皆が力を貸してくれることになってから次の日、僕らは屋敷でどうするのか話し合っていたのだったが……
「御神木を破壊するという方法以外に世界を渡る事か……」
「ユウナたちが通ってきた道は塞がっているのですよね」
「神樹も結界の防御に集中したいみたいだけど……結局はバーテックスを倒すためにワザと結界を開けてるからね……」
「……ねぇ、ダクネスさん、めぐみん。ちょっと聞いていい?」
話し合う中、ちょっと気になったことがあった。何でダクネスさんとめぐみんは友奈たちがこことは違う世界にいることを知ってるんだ?
「友奈が別世界にいるって、何で知ってるの?」
「あぁ、悪い。俺がうっかり話しちゃったんだ」
「正直話した方がいいんじゃないかって思ったんだよ。だからカズマさんのこと怒らないでね」
カズマさんも銀も申し訳なさそうに言っていたけど、正直に話してもらえてよかったかもしれない。
「というかウミがやった方法は間違ってると思ってたけど、何だかいざ話し合うとあってるんじゃないかって思い始めたんだが……」
カズマさんも中々案が出ず、そんなことをいい始めた。他に世界を渡る方法はないのか……
そういえばクリスさんとお姉ちゃんの姿が見えないのは気になるし……昨日は帰ったのが夜遅くだったから、お姉ちゃんはここに泊まったはずなのに、いつの間にか姿が見えないし……
「カズマ!!それは間違った方法だと自分で言ったんじゃないのか!!なのにお前は……」
「だから仕方ないだろ!!いざ考えると方法はないし……それともアクアかエリス様に頼んで道を作ってもらうか?」
「正直言うと無理ね。まぁ時間がかかるけど、ウミが死んで、エリスに頼んで元の世界に赤ん坊からやり直す?」
いや、それは本当に時間が掛かるし……本当にどうしたものか?
「流石に世界を渡り歩く魔法はありませんし……そう言った便利な神器とかないんですかね………」
「「…………」」
僕とカズマさんはめぐみんの言葉を聞いて、何か引っかかった。
「おい、めぐみん。さっきなんて言った?」
「ですから、世界を渡り歩く魔法は……」
「その後!!」
「………そう言った便利な神器とか……」
「「それだ!!」」
僕とカズマさんは同時にある物を頭に浮かび上がっていた。それはアイギスを盗みに入った時………
「パパ、これ見て」
「ん?これは………腕輪?」
見つけたのは錆びついた腕輪だった。まぁここの貴族は変わったものを集めるのが趣味だって言っていたから、こういった物があってもおかしくないか。
するとクリスさんが腕輪に気が付き、覗き込むと……
「これも神器だね。目的のものじゃないけど回収しとこ」
「どんな神器なんですか?」
「これは頭の中に思い浮かべた場所に行ける神器だよ。本来の持ち主が使えば魔力とか関係なく、どこにでも自由自在に行けるようになるんだ。でも、所有者以外の人が使うとなると莫大な魔力を使うんだよね」
「あの時盗みに入った時の!!」
「あの腕輪なら……きっと」
見えてきた!!世界を渡り歩く方法が……でも……
「盗みに入ったときというのはアンダインの屋敷か?他にも盗んできたことを怒るべきだが……今、その神器はどこにあるんだ?まだアンダインの所にあるというなら私の力で……」
「いや、それがもう回収して、クリスに預けたんだけど……」
「クリスさん、何処にいるんだ?」
一層のこと呼び出すか?そう思った瞬間、いきおいよくドアが開かれるとそこにはクリスさんとひなたお姉ちゃんがずぶ濡れで入ってきた。一体どうしたのだろうと見ると、クリスさんの手にはあの腕輪があった。
「お探しものはこれだよね」
「クリスさんがこの腕輪のことを思い出して、湖の底から回収してきたのよ」
クリスさんは僕に腕輪を渡し、優しく微笑んだ。
「あなたにならこれを渡せます。だから必ずユウナさんたちを助けてくださいね」
「……はい。でも、この腕輪、僕じゃ使えないんじゃ……」
「そうね。その腕輪、使用者以外が使うには、膨大な魔力がないと無理ね。ウミは魔力が低いから使えないわよ」
今度は魔力だけど、でも一個だけ思い当たることがあった。
「アクアさん、マナタイトでも腕輪は?」
「まぁ起動できるけど、でもかなりの高級なものじゃないと……」
「それだったら、思い当たる場所がある。行きましょう。クリスさん、お姉ちゃん」
「あそこだね」
「あの悪魔には一度言っておきたいので、」
「私もついていくよ」
僕、銀、クリスさん、お姉ちゃんの四人であの場所へと向かうのであった。
「あの悪魔というのはバニルの事か?」
「確かにマナタイトがどうとか言ってましたね」
「それじゃ私達も行きましょう」
「待て、お前ら。バニルのところにはあいつらに任せておけ」
「ちょっとカズマ!どうせあの悪魔のことだから大金で買い取れって言うに決まってるわ」
「それは大丈夫だろ。ウミの奴も何気に金は持ってるし……みんな、頼みがあるんだ」
僕らはウィズさんのお店を尋ねるとバニルさんが待っていましたかと出迎えてくれた。
「どうやら未来を変えたみたいだな。そこの巫女は貴様を殺すべきかどうか悩んでおったからな」
「まんまと貴方に乗せられたわ。何というかこれも血筋なのかしら?」
「それで要件はわかってるわね」
「マナタイトを買いに来た!!」
「分かっておる。そのために処分せずに置いといたのだ。だが、わかっているはずだ」
「………どうすればいいんだ?」
「決まっておるであろう。無償で譲る気はない。大量のマナタイトをひとつだけ売るわけ無いであろう。金は持っているであろう?」
お金か……こいつ、もしかしてこのために僕やひなたお姉ちゃんに絶望的な未来に行くように仕向けて、希望の未来に行けるようにしたのか……だけど文句は言ってられない。ここは……
「いくらだ?」
「全てで……」
「100エリスになります」
バニルさんの言葉を遮るように値段を告げたのは店の奥から出てきたウィズさんだった。いや、100エリスって……
「全部で100エリスです。どうせこの町では使いみちがないとのことで……」
「ウィズ!?貴様!!ふざけているのか!!」
「ふざける?何を言っているんですか?ウミさんたちに買わせるために色々とやって……更には全財産まで奪うなんて……」
突然店中が殺気に満ちてきた。これってアルカンレティアでウィズさんが本気を出した時の……
「それに値段を付ける権利があるのは、店主である私です。バニルさん、もし文句があるというなら………ここで戦いますか?」
「………くっ、本気の貴様とは戦いたくないものだ。仕方ない!全部で100エリスだ!!」
「ウィズさん……ありがとうございます」
「ウミさん、頑張ってください。頑張ってユウナさんを助けてくださいね」
僕らはお礼を言い、店を後にするのであった。
「貧乏店主め……」
「何を言ってるんですか?いつでも私はバニルさんの黒字を赤字に塗り替えてきた。本当に呪われているかもしれないですね」
「まぁ良い。もう一つだけ方法はあるがな。その時はウィズ、そして店の奥で姿を見せないようにしておる貴様も手伝え!!」
「やれやれ、遊びに来たと思ったら、面倒なことに巻き込まれたわね。まぁいいわ。あの子には借りがあるもの。それに、造反神も力を貸してくれるようだしね」
これでようやく準備が終わった。あとは行くだけだけど……
「海くん、行くのは明日にしてもらっていいかな?」
「えっ、でも……」
「海くん、まだ満開の後遺症が治ってないでしょ。ちゃんと後遺症を治してからいくようにしないとね」
「………分かった」
「それじゃ、私は若葉ちゃんのところに戻るね。今回のこと、これからのことを話しておかないと……」
ひなたお姉ちゃんはそのまま帰っていく。残った僕達三人は……
「そういえば銀。お前の後遺症は?」
「私?私は……ちょっと味覚がなくなってるくらいだから……でもちゃんと準備しないと駄目だからな」
「わかってる」
「なぁ、海。私も一緒に連れて行ってくれるんだろ」
「銀……お前……」
「その神器の効果はどれくらいなものかわからないけど、もしも使用者ともう一人いけるなら……私も連れて行ってくれない?私も二人を助けたいからな」
「………そうか、それじゃ、一緒に行くか。クリスさん、大丈夫ですよね?」
「えぇ、その神器は使用者以外の方が使った場合の制限は魔力と渡り歩く人数のみです。丁度ウミさんとギンさんのお二人ですね。後は欠点としては人数は決められるけど、それ以外の物を通してしまうことですね」
「行ったら、道を閉じればいいんじゃないのか?」
「いえ、効果時間内は開きっぱなしですね」
何というか認められたもの以外の使用に対する欠点が大きくないか?まぁ簡単に使えないような処置なんだろうけど……
「というかクリスはなんか色々と詳しいのは何でだ?」
「それはまぁ、追々ね」
クリスさんは笑顔でそう言うのであった。あくまで女神だっていうのは皆にナイショなんだ……
それから僕らは屋敷に戻り、休息を取るのであった。何故か帰ってきた時にカズマさん達がいなかったのは気になったんだけど、すぐに戻ってきたから特に気にしないようにした。
そして次の日、僕と銀の後遺症も治り、友奈たちのところに行く準備ができた。ただ気になるのは……
「カズマさん、別に腕輪を起動するのだったら街中でも良かったんじゃ……」
僕らは街の外へと出て、腕輪の起動することになった。何故かカズマさんはそうした方がいいと言ってるけど……
「ほら、気にするなって……」
とりあえず腕輪を起動させようとした時、若葉さんたちが駆けつけてきた。
「海、行くのか?」
「はい、僕と銀の二人で助けに行ってきます」
「………すまない。私も行くべきだが……」
「大丈夫です。若葉さんたちには若葉さん達のやるべきことがあるんですから……」
僕はカズマさんたち、若葉さんたち初代勇者組に見守られながら、右手に腕輪を、左手にマナタイトを握りしめた。
「腕輪よ!僕らを導け……」
呪文を唱えた瞬間、僕と銀の前に巨大な門が現れた。それを見たアクアさんは……
「これぐらいの大きさの門だと大体一時間位ね。それまでに決着を着けるのよ」
「はい、皆……行ってきます」
僕と銀の二人は門を開け、中に飛び込むのであった。
「本当に……私達には何も出来ないのか……」
「若葉ちゃん……信じましょう。海くんたちを……」
「おいおい、ワカバたち、何を言ってるんだ?というかウタノから聞いてないのか?」
「何をだ?」
「カズマ、カズマ、みんな来たみたいよ」
「これならカズマが言っていたことが出来ますね」
「さて、私たちは私達のやるべきことを」
「お前たち……まさか!?」
友奈SIDE
樹海の空を覆い尽くすバーテックスの群れ、そして造反神が作り出したバーテックスとそっくりな大型の奴らもいた。
「か……りん、生きてる?」
「な、んとかね……奴らも本気って言うことかしら?」
風先輩と夏凛ちゃんは血まみれになったまま、倒れていた。いや、二人だけじゃない。
「い、つきは?」
「だ……いじょうぶ……でも……こわいよ……お姉ちゃん……」
「わっしー」
「そのっち……ここまでバーテックスが力をつけるなんて……」
「満開も……精霊のバリアもないからね………ここで死んだら……みんなで……カイくんの所に行けるかもね」
皆が涙を流しながら、絶望していった。だけど私はそれでも立ち上がった。
「ゆう……なちゃん……」
「東郷さん、そのちゃん、樹ちゃん、風先輩、夏凛ちゃん……まだ諦めない。諦めたくない。海くんと約束したんだもん」
左腕は折れ、お腹から血を流しながら私は右拳を握りしめた。まだ死にたくない……私達が死んだら四国に住んでる人はだれが守るの?
迫りくる小型のバーテックスを殴っていく私。だけど突然、薄暗くなったと思ったら、上から巨大な尻尾が振り落とされてきた。避けようとするけど、激痛で私はそのまま膝をついてしまった。
「友奈ちゃん!?」
東郷さんの叫びが聞こえてきたけど……ごめん、もう避けられない……
「ごめんね。海くん………私……」
もう駄目かと思い、私は目を閉じるのであった
「…………勇者部五箇条一つ!なるべく諦めない!!」
聞き覚えのある声が聞こえ、目を開けると巨大な尻尾が切り裂かれた。そして東郷さんとそのちゃんの近くには見覚えのある女の子がいた
「何でこう、二人は危ない目に合うんだか………」
「うそ……」
「どうして……」
そして私の前には白い衣装を身にまとった一人の男の子がいた。私はその人を見て、涙を流した
「勇者部五箇条を忘れるほど、大変だったみたいだな。だけど、またせたな」
その子はゆっくり大量のバーテックスに向かって大声で叫んだ
「バーテックス共、よく覚えておけ!!僕は………」
110 讃州中学勇者部所属、勇者!上里海!!
「お前らを倒すものだ!!」
と言う訳で、110話のタイトルを本編でやりたかっただけでした。
次回から最終決戦が始まります