この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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今回、海の意外な特技が披露されます


10 爆裂と狙撃

僕はギルドにて前回のキャベツ刈りの報酬を受け取っていたのだが……

 

「う~ん、二百匹くらい捕まえたのに……」

 

報酬金額はたった30万エリス。受付の人に聞くと僕が捕まえたのが殆どキャベツではなくレタスだったみたいだ。

 

割りと運がないからなのかな?とはいえ、向こうで泣いているアクアさんに比べたらまだ良い方か。

 

何せ、報酬が結構貰えるからと言う理由で、酒場のツケがかなりの額になっていた。可哀想に……

 

「ねぇ、ウミ。貴方はカズマみたいにケチじゃないよね?少し……」

 

「返してくれる保証があるなら貸すけど、アクアさん、何だか返してくれなそうだから嫌です」

 

カズマさんに断られたからって、僕に借りようとするのはやめてほしい。この報酬は僕の生活費に当てるつもりだし……

 

アクアさんから逃げるように僕は食後の運動のため、ランニングに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってくると今度は銀にお金を貸してほしいと言われた。

 

「実はアクアさんに言われて少し貸しちゃって……」

 

「銀。お前がトラブルに巻き込まれやすいのはわかってるけど、お金関係はやめとけ。その内痛い目にあうぞ」

 

「うぅ~それは解ってるけど……今回の報酬で服でも買おうかなって思って……」

 

「服?」

 

そういえば銀が着てる服って神樹館の制服だった。僕より一年早く来ているのにまだその制服なんて……

 

「こう見えて成長してるんだぞ」

 

「何も言ってないよ。服ぐらいだったらちょっと待ってろ」

 

僕は少し街に買い物に出かけた。

 

そして一時間後、カズマさん達と待っている銀の所に僕は讃州中学校の制服を渡した。

 

「えっ?何?こんなものまで売ってるのこの世界は……」

 

「いや、作った」

 

「「「「「作った!?」」」」」

 

「こう見えて手先が器用で、部活では衣装作り専門だったりするからね」

 

「お前、一時間やそこらで作れるなんて、明らかにおかしいだろ」

 

「おまけに見る限り手を抜いているように見えない」

 

「服飾関係で食べていけるんじゃないんですか?」

 

めぐみん、それ前にも言われたことがあるんだけど、せっかく異世界なんだからそう言う職種に付くつもりはない。

 

早速銀が着替え終えると何故か恥ずかしそうにしていた。

 

「ねぇ、何でサイズぴったりなの?」

 

「見ればある程度のサイズが分かるから……あの、銀?何で勇者に変身して斧を構えるんですか?」

 

思いっきり顔を真赤にさせながら、今にも襲ってきそうだ。

 

「因みにアクア達のスリーサイズは?」

 

「えっと………」

 

カズマさんの問に答えようとした瞬間、何故か女性陣全員から殺気を感じた。僕は答えるべきじゃないと思い、黙り込んだ。

 

「カズマが女性の下着を盗むだけならまだしも、ウミにそんな特技があるとはな……知らずのうちに人のスリーサイズを知って、私を辱める気だな」

 

「その気はないからね!!」

 

何故かダクネスさんを喜ばせることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなキャベツ刈りの報酬が良かったため、装備を新調したらしく適当なクエストに出かけてみたいとの意見が出たのだが、張り出されているのは高難度のクエストばかりだった。

 

話を聞くとつい最近、この街の近くに魔王軍幹部がやってきたらしく、弱いモンスターが隠れてしまったとのことだった。

 

アクアさんはそのことについて怒っていたけど、魔王軍幹部が一体何しに来たのだろうか?

 

因みに若葉さんたちは高難度のクエストを受けているため、暫くの間アクセルの街にいなかった。

 

流石はベテランの勇者であり冒険者だな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕らは各自自由行動となったので、僕は街の外である武器を使いこなそうと訓練をしていた。

 

「東郷の短銃、散弾銃、狙撃銃。おまけに弓矢まで使えるみたいだけど……訓練しないとな……」

 

適当な的を探しに出かけるとカズマさんとめぐみんの二人が出かけるのを見つけ、声をかけた。

 

「どこに行くんだ?」

 

「あぁ、ウミか……って物騒なものもってるな」

 

「これは……」

 

「あぁ、物干し竿ですね」

 

めぐみんが僕の持っている狙撃銃を見て物干し竿って言い出した。もしかしてこの世界の銃は物干し竿って呼ばれてるのかな?

 

「遠距離武器の特訓してて、なにかいい的ないかなって……カズマさんたちは?」

 

「めぐみんが一日一爆裂しないと死んでしまう病と言い出してな」

 

変わった病気だけど……なるほど、爆裂魔法を撃ったらそのままめぐみんが倒れてしまうため、カズマさんは倒れためぐみんを運ぶ役か。

 

僕も適当な的探しのついでに二人についていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「もうこの辺でいいだろ。適当に魔法撃って帰ろうぜ」

 

「駄目なのです。街から離れた所じゃないと、また守衛さんに叱られます」

 

しばらく探し続けるが、めぐみん的にこれだというものがないみたいだ。

 

すると丘の上に建つ古城を見つけた。あそこなら人も住んでないし、大丈夫だろうとカズマさんが言い出し、早速めぐみんが爆裂魔法を放つのだった。

 

「僕も折角だからあの城の上に舞ってる旗でも狙ってみるかな?」

 

遠くからでは模様までは見えないが、きっと昔の国の旗だろう。それだったら別に的にしても問題なさそうだな

 

僕は狙撃銃を構え、旗を狙うが見事に外してしまった。

 

「練習が必要だな」

 

それから毎日のようにめぐみんの爆裂魔法の付き添うついでに僕は狙撃の練習を始めた。

 

「エクスプロージョン!」

 

「今のはいい感じだな。爆裂の衝撃波が、ズンと骨身にするかの如く響き、それでいて肌をなでるように空気の振動が遅れてくる」

 

カズマさんも毎日のようにめぐみんに付き合っていたからか、その日、放った爆裂魔法の出来がわかるようになったみたいだ。そして僕も……

 

「うん、狙撃の腕が上がったかな?うまい具合に旗を狙えた。おまけにあの城に住んでるみたいなゾンビも狙撃できた」

 

「何だ?あの城ってダンジョンだったのか?」

 

「いえ、聞いたことありませんが……最近になってアンデットが住み着いたのでしょう。その内クエストとして出てくるかもしれませんね」

 

「まぁ、その時はアクアに任せるか」

 

僕らはそんなことを言いながら、街に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、街中に緊急アナウンスが流れた。

 

『緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!』

 

僕らはアナウンスを聞いて正門に集まるとそこには、黒い首無し馬に乗った首無し騎士、ディラハンが佇んでいた。

 

「……俺は、つい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが……」

 

怒りの篭った声で更に続けた。一体デュラハンは何に怒っているんだろうか?

 

「まままま、毎日毎日毎日毎日!おお、俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んでく頭のおかしい大馬鹿者は、誰だあああああー!」

 

 

 

 

 




因みに海は14歳、銀は現時点で13歳となっております。

海の特技の服作りはサイズピッタリの服を作ったりして、勇者部の面々に冷たい目で見られた過去があったりなかったり……

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