突然アクセルの街にやってきた魔王軍幹部のデュラハンはかなりお怒りだった。
そりゃそうだ。毎日のように拠点に爆裂魔法を撃ち込まれちゃな……
「……爆裂魔法?」
「爆裂魔法を使える奴って言ったら……」
「爆裂魔法って言ったら……」
みんな、めぐみんの方を見た。するとめぐみんは隣りにいた魔法使いを見た。
「ええっ!?あ、あたしっ!?なんであたしが見られてんのっ!?爆裂魔法なんて使えないよっ!」
めぐみん、人のせいにするのはどうかと思う。めぐみんにそんな感じに目で訴えると、めぐみんはため息をつき、前に出た。
「お前が……!お前が、毎日毎日俺の城に爆裂魔法ぶち込んでいく大馬鹿者か!俺が魔王幹部だと知っていて喧嘩を売っているなら、堂々と城を攻めてくるがいい!その気がないのなら、街で震えているがいい!なぜこんな陰湿な嫌がらせをする!?この街には低レベルの冒険者しかいないことは知っている!どうせ雑魚しかいない町だと放置しておれば、調子に乗って毎日毎日ポンポンポンポン撃ち込みにきおって!頭おかしいんじゃないのか、貴様っ!」
「……我が名はめぐみん!!アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者!!我は紅魔族にしてこの街随一のアークウィザード。我が爆裂魔法を放ち続けていたのは、魔王軍幹部をこちらにおびき寄せる為の作戦。そして、まんまとこの街に来たのが、運の尽き!!」
「めぐみん、虚勢は止めといたほうが良いよ」
「ちょ!?何を言ってるんですか!?別に私は虚勢なんて……」
僕はめぐみんを後ろに下がらせ、目の前のデュラハンを睨んだ。
「何だお前は?」
「そこの頭のおかしい紅魔族の仲間ですよ。今回の件についてですが、本当に申し訳ありません」
「ぬ、ぬぅ」
頭を下げる僕を見て、少し怒りが収まってきたデュラハン。こういう場合は素直に謝ったほうがいい。
僕は更に言葉を続けた。
「魔王軍幹部がここら辺に来ているというのは知っていましたが、まさかあのような廃城にいるとは思っていませんでした」
「あのような?それはどういうことだ?」
ちょっと怒りのこもった声が聞こえたけど、僕は更に続ける
「だって、明らかに魔王軍幹部の中でトップクラスのオーラがある貴方があんな所にいるとは思っていませんでした。僕はてっきりもっと素晴らしい場所に拠点をおいているのかと……」
「ほ、ほう」
段々怒りがなくなってきてるな。
僕とデュラハンの話し合いを見ていたカズマさんたちはと言うと……
「なぁ、あのデュラハンの怒りが収まってきてないか?」
「あぁ、ウミの言葉に何かしらの魔力とかあるのではないかってくらいだな」
「見てみて、あのデュラハン、褒められて満更でもなさそうよ」
「ウミのあの相手を褒めまくるから始まる交渉術に勝てる奴って、園子だけだったな……」
昔、ある会話を思い出す銀であった。
「こちらも知らなかったとは言え、毎日のように爆裂魔法を撃ち込んだりして本当に申し訳ありません。僕の方からも彼女に言って聞かせますから」
「ふ、ふむ、分かれば良いんだ。こちらも昨日爆裂魔法の後、私の部下が突然頭を何かで撃たれてしまってな。そのこともあってな……」
昨日?それって僕がやったことだよね…‥…
これは黙っておいたほうが良いかな?
「こちらとしてここにはちょっとした調査で来たのだ。こんな雑魚ばかりの所に構っている場合じゃないんでな。もう爆裂魔法を撃つなよ」
何とかデュラハンを帰らせることができ、ホッとした僕。
だけど
「駄目です。紅魔族は一日一回爆裂魔法を撃たないと死ぬんです」
台無しだよ。その一言で全て台無しだよ
「おい、こんなことを言ってるぞ」
「めぐみん……少し黙っていてほしいのだけど、お願いだからさ」
「いやです。あなたがあの城に居座っているせいで、私たちは仕事も碌にできないんですよ!余裕ぶっていられるのも今のうちです。こちらには、対アンデットのスペシャリストがいるのですから!先生、お願いします!」
めぐみんは不敵な笑みを浮かべ、アクアさんの方を見た。
アクアさんは先生と呼ばれて満更でもない顔をして、デュラハンに色々文句を言いながら魔法を唱え始めた。
確かにアクアさんの魔法だったら、デュラハンくらい楽勝かもしれないけど……
デュラハンはめぐみんに人差し指を向けてきた。
「汝に死の先刻を! お前は一週間後に死ぬだろう!!」
呪いをかけると同時にダクネスがめぐみんを庇い、代わりに呪いを受けてしまった。
「ほう、予定と違ったが、クルセイダーに呪いがかかったか。その呪いは俺が言ったとおり一週間後に死ぬ!」
厄介な魔法を使う。というかそう言う呪いとかってこっちでは普通にあるから困る。
「な、なんて事だ!つまり貴様は、この私に死の呪いを掛け、呪いを解いて欲しくば俺の言うことを聞けと!つまりはそういう事なのか!」
「えっ」
デュラハンもダクネスの言葉を聞いて驚きを隠せないでいる。大丈夫、僕も普通はそんな反応はしないだろうって思ってるから
「くッ……!呪いぐらいではこの私は屈しない……!屈しはしないが……っ!ど、どうしようカズマ!見るがいい、あのデュラハンの兜の下のいやらしい目を!あれは私をこのまま城へと連れて帰り、呪いを解いて欲しくば黙っていう事を聞けと、凄まじいハードコア変態プレイを要求する変質者の目だっ!」
「……えっ」
ダクネス、お願いだから僕の第一印象通り、格好いい騎士でいて欲しかった。今じゃ、幻滅しすぎてるよ。デュラハンも困ってるし、ダクネスは今にも突撃しそうだから、カズマが必死に取り押さえた。
「と、とにかく!これに懲りたら俺の城に爆裂魔法を撃つのは止めろ!そして、紅魔族の娘よ!そこのクルセイダーの呪いを解いて欲しくば、俺の城に来るがいい!城の最上階の俺の部屋まで来ることが出来たなら、その呪いを解いてやろう!……だが、城には俺の配下のアンデットナイトたちがひしめいている。ひよっこ冒険者のお前たちに、果たして俺のところまでたどり着くことが出来るかな?クククククッ、クハハハハハハッ!」
デュラハンがそう言い残し、立ち去ろうとした瞬間、僕は狙撃銃を取り出し、ディラハンの身体目掛けて撃った。
「ぬぅ、今のは……」
「帰る前に良いこと教えてあげますよ。あんたの部下を狙撃したのは僕だ」
「………ほう、ここで俺を止めて呪いを解かせようとするか。だが、その手に乗らん!!貴様との戦い楽しみにしておくぞ!」
僕の目論見バレていたか。
デュラハンはそのまま帰っていってしまった。
さて、このままじゃまずいとの事で、僕、カズマさん、めぐみんの三人でデュラハンを倒しに行こうとした時、
「セイクリッドブレイクスペル!」
アクアさんはダクネスの呪いを解くのであった。
アクアさん、最初からやってくれればいいのに……