体育祭の時期がやって来た。椚ヶ丘中学校では九月終盤にやる事になっている。
「お嬢様の学校では体育祭ですか」
「はい。ウチの学校は生徒会が種目を決めるんでめんどくさいんですよ」
夏休みに来たメイドカフェはあれから通うようになっていた。
ここの店はメイドカフェというより、メイドが居るただの喫茶店みたいなものだ。その所為か普通の客も多い。
初めて来た時に紅茶の事で話したメイドさん、森さんというのだが、かなり仲良くなった。電話番号も交換し、紅茶の事以外にも色んな事を話す良い相談相手になってくれている。
「マスター、いつものケーキ」
「はい」
ここのケーキはとても美味しい。ケーキ屋にも負けないぐらいの美味しさだ。そして、ここの紅茶とが一番相性がいいのだ。
数分するとカウンターにケーキが置かれる。いつも頼んでいるのはチョコケーキだ。フォークで一口サイズに分け、口に運ぶ。
「やっぱりここのケーキは美味しいですね」
「ありがとうございます」
マスターは無口だが、料理はとても美味い!この店に人が来る理由の一つでもある。そして、もう一つはここのメイドが綺麗だと言う事だね。
森さんとお喋りをし、紅茶も何杯か飲んだ後、お会計をし、店を出た。
「さーてと、家に帰るか」
体育祭当日。
主な種目は走る事だ。五〇メートル走、一〇〇メートル走やクラス対抗リレー対決だ。
運動に関しても成績の内に入る為、A組とB組に戦力が偏ってしまうのだが、それは仕方が無い事だ。
「位置について、よーい……」
バンと銃声が鳴ったのと同時に走り出す。
私の今の順位は二位か。スタートダッシュを失敗したからな。先頭を走るのは、陸上部の子だ。
部活はしていない。だが、こっちは習い事で色々とやらされていたから体育の成績は良い方だ!
一〇〇メートル走で勝負をつけるとしたら、半分を越えた所だ。ゴールが近付くと少し気を抜く事がある。そこを突く!私は、考えていた通りに半分を越えた所でスピードを上げる。そして、ゴール手前でギリギリで抜き、一位でゴールした。
「私さ、最後まで手加減しない派なんで」
主にゲームで。
ほら、HPがあと少しで削れるという所で相手が回復してくるパターンがあるから、ここはあえて強い技を選択するみたいなそんな感じ。
放送部が順位の発表をしている。今、マイクを持っている人は荒木っていう人だ。二年後の五英傑の一人。私、あの人苦手だわ。思ったら、五英傑ってマシな性格の奴一人もいないんじゃないの?いや、気にしないでおこう。
それからも体育祭は続いた。そして、全ての種目が終わり、成績発表がされた。一年優勝はA組。二、三年生もA組が優勝だった。こんな感じで体育祭は幕を閉じた。
気が付けばもう十一月、今度は学園祭だ。
椚ヶ丘の学園祭は、ガチの商売合戦で有名だ。収益の順位は校内に張り出される。ここでトップを取れば、実業的な実績として就活でアピールができるのだ。
もちろん、
「カフェでいこう。他の店もそんな感じだと思うが、うちのクラスは食べ物はもちろん、内装にもこだわろう!」
「おお!」
正直、学園祭とかどうでもいい。むしろめんどくさい。というか休日を削ってのイベントとかマジふざけんなと言いたい所だけど、ちゃんとしないと父に何と言われるか分からないからな。
それから準備期間に入った。みんなは優勝する為に一生懸命やっていた。もちろん、私もやった。めんどくさと思いながら。
「一年A組、カフェやっていまーす!落ち着いた部屋で美味しい紅茶はどうですかー」
売り子には色んな所で呼びこみをしてくれと頼んである。私は美味しい紅茶を入れるだけだ。
「お待たせしました」
紅茶とクッキーを運ぶ。クッキーは紅茶に合うものを作った。これも森さんとマスターのお陰だ。今度お礼に作って持って行こう。
うちのクラスは主に、紅茶と茶菓子で勝負だ。
ここは内装が落ち着いている。外の騒がしい空気が苦手な人や疲れた人が静かな場所を求めてくるという心算だ。
「そろそろかな」
私は、この時の為に音楽室から運んできてあったピアノの鍵盤蓋を開ける。椅子に座り、深呼吸をしてから鍵盤に指を置く。鍵盤を一つ一つをなぞるように弾いていく。心が静まる曲、幻想的な曲を何曲か弾いた。そして、全ての曲が引き終わると、拍手が起こった。
ピアノを弾く時、わざと廊下側の窓を一つ開けていた。
それから人が次々に来店してきた。さっきのピアノが綺麗だったと言う感想付だ。
二日に渡って行われた学園祭も終わり、そして、収益の順位が張り出された。やっぱり上級生には負けちゃうか。一年A組は七位だった。他のクラスの出し物とは違い、意外性があるとの事で多くの人が来店してきたからだ。
こうして、大きな行事も全て終わり、後は期末テストを残すだけとなった。
前回に出てきたメイドさんが気に入ったので名前をつけました。森さんです。
彼女は結構出番が多くなると思います。