王都へと向かう僕の前にカズマさん達が立ちはだかった。僕は白月を構えながら、邪魔をするなと言うと、カズマさんは呆れた顔をしていた。
「お前さ、何しようとしてるんだよ？」
「……王都にある御神木を破壊して、友奈達のところへ行く」
「ねぇ、ウミ。それがどんな結果になるか分かってるの？この世界に張られてる結界が壊れて、バーテックスが襲ってくるのよ。それも今まで以上の……どうせあの悪魔にそそのかされたんでしょ。だったらあんな悪魔の言うことなんて………」
「分かってるよ。バニルさんの言うとおりの方法以外があるかもしれないのだけど……今の僕にはこの方法しかすがるしかないんだ」
「お前、何でそんな方法しか思いつかないんだよ。もっと考えろよ！！」
もっと考えろか……分かってるけど……僕はクリスさんに支えられたひなたお姉ちゃんのことを見つめた。お姉ちゃんは涙を流しながら僕のことを見つめていた。
「悪いけど、僕はこれ以上は止まることは出来ないんだ……だから！！」
白月で斬りかかろうとした瞬間、銀が斧で僕の攻撃を防いだ
「らしくないな。海！！おまえがそんな風に暴走するなんて……お前らしくないよ！！」
銀は白月を弾くと同時に今度は夏凛の刀を取り出し、連撃を食らわせようとするが、銀の前にダクネスさんが出てきて、連撃を喰らった。
「……痛くも痒くもないな。今のお前の攻撃なんて痛くもない」
「それはダクネスさんの防御力が凄いだけでしょ」
今度は東郷の銃を取り出し、ゼロ距離から思いっきり撃った。ダクネスさんは衝撃で少し後ろに下がるが、余裕の表情を浮かべていた。
「私の防御力が凄いんじゃない。今のお前の攻撃が弱すぎるだけだ。弱すぎて何も感じない」
ゼロ距離で放って、鎧が少しへこんでいるっていうのに、全然効いてないのかよ……本当に嫌になるな。
「お前では私達には勝てない。ギンが攻撃、私が盾、アクアが回復、めぐみんがとどめ。カズマは作戦と指示……忘れたのか？自分で言ったことだろう！！」
忘れるわけ無いだろ、僕は自分で言ったことを……確かに勝てないかもしれないけど……それでも負けられない。それだったら……
「ダクネスさん。忘れてるみたいだけど、それはあくまで僕が普通に戦った時の話だ。本気でやれば結果は変えられる」
僕は刻まれた沈丁花の紋章を確認した。もう出来るみたいだな。それだったら一気に決める
「「満開！！」」
僕が満開を発動させた瞬間、銀も満開を発動させた。読まれていたのか？
「あんたが満開をするっていうのは分かってたよ。強力な力には強力な力で対抗する！！」
銀は巨大な斧を構え、僕は夏凛の使っていた満開の装備を取り出し、上空でぶつかりあう。流石に斧と刀じゃ銀の方に分があるな
「いい加減、ここで止まれ！！海！！」
銀は僕の頭上に上がり、巨大な斧を思いっきり振り落とした。僕は刀で防ぐがあまりの威力で僕はそのまま地面に落下した。
「今のお前は満開も使いこなせないのかよ……そこまで……」
「ま……だだ！！」
「！？」
僕は倒れ込んだ状態で、銀に向けて一部だけ取り出した東郷の満開の砲台で、狙いをすまして、砲撃を食らわした。銀はガードに成功したみたいだけど、満開も解けていた。
「ハァ、ハァ、くそ……」
「まだ僕の方は余裕があるな」
僕の方も満開が解け、もとの勇者の姿に戻る。満開の後遺症で一瞬胸が苦しくなり、地面に倒れ込むけど、僕は何とか立ち上がった。
「互いの満開はもう使えないけど、僕にはまだ切り札がある」
僕は白月の切り札を発動させ、ダクネスさんに光の刃を向けた。
ひなたSIDE
「どうして……こんな事に……」
私はただ見ていることしかできなかった。きっとカズマさん達なら海くんを止められると思っていたのに……海くんは満開を使い、更には切り札を使ってくるなんて……
「もう止められないの？」
「ヒナタ、何を言ってるんですか？」
諦めかけていたそんな時、めぐみんちゃんが私に向かってそう告げた。
「私たちはまだ諦めていません。見てください！ギンも、ダクネスもまだやるつもりですよ」
めぐみんちゃんの言うとおりだった。満開を使って、後遺症で右足を動かせないでいるのに、まだ立ち向かう銀さん。ダクネスさんは海くんの攻撃を食らってもまだ倒れないでいる。
「本来なら私も戦うべきなのでしょうけど……私は………撃てません」
「撃てないって……」
「爆裂魔法を撃ってしまったら、ウミは木っ端微塵になって、アクアのリザレクションでも生き返ることは出来ないですから……だから……」
「それにね。ヒナタ。そろそろカズマも動いてるから、この戦いは終わりよ」
アクアさんがそんなことを言っていた。カズマさんが動いてるって……そういえばいつの間にか姿が見えない。すると私の側にいたクリスさんが前に出た。
「助手くんがいないって言うことはそろそろ私の出番だね」
海SIDE
切り札を発動しているのに、ダクネスさんは全然倒れない。明らかに攻撃を喰らってるのに……
「その程度か……」
鎧がボロボロになっているけど、体には擦り傷一つついてない。何だかおかしいぞ？僕はダクネスさんの周りを見ると、後方に下がっているアクアさんが何かをしているのに気がついた。
「まさかと思うけど、攻撃を喰らった瞬間にアクアさんに回復してもらってる？」
「………あぁ、そのとおりだ。普通だったらいち早くお前は気がつくはずなのにな……それにこの戦いはそろそろを終わりみたいだ」
「終わり？そうだね。僕の………」
「スキルバインド！！」
突然発動していた切り札が消えてしまい、元の勇者の姿に戻った。今の声は……クリスさん？
「スキルバインド……ウミさんの覚えているスキルは、勇者たちの各種武器と満開、切り札。スキルならスキルバインドで封じることだって可能だと思っていたけど……」
「………スキルを封じてもまだ……」
勇者になれているなら、まだ戦える。そう思った瞬間、突然背後から強い衝撃を受けた。
「まだ……なんだって？バインド！！」
鉄のロープが僕の体を縛り付けた。僕は後ろにいる人物を見るとそこにはカズマさんがいた。そういえばいつの間にか姿を消していたけど、潜伏スキルで物陰に隠れていたのか？
「お前を縛ってるのは特別製だ。そう簡単に抜け出すことは出来ない。だからいい加減…………諦めろ！！」
カズマさんに思いっきり殴られ、僕はそのまま地面に倒れ込み、意識が消えた。
次回予告
「初めまして、私は結城友奈です」
「あんたがお目付け役？」
「僕は見届けるしか出来ない」
「お願いだから海くん、忘れないで、海くんの事を心配してくれる人がいるってこと……その一人が私だって言うことを………」
次回 『追想』