この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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今回はちょっと短めです。あと後書きで次回予告風なことをやります


103 感謝の爆裂。そして……

砦の外でめぐみんは一人で景色を眺めていた。本来ならウォルバクさんの見送りに行かせるべきなのだろうけど……

 

「見送りはいいのか?」

 

「………行きませんよ。何を話せばいいのかわからなくなりますから……」

 

「そっか……」

 

めぐみんは一切僕のことを見ようとしなかった。きっと顔を見せたくないのだろうけど……

 

「なぁ、めぐみん。言葉はかわさなくても、別の形でなら見送ること出来るんじゃないのか?」

 

「別の形ですか?」

 

「あぁ、今日はまだ撃ってないだろ。今日は僕と」

 

「私もいきます。師匠」

 

僕の隣りにいる友海が、笑顔でそう答えると、めぐみんは僕の方を見て……

 

「全く仕方ない人ですね。いいでしょう。今日は最高のものをみせてあげます」

 

めぐみんは笑顔でそう言うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウォルバクSIDE

 

自分の部下たちには私たちは敗北したことと魔王軍幹部を止めるということを告げた。部下たちは最初は納得はしなかったが、最終的には渋々納得してくれた。

 

「さて、魔王にでも言いに行くとしようか」

 

私はテレポートで魔王城へと行こうとした瞬間、何かの気配に気がついた。

 

「こそこそしていないで出てきたらどうかしら?」

 

私は姿を見せない人物にそう語りかけると、茂みの中から一人の女の子が出てきた。

 

「初めまして。我が名は鶴城氷雨!!紅魔の里の巫女であり、人類の敵であるバーテックスを倒す勇者よ」

 

「………その名乗り……紅魔族?」

 

「違うわ。紅魔の里でお世話になっているだけ。貴方がウォルバク?」

 

「えぇそうよ」

 

「未来の勇者はどうだったかしら?」

 

未来の勇者って、彼のことを言ってるのかしら?

 

「いい子だったわ。まぁもう会うことはないでしょうけど……」

 

私は切られた髪の毛に触れた。まさか私を見逃し、更には人間たちを納得させる理由をでっち上げるなんて思いもしなかった。

 

「それはどうかな?この巫女のスキルにはかなりレベルが上った状態ではないと取得できないものがあってね。そのスキルで私は見たのよ。貴方が未来の勇者の助けになる未来を……」

 

「………巫女やら勇者っていうのは、集合体関係ね。まぁそんな未来もあってもいいかもしれないわね」

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

それは私がヒサメという少女と別れようとしたときだった。砦の方から大きな音と眩い光が見えた。あの音と光には見覚えがあった。あれは……

 

「何だか嬉しそうだね」

 

「えぇ、昔出会った子が、ここまで凄い爆裂魔法を撃てるようになるなんてね………」

 

最初に会ったときからあの子があの時の子だっていうことは分かっていた。まさか爆裂魔法を覚えて、あそこまで極めるなんてね。

 

「貴方が言う未来には少し興味が出てきたわ。用事が終わって、行く気になったら行ってあげるわ」

 

私はヒサメにそう告げると、ヒサメはため息を付いた。

 

「邪神でもそんな風に笑えるんだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

めぐみんの放った爆裂魔法はきっとどこかにいるウォルバクさんに届いただろうか?というか今、詠唱なしで撃たなかったか?

 

「カズマの作戦で経験値を多く得られ、スキルポイントも沢山もらえたので、詠唱なしでも爆裂魔法を撃てるようになりました。ウミ、ユミ、今の爆裂魔法は何点ですか?」

 

普段だったらカズマさんが点数をつけるのだけど、今日は僕がつけるべきなんだな。それだったら……

 

「120点だよ。めぐみん」

 

「ふっ、ありがとうございます。ユミ、この高みまで頑張って上がってきてください」

 

「はい、師匠」

 

めぐみんは満足そうな笑顔で友海の頭を撫でるのであった。これで砦でのウォルバクさんとの戦いは終わりを告げるのであった。

 

それから僕らは祝勝会に参加し、アクセルの街に帰ってきたのは二日後だった。

 

「それでは皆さん、また機会があったら……そのまた旅にでも……」

 

「ゆんゆん!貴方は全く………わざわざ言わなくてもいいです。これからはまぁ機会があったら誘いますよ」

 

めぐみんは顔を背けながらそう告げると、ゆんゆんは嬉しそうに頷いていた。何だかこの二人もそれなりに距離が近づいてきたな。

 

「というかウォルバクさんの一件があって、準備進めてないや」

 

「準備って言うと……クリスに頼まれていたアレか?」

 

「勧めとかないとな……というかカズマさん、出来たら演劇に協力できないかな?」

 

「お前な………厄介事が終わったからゆっくり休もうと思ってたのに……」

 

「まぁカズマ。いいじゃないか。いつもみたいな危険なところに行くわけじゃないんだから」

 

「そりゃそうだけど……」

 

「ねぇねぇ、ウミ。その演劇って私達も参加できるのよね。それだったら磨きに磨いた私の宴会芸を見せる時が来たわね」

 

「演劇に宴会芸ってどうなんですか?アクアさん」

 

「ウミ、リアリティを求めて演劇中に爆裂魔法を……」

 

「めぐみんちゃん、それは危ないよ~」

 

「危ないというか……私達捕まってしまいそうですね」

 

「パパ、楽しい演劇できるように頑張ろうね」

 

皆が演劇の話に夢中になっていた。何だか平和な日常に戻ってきた気がするな……とりあえず屋敷に戻ったら衣装作り頑張らないと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつだって戦いの後には平穏な日々が待っていた。それはこの世界に来てからもずっと同じだった。辛い戦いの間は悲しいことや辛いことがたくさんあったけど……でも全部終わればそんな悲しいことや辛いことを忘れてしまうくらい楽しい出来事が待っているんだ。

 

だけど………カズマさんが屋敷のドアを開けようとすると……

 

「何だ?鍵が開いてる?」

 

「もしかして泥棒かしら?」

 

「それだったら警察でも呼んだほうがいいんじゃないですか?」

 

「閉め忘れたという考えはないのか?」

 

ダクネスさんの考えは僕も考えていた。でも鍵を締めたのは僕だし……もしかして若葉さんたちでも訪ねてきてるのかな?一応合鍵をひなたお姉ちゃんに預けてるし……

 

「とりあえず入ろうぜ」

 

カズマさんが扉を開け、中を見渡すが特に荒らされた痕跡はない。もしかしたら僕の閉め忘れかなと思い、広間に向かうとそこには……

 

「待ってたよ~ゆーゆ、迎えに来たよ~」

 

さっきそのっちと別れたはずなのに、そのっちが広間にいた。もしかして中そのっちか?

それに迎えに来たって……

 

「そのちゃん………」

 

「その様子だとまだカイくんに伝えてないんだね。カイくん、大赦からの通達でゆーゆはあっちに戻ることになったの」

 

「えっ?」

 

 

 

いつもなら平穏な日々が訪れるのだろうけど、今回だけは違った。だけどいつだって楽しい日々の後に待っているのは悲しく辛い日々だ。

 

 

 

 

 




「ユウナが帰ってしまうんですね」

「神樹も勝手よね」

「なぁ、園子……私は……」

「また会えるんだよな」

「また離れ離れになってもいいのか?」

次回『また会う日を楽しみに』

「海くん…………またね」

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