そのっちの突然の発言に僕は戸惑っていた。友奈があちら側に戻る?何でまた……
皆も驚く中、めぐみんだけが平然としていた。
「ユウナが帰ってしまうんですね」
「おい、めぐみん、お前、ユウナが帰ること知っていたのか?」
「はい、一緒にお守りを作った時に……あちらが大変なことが起きているんですよね」
めぐみんの言葉を聞き、そのっちは頷いた。
「こっちは造反神のおかげというべきかな~強力な結界が張られていて、バーテックスの進行を食い止めていたんだよ~バーテックスはこれ以上の進行は無理だと判断して、あちら側への進行を再開したんだよ」
「そのちゃんからずっと前から聞かされていたの。バーテックスが進行を始めたって」
「だけどよ。すぐ戻ってこれるんだろ?それだったらあっちに行っても、また会えるんだよな」
カズマさんはきっとすぐに終わる戦いだと思い、そう言うのであったが、そのっちは首を横に振った。
「神樹様の神託では、今回の進行は今まで以上……こちらでのあの戦い以上に激しいものになるって………神樹様もなるべく結界の維持を強くするために道を切り離すんだって、だからもしも戦いが終わっても、こっちに戻ってこれるか………」
「神樹も勝手よね」
アクアさんはいつもと違って真剣な表情でそう呟いていた。
「約束を破っておいて、今度は自分たちの世界が危ないからって、勝手に道を切り離しちゃんだもん。本当に勝手よ。勝手すぎるわ」
「……………」
皆が友奈が帰還することについて話す中、僕は何も言わず、広間から出ていこうとした。
「おい、ウミはいいのかよ!!ユウナとまた………」
「悪いけど……少し一人にしてもらっていいかな?」
僕はそう言い残して、その場から立ち去るのであった。
友奈SIDE
「海くん………」
きっと海くんは怒ってるよね。こんな重大なことを話さなかったから……もしかしたら嫌われちゃったかな?
「ゆーゆ。出発は明日の朝だよ。帰る準備を……」
「おい、園子!!」
突然銀ちゃんがそのちゃんの胸ぐらをつかんだ。カズマさんとダクネスさんが引き剥がそうとする中、銀ちゃんは怒った口調でそのちゃんに言った。
「お前は何でそう平然と海と友奈さんの間を裂こうとしてるんだよ。お前だったら何とかなっただろ!神樹様の神託なんて………」
大声で怒鳴る銀ちゃんだったけど、突然何かに気が付き、そのちゃんの胸ぐらを離した。皆はそのちゃんの方を見ると、そのちゃんは涙を流していた。
「わた……私だって!!私だってどうにかしたかったんだよ!!勇者部のみんなもゆーゆを戻すことに反対していたんだよ!?でも、大赦はゆーゆが知らなかったらきっと……悲しい思いをするんじゃないかって………そう言われたら………」
「そ、園子………」
泣きじゃくるそのちゃん、戸惑う銀ちゃん。私は本当にどうすればいいのか分からないでいた。それにこのまま何も話しもせずに海くんと別れていいのかな?
「なぁ、園子……私は……」
「わかってるよ。ミノさんが怒った理由ぐらい………」
銀ちゃんはそっとそのちゃんを抱きしめるのであった
海SIDE
僕は部屋に閉じこもりある事をしていた。今の自分にできることは……
そんなことを思っていると、突然扉の方からノックが聞こえた。
『ウミ、私だ』
この声はダクネスさん?でも、今は誰にも会いたくないというよりかは……
『一人にしてほしいって言っていたが……すまないが少しだけ……』
「部屋に入れるつもりはないよ。話だけだったら外でも出来ない?」
『………お前はこんな時でも私を……』
「ダクネスさんを喜ばせる気はないのだけど……」
『冷たいな………まぁいい。お前は本当にいいのか?ちゃんとユウナと話した方が良いんじゃないのか?』
「…………」
『また離れ離れになってもいいのか?』
ダクネスさんの口調は普段よりずっと真剣だった。また離れ離れになってしまうかもしれない。一緒に行ってあげたいけど……僕には……いやこの世界に転生した勇者たちには神樹が作り出した道を通ることは出来ない。
それに今話したらきっと、友奈の事を怒ってしまうかもしれない。だからこそ……
『ユウナは明日の朝には出発してしまうみたいだぞ。ちゃんと話してやれ』
ダクネスさんはそう言い残して、ドアの前から出ていった。話してやれか……今の僕には話すことよりも約束をするしかない
カズマSIDE
俺は前に待ち合わせ場所にしていた喫茶店にクリスといた。クリスにはユウナが帰ることを話すと……
「知ってたよ。あの子が元の場所に帰るってこと……」
「お前、知ってたのに誰にも言わなかったのかよ」
「約束……してたから」
「約束って………」
きっとユウナのことだから自分で言うとか言ったんだろうけど、今の今まで言えなかったじゃないか。そのせいでウミの奴は部屋に篭ってるし………
「あの子は、自分がいなくなった時、私にウミさんのことをお願いしますって言ったんだよ。私にあの子の……ユウナさんの代わりを務められるかな?」
クリスは悲しそうな表情で笑うのであった。本当にどうしようも出来ないのか
友海SIDE
ちょっとの間離れ離れになってしまうから、私は今日はママと一緒に寝ることにした。
だけどママはずっと思い詰めた顔をしていた。
「ママ………」
「友海ちゃん?どうしたの?眠れないの?」
「ううん、眠れなそうなのはママの方だよ」
「………私ね。海くんを傷つけるのはこれで二度目なんだよ。もう海くんの悲しくって辛い思いはさせないって決めてたのに……」
ママは今にも泣きそうな顔をしていたけど、私はママの頭をなでて、笑顔で語った。
「ねぇ、ママ。泣かないで、大丈夫だよ。離れ離れになってもまた会えるから……」
「友海ちゃん?」
「だって、離れ離れになってもね。私はここにいるんだよ。ママとパパの子供として……」
今がどうなるかわからないけど、未来ではママとパパが結ばれて、私が生まれる。それは変わらない未来。
「だからね。ママ。私は寂しくないよ。だってママとパパはちゃんとまた会えて………わたしを愛してくれるんだから……」
「友海ちゃん」
ママは私のことをギュッと抱きしめてくれた。きっと大丈夫だよ。未来は変わらない
海SIDE
気がつくと朝になっていた。もう友奈とそのっちが帰る時間だろうと思い、僕はあるものを持って、屋敷の外へと出るのであった。
屋敷の外ではカズマさんたちが二人のことを見送ろうとしていた。
「お前がいない間、ウミのことは任せろ」
「カズマさん……お願いします」
「それじゃ行こうか」
友奈とそのっちは神樹の作った道に入ろうとしていたが、僕は急いで二人の前にかけよた。
「友奈!!」
「う……海くん!?」
僕の所に駆け寄ろうとした友奈だけど、僕はそんな友奈にあるものを見せた。
「これって………」
「お前、孤児院でやる演劇のことを忘れてないだろうな。僕は手伝えないけど……約束してくれないか?ちゃんと帰ってきて、カズマさん達と勇者部の皆と一緒に演劇をやるって………これはその時の衣装だ」
僕は友奈に衣装を渡した。この衣装は僕が死ぬ前に作っていた文化祭で友奈の勇者の衣装だ。一から作り、さらには細かい所まで直すのに時間がかかったけど……間に合ってよかった。
「海くん…………」
「待ってるから………」
僕はそっと友奈にキスをすると、友奈は顔を赤らめていた。そして涙を流しながら笑顔で………
「海くん…………またね」
「あぁ、またな」
友奈とそのっちはそのまま神樹の道に入り込み、すぐに姿を消すのであった。
「またね………か」
友奈が帰ってくるまでの間に、僕も頑張らないとな
二人は笑顔でお別れを言えた。きっとまた会えることを信じて……きっと終わった後は楽しい日々が待っていると信じて……だけどこの時は私も、誰もあんな未来が待っているなんて思っていなかった。きっとカイくんはその事を知ったら、どうなるか………もしかしたらあちらの世界を滅ぼすかもしれない
「どこでやろうか?」
「せっかくやるんだから、あそこでやらない?」
「海くんは忘れてるのかな?」
「仮面の悪魔……あなたが言っていた未来は……」
「あいつは本当にこのままでいいのか?」
次回『薄れゆく未来』
「友海!?」