマたちSIDEの戦いメインとなります


112 勇者たちの思い

若葉SIDE

 

「ハアアアアアア!!」

 

襲いかかる星屑を切り裂きながら、私は門から溢れてくる星屑を見つめた。

 

「数が多いな。だが……」

 

更に迫ってくる敵を倒そうとした瞬間、周りにいた星屑が一瞬の内に切り裂かれ、私の隣に千景が立っていた。

 

「油断大敵よ」

 

「千景……助かった」

 

「………戦ってるのに、なんでそんなに嬉しそうなの?もしかして疲れておかしくなったのなら、後ろに下がって休憩していたら?」

 

嬉しそう?私が?千景の言うとおりかもしれないな。ただおかしくなったわけじゃない

 

「嬉しいさ。こうやって未来の勇者たちのために戦えるのだから……」

 

「未来の勇者のために?」

 

「あぁ、私は未来の勇者たちのために出来たことと言ったら、勇者が挫けそうになった時のためにメッセージを残したくらいだった。だけど、今こうして海や友奈たち、未来の勇者たちのために戦えるのがすごく嬉しい」

 

私の言葉を聞いて、千景は微笑んでいた。

 

「貴方らしいわね。でも、私もあの子達を助けるためだったら……」

 

千景は迫りくる中型の鳥バーテックスを切り裂き、大鎌を構えた。

 

「邪魔をする敵をすべて鏖殺するわ」

 

「そうか……だったら私も負けられないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

杏SIDE

 

遠距離から敵の数を減らしていくけど、すぐに敵は増えていく。この作戦を考えたカズマさんには悪いけど、結構無謀に近い気がする

 

「杏!?よそ見するな!!」

 

いつの間にか背後に回っていた星屑をタマっち先輩が倒していた。

 

「どうしたんだ?今更怖くなったのか?」

 

「ううん、怖くはないよ。ただ無謀な作戦かなって思って……」

 

「無謀?何処がだ?」

 

「敵の数は今まで見たことのない数。そんな数を相手にするのが……」

 

「何を言ってるんだよ。無謀でも何でも、あの無茶ばかりする未来の勇者を助けるって決めたんだからさ。やるしかないさ」

 

「タマっち先輩……そうね。無謀でも迫りくる敵を全部撃ち落とす」

 

「そして杏が襲われそうになったら、私が助ける!!」

 

タマっち先輩は本当に格好良いな……だからこそこの無謀な戦いでも挫けずに戦えられる。

 

「タマっち先輩、後ろ任せたよ」

 

「おう、タマに任せタマえ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈SIDE

 

「勇者パンチ!!勇者キック!!」

 

星屑を殴り倒していくと歌野ちゃんと合流した。歌野ちゃんは鞭の鋭い一撃で敵を一気に倒していた。

 

「やっほー、そっちは大丈夫そうだね」

 

「うん、歌野ちゃんも」

 

「この数、相手も全精力を出してきた感じだね。流石に皆が手を貸してくれているからって言っても、ベリーハードだよ」

 

「でも、敵を全部倒せば、結城ちゃんたちをたすけられるんだよ。それだったら……」

 

「うん、そのためだったら休んでる暇はないもんね」

 

「この戦いが終わったら、きっと街中お祭り騒ぎになるよ。その時は、蕎麦を食べさせてね。歌野ちゃん」

 

「高嶋ちゃんもうどんを食べさせてね」

 

私と歌野さんは互いに笑いあい、迫り来る敵を倒していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪花SIDE

 

やれやれ、ここまで大きな戦いになるとは……

 

「全く……アクアが訪ねてきたときに予想できていればよかったわ」

 

「……どうしたんだ?」

 

「棗。無事みたいね」

 

「あぁ、雪花は?」

 

「特に問題はないけど、何というかこの世界の住人って、どうしてこうお節介が多いのかしらね?」

 

「………多分だが、あの男……海とカズマの二人の影響だろう。あの二人がこの世界に来てから、みんな変わったのだろうな。雪花……お前は?」

 

「私?まぁ、今までは敵が出てきたら戦うって感じだったし、こうやって誰かのために戦うっていうことはしてこなかったわね」

 

私は槍を投げつけ、星屑を倒していき、棗は殴打して敵を倒していく。昔だったらこういう戦いは避けることを考えていたけど、今となったら……

 

「まぁ皆があの子のために戦っているなら、私達もね」

 

「あぁ、行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひなたSIDE

 

ダクネスさんに守られながら、水都さんと共に巫女のスキルを発動させるのに集中していた。流石にこの場にいる全員にスキルを使うとなるとかなり大変だけど……

 

「みんな……頑張ってますね」

 

「うん、もしかしたら誰かは願っていたのかもしれないね」

 

「願う?」

 

「勇者たちだけじゃなくって、みんなが一丸となって戦う……そんな未来をきっと誰かが願っていたんだよ」

 

水都さんの言葉を聞いて、もしかしたらそれを願った人物が誰なのか考え込んでいた。すると突然頭上から中型の甲殻類みたいなバーテックスがふってきた。

 

「くっ、上からだと!!ヒナタ、ミト、伏せろ!!」

 

ダクネスさんが降ってくるバーテックスを受け止めようとするけど、流石にあの大きさを一人で受け止めるのは……

 

そんな時、誰かが私達の所に駆けつけ、降ってくるバーテックスの所まで高くジャンプし、真っ二つに切り裂いた。そしてその人物は私達の所に着地した。

 

「貴方は……」

 

「我が名は鶴城氷雨!!この口上はいいか。悪いわね。ちょっと遅れちゃって……守りと支援は任せなさい」

 

氷雨さんは巫女スキルを発動させながら、迫り来るバーテックスと戦っていた。そんな彼女を見て水都さんはあることに気がついた。

 

「あの、氷雨さん………貴方は……この未来を願ったの?」

 

「未来を願う?何の話?」

 

「貴方は勇者たちがバーテックスと戦うのではなく、勇者たちや生き残った人たちが力を合わせて立ち向かう未来を願ったんですよね」

 

「どうしてそんなことを言えるのかしら?」

 

「だって、涙の跡があるから……」

 

確かによく見ると涙の跡が残ってる。まさかと思うけど遅れた理由って……

 

氷雨さんは顔を真赤にさせているし……

 

「わ、悪かったわね。泣いていて……そうよ。私はいつかこんな未来がくるように願い続けた。だって、そうしたいって生きていたときから思っていたんだから……そんでいざ、ここに来てみたら………もう女神様のおかげかしらね?」

 

氷雨さんは顔を背け、戦い続けた。私達も集中しなきゃ……それにしても須美ちゃんや園子ちゃんたちは何処にいるのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カズマSIDE

 

勇者たちが頑張っているけど、数が多すぎるせいかみんな、疲れてきている。おまけに頼みの紅魔族も魔力がつきかけてるし……

 

「ゆんゆん、大丈夫か?」

 

「な、何とか……でも魔力がもう……」

 

「カズマ、ドレインタッチで魔力を受け渡せば……」

 

「何人いると思ってるんだよ!!というかお前はまだ爆裂魔法を放たないのかよ!」

 

頼みのめぐみんは、何かをこだわってまだ爆裂魔法を放とうとしていない。このままじゃ全滅しそうだ……くそ、ここまで来て……

 

「エクステリオン!!」

 

突然、聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら、無数にいた白鰻が飛んできた斬撃によって一気に倒されていた。今の声って………

 

「お待たせしました」

 

俺は声が聞こえた方を見ると、ドレス姿ではなくお忍び用の格好をしたアイリスとクレアとレイン……それに王都の騎士たちが来ていた。

 

「アイリス!!」

 

「違います。お兄様。私はアイリスではありません。私はちりめん問屋の娘、イリスです」

 

いや、明らかにアイリスだよな。というかちりめん問屋って、前に俺が教えたドラマのアレだよな……

 

「アクセル中の冒険者たちがここで戦っていると聞いて、助太刀に来ました。さぁ、皆さん、行きますよ!!」

 

アイリス……イリスの指揮のもと、騎士たちが戦いに参加してきた。するとクレアが俺の所にやってきた。

 

「すまない。遅くなった」

 

「来るつもりだったなら最初から断るなよ!!ダクネスのやつが落ち込んでたぞ。自分だけ力になれなかったって……」

 

「これは……一人のためだけに国を動かすことは出来ないと私がアイリス様に言ったのだが……アイリス様は……『それでは一人の旅人として、ウミお兄様を助けに行きましょう』と言い出してな」

 

「王族も面倒くさいな……でも、助かった。勇者以外みんな魔力切れで……」

 

「カズマさん!?カズマさん!?大変よ!?アレみて!?」

 

慌てているアクア。アクアが指を差している方を見ると、白鰻の大群が津波のようにこちらに迫りきていた。まさか一気に全滅させる気か?

 

「おい、めぐみん、ここがお前の出番だろ!?」

 

「で、ですが………」

 

めぐみんに爆裂魔法を撃つように言うが、未だに撃とうとしない。みんなが逃げるているし、万事休すかと思った瞬間……

 

「カースドクリスタルプリズン!!」

 

突然津波の様に迫りくる白鰻が全て凍らせられた。そして更には……

 

「エクスプロージョン!!」

 

眩い閃光が氷漬けにされていた白鰻を包み込み、全滅させていた。今の声って……

 

「ふはははは、どうやら困っているようだな!!」

 

バニル、ウィズ、それにウォルバクが来ていた。ウィズは分かるけど、ウォルバクとバニルが来たのは意外だった。

 

「お、お姉さん……」

 

「紅魔族特有の拘りがあるみたいね。それだったら私が頑張るわ」

 

「街の皆さんが戦っているのですから、私も街の一員としてお手伝いします」

 

「ウォルバク、ウィズ……助かるけど……」

 

「どうやらネタ種族は魔力がつきているみたいだな。だったら、このマナタイトを使え!」

 

バニルは背負っていた鞄からマナタイトを取り出した。あれって、ウミが買った……

 

「あの小僧が一つだけ十分と言ってな。全部は買わなかったのだ。さぁ、ネタ種族よ!大量にあるマナタイトを使い、まだまだ働くがいい」

 

「「「「「ネタ種族言うな!!」」」」」

 

紅魔族の全員が大声でツッコミを入れるが、これで形勢逆転だ。これだったら……

 

「ワカバ達!!そろそろいいぞ!!」

 

俺はワカバ達にある指示を出した。このタイミングなら……

 

「分かった!!友奈!!私とお前は……」

 

「うん、2つめだね。それじゃ、行くよ皆!!」

 

「「「「「切り札発動!!」」」」」

 

「七人ミサキ!!」

 

「輪入道!!」

 

「雪女郎!!」

 

「酒呑童子!!」

 

「大天狗!!」

 

チカゲ、アンズ、タマコの三人はこれまでに見せたことのある切り札を使うが、ワカバとタカシマだけはちがった。

 

タカシマは巨大な鉄甲を装備し、凄まじい気迫を感じさせていた。ワカバは黒い翼を有した姿だった。もしかしてアレが本気の二人なのかもしれない

 

「さぁ、決着をつけるぞ!!」

 

 


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