この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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109 願った思い

自分の思いが本当に恋なのかどうか分からないまま、時は流れ、僕は中学二年生になった。勇者部にも新しい部員である風先輩の妹、樹が入部した。

僕らは平穏な日常をこれから歩んでいくんだと思っているある日のこと、授業中突然友奈と東郷の二人がいなくなった。

 

クラス中が驚いている中、僕はこの光景を知っている。

 

「すみません。少し出ます」

 

僕は教師にそう告げた瞬間、教師は僕が何を言いたいのか理解するのであった。

 

 

 

 

 

僕は学校の屋上を訪れるとそこには友奈たちがいた。

 

「戻ってきたな……みんな」

 

「海くん……」

 

「……悪かったわね。迎えに来てもらって……」

 

「いいえ、これが僕の役割ですから……」

 

先輩が申し訳なさそうに言う中、僕は笑顔でそう言うのであった。

 

それから僕と先輩の二人で勇者について、バーテックスについて友奈たちに話した。東郷はそのことを黙っていたということについて怒っていたけど……それでも一緒に戦うことを決めてくれた。

 

夏凛が転入し、バーテックスの総攻撃、皆が満開をしたこと……話を聞く中、心が締め付けられていく。

 

東郷の御見舞の帰り、友奈と一緒に帰る中、友奈は僕にあることを聞いてきた。

 

「……海くん?」

 

「何だ?」

 

「ねぇ、海くんはどうしてそんなつらそうにしているの?」

 

突然そんなことを言われ、ドキッとした。友奈はというと真剣な表情で僕のことを見つめていた。

 

「……そう見えるか?」

 

「うん、何だか戦いが終わった後、私達のことを笑顔で出迎えてくれるんだけど……何だか辛そうに見えて……」

 

僕ってそんなに分かりやすいのかな?というより友奈が鋭いのか?こういう時、誤魔化すのが一番だけど……友奈の前では誤魔化したりはしたくない。

 

「………僕は友奈たちより前の勇者のサポートをしていたって、言ったの覚えてるか?」

 

「うん、覚えてるよ」

 

「僕はずっと傷ついて帰ってくる勇者たちを見てきた……」

 

皆が傷だらけで帰ってくる中、僕はただ見届け、見守るくらいしかできなかった。そんな自分が許せなく、いつか僕も勇者になれるように努力もした。

 

「頑張れば、きっと僕も勇者になれるんじゃないかって思ってた。勇者になってみんなを助けたいって……思ってたんだけど……」

 

「……海くん」

 

それでも僕は勇者になれなかった。やっぱり僕はただ見届けるしか出来ない人間なんだ。

 

「悪いな……変なことを言って……」

 

僕はそう告げ、友奈と別れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして友奈たちは満開の後遺症について知った。教えたのはそのっちだ。僕がそれを知ったのは、学校で先輩と一緒にだ。

 

そんなある日、僕は東郷に家に呼び出された。

 

「海くん、ごめんね。急に呼び出して……」

 

「別に……僕もお前に確認したいことがあってな……」

 

「確認したいこと?」

 

「乃木園子から満開について聞いたんだろ。そしてお前のことだ。気がついたんだろ」

 

「………確証に至ってないけど、私は讃州中学に入学する前よりずっと、海くんと……彼女と出会っていた。そして勇者になっていた」

 

やっぱり気がついていたのか……

 

「そのとおりだ。お前は先代勇者だった。お前の足、記憶がないのも満開の影響だ」

 

「………海くんは知っていたの?満開の後遺症について……」

 

「ずっと言えなかった。お前たちに言おうとしていたけど……」

 

「海くん、気にしないで……海くんもずっと辛かったんだよね。真実を話すべきかどうか……でも大赦から止められていた」

 

「東郷、もう一度乃木園子に会ってこい。多分あいつが詳しく話してくれるはずだ。この世界の真実を……僕は後遺症を治す方法を試してみる」

 

僕はそう告げ、東郷の家を出るのであった。皆が後遺症で辛い思いをする中、僕がやるべきことは見届け、見守ることだけじゃない。

 

「きっと母さんも父さんも怒るだろうな……でも、悪いけどみんなを助けるために……僕はこの生命を捧げる」

 

僕は大赦へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カズマ、流石に殴り殺すのは……』

 

『待ってくれ!一発殴っただけだろ!きっと打ちどころが……』

 

『アクア!早くリザレクションを……』

 

『ちょっと待ってなさい?あれ?死んでるわけじゃ……』

 

皆の声が聞こえ、目を覚ますとそこにはカズマさんたちが僕の顔を覗かせていた。

 

「み……んな?」

 

「ウミが生き返った!?」

 

「何でだ!?心臓止まってたぞ」

 

「もしかしてアンデットになったんですか?」

 

皆が心配する中、僕は自分の胸に手をやった。心臓が動いてない?まさかと思うけど……満開の後遺症で……

 

「なぁ、海?眠ってたみたいだけど……頭は冷えたのか?」

 

銀は僕のことを見つめていた。そうだった、僕はみんなと……

 

「皆に止められたんだ。頭ぐらい冷えるさ」

 

僕は立ち上がり、皆を見つめながらさっきまで見ていた夢のことを話した。

 

「夢を見ていたんだ……友奈たちと出会った頃の夢を……思い返すと一人で色々と頑張りすぎていた」

 

みんなの後遺症を治すために自分の命を絶った。今回だって皆を助けに行くために世界を犠牲にしようとしていた。

 

「ねぇ、カズマさん、アクアさん、めぐみん、ダクネスさん、銀……クリスさん、お姉ちゃん……僕はどうすればいいのかな?」

 

僕はそう皆に問いかけた。すぐに答えが出ないと思っていた。だけど……みんなは呆れた顔をしていた。

 

「ウミ、お前はどうしたいのか聞かせろ」

 

「僕は……皆を……助けたい。いや、今も戦い続けている皆と一緒に戦いたい」

 

ダクネスさんの言葉を聞いて、僕はすぐにそう答える。友奈を、友海を………皆を助けたいんじゃない。みんなと一緒に戦いたいんだ。

 

「……ウミ、私が言えたものじゃないが、一人で抱え込むな」

 

「ダクネス……」

 

「本当にダクネスが言えたものじゃないですね」

 

カズマさんとめぐみんの二人が冷たい目でダクネスさんを見つめ、ダクネスさんは体を震わせていた。

 

「こういった場面でそういうことを言うな!!いいか、ウミ、ここには攻撃が当たらず、防御しか取り柄のないクルセイダーの私がいる。いつも何かをやらかして泣くアークプリーストのアクアがいる。爆裂魔法しか使えず、みんなにバカにされているアークウィザードのめぐみんがいる。やたら不幸な目に遭うが、それでも元気に振りまく勇者の銀がいる。何だかんだ面倒事を避けたがるけど……最弱職なのに魔王軍幹部を倒してきたカズマがいる。そんな私達を頼らないのか?」

 

頼る……そういえばこっちに来てから僕はずっと一人で戦ってきたんじゃなかったんだっけ?みんなと一緒に戦ってきたんだ。

 

「ごめん。みんな、一人で抱え込みすぎた。ダクネスさん」

 

「私はいつでも盾になってやる」

 

「アクアさん……」

 

「全く、ウミって何でこう抱え込むのかしらね?」

 

「めぐみん」

 

「ウミ、どんな敵であろうとも我が爆裂魔法で消し去ってみせます」

 

「銀……」

 

「任せて、私も須美と園子を助けたいんだから……」

 

「クリスさん、お姉ちゃん」

 

「私の役目はウミさんを守ることだって事を忘れないで……」

 

「仲間を……私達と一緒にね」

 

「…………カズマさん、皆を助けたい。だから力を貸してくれ」

 

僕がそう告げた瞬間、カズマさんはめんどくさそうに頭を掻きながらも、それでいて頼もしさを感じる声で……

 

「しょうがねぇぇなぁぁ!!皆でユウナたちを助けるぞ!!」

 

 

 




今回の次回予告ですが、タイトルは秘密になってます。



次回予告

「どうやら未来を変えたみたいだな」

「それでどうすればいいんだ?」

「なぁ、海。私も一緒に連れて行ってくれるんだろ」

「みんな、頼みがあるんだ」

「すまない」

次回『■■■■■』

「行ってくる」

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