この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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01勇者転生

僕は上里海。

 

大赦の関係者であり、讃州中学勇者部の一人であり、五人の勇者たちのサポートをするのが僕の役目だ。

 

そんな僕はある場所に来ていた。

 

そこはこの世界の守り神である神樹が祀られている場所だった。

 

「………神樹、彼女たちから奪ったものを返してくれ」

 

僕はそっと目を閉じ、願ったけど誰も答えてくれない。

 

「………答えてくれるわけないよね。それでもいいか」

 

僕は持っていたナイフを取り出し……

 

「僕一人の命で……彼女たちから奪ったものを返せよ!」

 

持っていたナイフを首に突き刺した。

 

首から血が流れ、床に落ちていく。

 

そして僕の意識もそこで消えていく

 

できれば……見届けたかったのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくとそこは真っ白な空間だった。

 

僕はいつの間に椅子に座らせられ、目の前には青いローブを纏い、銀髪の長い髪をした整った容姿の女性が座っていた。

 

「上里海さんですね。私は女神エリス。貴方はつい先程お亡くなりになられました」

 

女神って、神々は神樹と同化してるんじゃないんだっけ?

 

「あの……僕がいた世界では神々は一つになってるのに、エリスさんはどうして……」

 

「神樹のことですね。神樹と一体化したのは土着神のみです。私やもう一人の先輩とは関係ないですから……それに様々な世界から来た魂を導くという仕事についてますから……」

 

様々な世界って……それってけっこう大変な仕事なんじゃ……

 

「それでその……大変言いにくいことなんですが……上里さんはお友達の事を助けるために、その身を神の供物として捧げたんですよね」

 

「えぇ、そうですけど……もしかして僕一人の命じゃ意味が……」

 

「いえ、どうやらそんな事しなくても……その、彼女たちの欠損は治るらしくって……」

 

「はぁ?」

 

エリスさんは本当に申し訳なさそうにしながら、更に話を続けた。

 

「捧げた供物は月日が経てば、下げても良いと言われてますよね。それと同じで……」

 

ということは僕が自殺したことって……無駄なことだった?

 

僕は思わず俯いた。

 

「あの、その、知らなかったからって落ち込まないで下さい」

 

「……エリスさん、友奈は……友奈たちはどうなりましたか?」

 

「彼女たちですか?今はバーテックスなどの関係なく平穏な日々を過ごしています」

 

「そっか、それならいいや」

 

皆が無事ならそれでもいい。というかきっと皆悲しんでるだろうな~

 

「それでは本題に入りますね。お亡くなりになってしまった貴方には選択肢があります。一つは記憶を消して元の世界に戻る事、二つは何も無い天国に行きなにもせずに暮らす。もう一つは知識、記憶、身体能力はそのままで異世界、貴方がいた世界とはまた別の世界に行く事です」

 

「ふむ……」

 

天国でのんびり暮らすか………それはそれで退屈そうだしな。

 

記憶を消して戻るっていうのも、何だか嫌だな。

 

だとしたら選ぶべきものは……

 

「それじゃ転生します」

 

「分かりました。それではこちらから特典を選んで下さい」

 

エリスさんは一冊の本を渡してきた。そこには色んな武器や能力が書かれていた。

 

聞いてみると流石に丸腰だと危ないということで、転生者には特典がついてくるらしい。

 

しばらく眺めているがこれといったものが無かった。

 

「あの、ここに書かれていないものでもいいですか?」

 

「はい」

 

僕が選んだもの、それは彼女たちと同じ勇者の力がほしい

 

「彼女たちと同じ勇者の力を……」

 

「分かりました。それでは上里海さん、願わくば、数多の勇者候補達の中から、貴方が魔王が打ち倒すことを願っています。見事魔王を討伐した暁には、神々からの贈り物として、どんな願いもたった一つ叶えて差し上げます」

 

まばゆい光が僕を包み込んだのだった。

 

だったのだが……

 

「あれ?何で私も………あっ!?」

 

エリスさんが何故か焦っていたのは気のせいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくとそこは本当に異世界だった。

 

「本当に異世界だ……それに」

 

僕はポケットの中からあるものを取り出した。

 

それはスマートフォンだった。こっちの世界で使えるわけないけど、見てみると勇者に変身できる機能がついている

 

「おまけに今まで取った写真まである……凄いな」

 

さて、早速何かしらしないといけないけど……後ろで何故かエリスさんが泣いていた。

 

「あの、エリスさん。どうして泣いているんですか?」

 

「どうしたもこうしたもありません!!私もこちらに連れてこられたんです!」

 

「何で?別にエリスさんを特典で選んだわけじゃ………あっ!?」

 

若干思い当たることがあった。

 

勇者の力には精霊の力がある。

 

精霊は時に勇者に力を与え、勇者を守る存在だ。

 

今までは牛鬼や火焔猫とかの妖怪だったけど……もしかして

 

「その………すみません!」

 

「海さん……」

 

「僕のせいですよね。そのエリスさんは勇者を守る精霊的な存在になったんですよね」

 

「……はい、恐らくそうみたいです」

 

「本当にごめんなさい」

 

必死に頭を下げる僕、するとエリスさんは笑顔で……

 

「いいですよ。許します」

 

「いいんですか?」

 

「はい、どうやら私がいた場所とここへは自由に行き来は出来るみたいですから……」

 

「そうなの?」

 

「えぇ、とはいえそこまで謝らないで下さい。今回の件は私の確認不足もありますから……」

 

なんていい人なんだろうか……許してもらえるなんて……

 

「とはいえこの服では目立ちますね。少し待っていて下さい」

 

エリスさんはそう言いながら、どこかへ行くのであった。

 

しばらくすると……

 

「お待たせ~やっぱりこっちではこの姿のほうが良いよね~」

 

何だかエリスさんによく似た女の子がこっちにやってきた

 

「あの……?」

 

「私です。エリスです。こちらの姿ではクリスですけど……」

 

「どういう事ですか?明らかにキャラ変わり過ぎじゃないですか!おまけに色々と変わってますし……」

 

特に胸のあたりがって言ったら怒られそうだから言わない方が良いかな

 

「たまにこちらの世界に遊びに来てるんです。これがその時の姿で……」

 

「なるほど……」

 

エリス……クリスさんとの一緒に最初に向かうべき場所、ギルドへと向かうのであった。

 

 


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